【試し読み】因襲御曹司の執着愛に溺れる贄(上)

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あらすじ

アイドル級美人の姉と暮らす大学生の月出千晴。劣等感をこじらせて恋愛できなくなった自分を変えようと、一人暮らしを決意し、資金を稼ぐために料亭コンパニオンのバイトを始める。ところが初日、呼ばれた個室には見たこともないような美形のスーツ男、清宮俊介がいて、なぜか千晴の素性を知っている様子! しかも彼のもとでバイトをするように勧めてくる。そのバイト先とは、清宮ホールディングス最上階の個室だった! 俊介は清宮財閥の跡取りなのだ。その彼が千晴に結婚をせまってくる。だが、この清宮家、処女でないと嫁入りできないわ、秘密の儀式があるわと、因襲まみれで!? 知ったときすでに千晴は甘い世界に落とされていた――。

登場人物
月出千晴(つきいでちはる)
美人な姉へのコンプレックスがあり恋愛には消極的。一人暮らしの資金を稼ぐために料亭でバイトを始める。
清宮俊介(きよみやしゅんすけ)
端正な顔立ちで知的な雰囲気の財閥の御曹司。突然千晴の前に現れ、バイトを斡旋し結婚をせまる。
試し読み

第一話 邂逅かいこう~とにかく美人すぎる姉から離れたい~

 本物の一流アイドルを間近で見たことがある人にはわかってもらえるはずだ。月出つきいで千晴ちはるの姉、千歳ちとせはアイドル級美人だ。外をいっしょに歩くと五人に一人は振り返る。
『今、顔が異様に小さくて目が異様に大きい人間離れした人とすれ違ったような気がするけど、気のせい?』
 と、実在を確かめるために二度見するのだ。
 千晴は小学三年生のころからこう思っていた。
 こういう並外れた美人はぜひ芸能界に行ってほしい、と──。
 同じレベルの人たちは同じレベルの中にいれば、普通の人になれる。
 だが、姉の千歳は芸能事務所にどんなに熱烈にスカウトされても、読者モデルすらせず、一貫して一般人の中にいる。
 ──迷惑だわ。
 千晴は今も、そう思っている。
 もし仮に千晴に彼氏ができたとしよう。
 姉妹二人暮らしの千晴が千歳に『今日、彼氏を家に連れて来るから、お姉ちゃん、家にいないでね。彼氏がお姉ちゃんを好きになったらまずいでしょう?』なんてあっけらかんと言えるなら、それはコンプレックスを持っていない人間だ。
 千晴は絶対に言えない。死んでも言いたくない。姉が美人なことを気にしているなんて、絶対、誰にも知られたくない。そのくらいコンプレックスの根が深かった。
 この原因は千晴にもわかっている。
 初恋の男の子だ。
 小学三年生のとき、千晴のことを気に入ってくれていると思っていた近所のお兄ちゃんは姉目当てだった。千晴にとどめをさした出来事だった。
 そんな千晴も大学生になり、女らしく成長し……と言いたいところだが、残念ながら、逆方向に進んだ。当然の結果だ。いくら女らしくしたってアイドル級の姉にはかなわない。それなら別方向に個性を伸ばすのが常道だ。
 大学も、千歳はお嬢様大学として有名な白薔薇しろばら女子大学だが、千晴はバンカラな校風で知られる明田めいだ大学。明田女めだじょといえば、色気のない女の代名詞だ。
「うおりゃあああああ!」
 今日も今日とて千晴はノーメイクで、振り乱すほどの長さもないショートカットを振り乱し、テニスコートで白球を打ちまくる。
 ちなみに明田大学は女子が少なく、このテニス部も他大の女子を受け入れている。中には、ファッション誌で読者モデルをしているようなキラキラ系女子もいて、はっきりいって明田女は全くモテない。だが、そんな女子たちからなら千晴はモテた。昔から同性にはモテる自信がある。
 ところが大学三年の夏、こんな千晴にも生まれて初めて彼氏ができた。同じテニス部の爽やか系男子、朝倉あさくら陽向ひなただ。
 試合帰り、電車が同じ路線で二人きりになったとき、陽向がいきなり告白してきたのだ。
「俺、一年のときからずっと月出のことが気になってて……だけど、もう就活じゃん? 今しかないって思って……つきあってくれないかな?」
 陽向は真っ黒な顔に白い歯をきらめかせ、短髪の頭をかいた。千晴は驚きのあまり言葉を失ってしまう。まず、口をいたのはこんな言葉だ。
「なんで、私?」
 本当に不思議だった。だが陽向が真顔で答えてくる。
「ストイックに練習している姿が素敵だなって……」
 ──あの、猛獣のような姿が……!?
 まさに少女マンガ! そのままの君が好き、というわけだ。陽向はきっと美人の姉に惚れることはないだろう。このとき生まれて初めて、千晴はコンプレックスから解放されたように思った。
 初めてのデートは遊園地で、二人で絶叫マシンに乗りまくった。そして、観覧車の中でキスをした。ちゅっと唇を重ねるだけの軽いキスだったが、千晴は戸惑った。まさか自分にこんな〝女の子〟みたいなことが起こるなんて思ってもいなかったからだ。
 それからというもの、そのキスの瞬間を何度も何度も頭の中で再生した。
 翌日、千晴は大学の食堂でカツ丼のカツをかじりながら百二十二回目のキスシーンの再生を行っていたが、途中で停止させられた。同じ部の同級生、莉奈りなが隣に座り、声をかけてきたからだ。
「ちょっと、昨日どこまで行ったのよ」
「遊園地って言わなかったっけ?」
「もう、何ボケたことを言ってるの。最後までいったのかどうかを訊いてるに決まってるでしょ」
「ささささいご?」
 千晴は首をかきんと回し、括目かつもくして莉奈を見た。
「やっぱり……」
 莉奈が呆れたように横目で見返してくる。
「みんなで絶対、二人はまだ童貞と処女のままだって言ってたのよ」
「私ども、青春をテニスに捧げてきたもので……」
 ──そうか。モテない同士のカップルだったんだな、私たち……。
「朝倉くん、爽やかで下級生からも人気なのに、ずっと千晴一筋だったもんね?」
「えええ!?」
 千晴がものすごくびっくりしていると、莉奈が呆れたように口を開いた。
「どんだけ鈍感……。三年間溜めに溜めたんだから、近いうちにやつはきっと来るよ!」
「溜めてくる!?」
「違う、襲ってくるよ!」
 ──そういえば〝女の子〟といえば男子オオカミに襲われる設定だった!
 それから莉奈にスマホで、女性向けHow toセックスのサイトを見せられ、千晴は真っ青になる。
 ──ちんちん舐めるのだけはどうにか避けたい……。
 それからというもの千晴はエッチに至りそうなデートは極力避けた。たとえば『旅行に行こう』とか『ドライブに行こう』とか、そういうたぐいの提案だ。
 陽向と清いおつきあいが三ヵ月続いたある日のことだった。
「千晴、お姉さんと二人暮らしなんだろう? 一度、遊びに行ってもいい?」
 陽向に爽やかにそう問われ、千晴はうろたえた。姉の千歳と会わせたくないが、千歳がいないと、あそこを舐める羽目はめになるかもしれない。
 しばらく葛藤したが、陽向は猛獣な千晴を気に入った貴重な人物だ。もう二度とこんな男性ひとは現れないかもしれない。なので、千歳がいる日にすることにした。局部を舐めるよりかはマシだ。
 ──男子ってトイレットペーパーを使わないらしいからな……。

 千晴が姉と住んでいるのは2DKのマンションだ。実家は京都で、二人とも大学進学で上京した。リビングルームのテーブルで食後、姉と向かい合って温かい日本茶を飲んでいるときに千晴は千歳に陽向のことを伝えた。
「え? 彼氏? 誰?」
 感情があまり顔に出ない姉が明らかに喜んでいる。
「いや~。同じテニス部の同級生に三ヵ月前、告白されちゃってさ~」
 そのとき姉の瞳がきらめいたような気がした。
「もうエッチしたの?」
 姉とはエッチどころか恋愛についてすら話をしたことがなかったので、いきなりすぎる質問に千晴は度肝を抜かれた。まさか下ネタに興味があったとは意外である。
「え、いや、まだ……そういうの、したくないから。今週土曜日、お姉ちゃん、家にいてくれない?」
 千歳がとたんに、つまらなさそうな顔になった。
「今どき何それ? なんなら私、その日、友だちの家にお泊まりしてもいいよ?」
 ──なんでこんなに協力的なんだ……!?
 小さなころから千晴は姉の考えていることがよくわからなかった。
 千歳は、いろんな男の人から告白されているのに、フリまくっている。そんな姉の気がしれない。千晴は初めて告白してくれたというだけで、その男の人とつきあっているというのに──。
 土曜日になり、陽向がマンションにやって来た。玄関から上がるなり「女の子の家ってやっぱ違うね! うちは男兄弟だからさ~」なんて言って浮かれている。
 リビングルームで千歳がアイドル系笑顔で出迎えると、陽向が一瞬、目を見張ったのを千晴は見逃さなかった。大抵の男子はこういう反応をする。
 そのあと、三人でパスタを食べ、千晴は陽向を近くのテニスコートに連れて行き、ひたすらテニスをした。『昇華』作戦だ。
 高校の保健のサブ教材に『昇華:スポーツなどで性欲を発散すること』と書いてあったのを参考にしている。
 陽向が玄関に傘を忘れて帰ったので、翌日、千晴は彼が受けている講義の階段教室を訪ねた。教室の彼を見たことがなかったし、驚かしてやろうと思って、事前にスマホでメッセージを送らなかった。
 一番上にあるドアを開けて教室全体を見渡し、真ん中あたりの席で男友だちと話している陽向を見つけたので、千晴は階段を下りて近づく。
「彼女の姉ちゃんが、まじでアイドルみたいでびびった」
 そんな陽向の声が聞こえてきて千晴は凍りついた。
「ほんとかよ。画像ないのか?」
「今度撮ってくるけど、そこらのアイドルとか目じゃない」
「まじかー! 朝倉、お姉ちゃん紹介してくれー」
「おー、まかせろ」
 陽向が隣に立つ千晴に気づき、見上げてくる。
「え? この講義、取ってた?」
 陽向は悪びれもしなかった。
「ううん。傘、忘れてたから、渡そうと思って……」
「さっき降り始めたから、やばいって思ってたんだ。助かる!」
 陽向が破顔した。相変わらず爽やかな笑顔だ。
 陽向は社交性がある。だからウケそうな話題を友だちにふっただけ。そう思えるのはコンプレックスのない人間だけである。千晴には無理だ。これは千晴の中の問題だった。
「うん。じゃ」
 千晴は、すぐにそこを去った。もう永遠に会いたくないと思った。その日、テニス部を休んだ。そのとき千晴の頭にひとつの疑問が浮かんだ。
 ──私は陽向を好きだったんだろうか?
 ありのままの自分を好いてくれる男性ひとがいるのがうれしくて、つきあっていただけではないのか。
 千晴は陽向と別れた。なぜ別れることになるのかがわからない彼に何度も詰め寄られたが、理由は言わなかった。言えなかった。
 それでテニス部にいづらくなり、千晴はテニス部をやめた。男っ気がなくて女子部員から慕われていた千晴としては、恋愛沙汰でやめるなんて残念で仕方ない。
 それで暇になり、テニスにあてていた時間でバイトをして一人暮らしのお金を貯めようと思った。このコンプレックスから解放されるには、一度、姉から離れることが必要だと思ったのだ。
 だが、一人暮らしのことを千歳に告げると猛反対された。
「もうすぐ就活で、バイトなんかしてる場合じゃないでしょう!?」
 千晴は三年生なので、もっともな意見だ。年子の千歳は大学四年生。製薬会社への就職が決まっている。
「じゃあ、就活が終わったらバイトする」
 千晴の理工学部は大学院に行く者が多かったが、千晴が就職したい旨をゼミの柳田やなぎだ教授に伝え、推薦を頼んだところ、どこも今、人手不足とかで、就職先はあっけなく決まった。クリコという電機メーカーの研究室だ。
 そして春休み。千晴は毎日アルバイトをすることにした。ネットで『高級料亭コンパニオン』という時給三千円の仕事を見つけたのだ。
 家庭教師だと一日二時間で終わるが、これは一日六時間、集中的に何日も入れられるので春休み向きである。春休みだけで敷金礼金を貯められると踏んだ。
 問い合わせると、すぐに面接となった。コンパニオン派遣会社といっても、時田ときたという五十代半ばの女性が、派遣業を一人できりもりしているのが実態で、面接はチェーン系カフェで行われた。若いコンパニオンが少ないから貴重とのことで、千晴は即採用となる。
 初めての仕事は赤坂あかさかの高級料亭だ。
 だが、料亭近くのマンションの一室で、鏡の前に座る千晴を見下ろし、時田が呆れ顔になっていた。千晴がファンデーションを持っていなかったからだ。
「え? ファンデーションを塗らないとだめなんですか?」
 時田が千晴の頬に指先をすべらせた。
「確かにきれいな肌だけど、高級料亭で、すっぴんってわけにはいかないわ」
 横で化粧をしていた三十前後の女性がファンデーションを差し出してきた。
「よかったら使って」
 色白で華やかな顔立ちの女性だが、微笑むと愛嬌がある。
「あ、ありがとうございます」
百合ゆりちゃん、ごめんね」
 時田が申し訳なさそうに百合に謝ったあと、くるっと千晴のほうに向き直った。目が据わっていた。
「明日からは持ってきてよね」
「はい。すみません。でも、口紅は持ってるんです」
 千晴はポケットから、これ見よがしにリップスティックを取り出す。いくらなんでもすっぴんで臨むつもりではなかったと申し開きをしたかったのだが、二人から同時に「当たり前!」と突っ込まれて終わった。
 着物を着付けてもらい、徒歩で料亭に向かう。入った座敷は、ある県の市町村長の集まりで、好々爺こうこうや十人ほどが長卓に着いていた。千晴は初めてなので、こういうハードルの低い座敷に派遣されたようだ。
 ──なんだ、おじいちゃんとしゃべりながら、ビールをげばいいのね。ちょろいわ!
「いやあ、孫みたいだな。普段は君、Tシャツ短パンで外を歩いてるんだろう?」
 おじいさんがそう言って目を細める。
「なんでわかったんですか?」
「だって、この仕事に慣れてないから」
「実は今日が初めてなんです」
 それを言うと、おじいさんたちに喜ばれた。
 ──男って初めてに弱いんだな。
 一時間ほど経ったとき、千晴は百合に呼ばれた。百合が両手を合わせて頼んでくる。
「千晴ちゃん、私、お客さんに、コンパニオンの中には大学生もいるって、つい話しちゃって……。そしたら連れて来てほしいって」
「どんな方ですか?」
「若いエリートサラリーマンって感じ。ひとりでこんな料亭に来る人、珍しいんだけど……」
 百合にはファンデーションの恩がある。断るわけにはいかない。
「わかりました」
 ──年齢が近い女子と話したいのかな?
 そんな軽い気持ちで、千晴は百合についていく。百合が個室の前に正座したので、それにならった。百合が戸を開けると、四畳半ほどの和室の中央に四人掛けのテーブルがあり、上座に高級そうなスーツを着た男が座っていた。メガネのせいか、インテリっぽく見えた。
 その客が、低いがよく通る声でこう告げる。
「もう、そのだけでいいですから」
 ──って、私、このひとと二人きりになるの?
「はい。では、失礼いたします」
 千晴の動揺をよそに、百合が背後にいる千晴に目配せして去っていった。心細く感じながらも千晴は男に笑顔を向ける。
「よろしくお願いします」
 千晴が挨拶をしたというのに、男が不愉快そうに眉間にしわを寄せた。
 ──やべ。この人が想像していたような女子大生像と私、かけ離れてるんだわ。
 千晴はテニスで日焼けをしていて、しかも髪型はベリーショートだ。こういうときも、つい癖で、姉みたいに美人だったら……と思ってしまう千晴である。
 とはいえ、ずっと個室の外で正座しているわけにもいかないので、千晴は中に入って戸を閉める。すると、冷たい声を浴びせられた。
「どうして大学生がこんなところでバイトなんかしてるんだ?」
 ──こいつ、説教好き?
「お言葉を返すようですが……あなただって若くして一人でこんなところにいらしてるんですよね?」
 男がしばらく黙りこんだ。何か考えているふうだった。
「君、月出千晴でしょ?」
 いきなりフルネームを口にされ、千晴はぎょっとしてしまう。
「どうして、私の名を……?」
 顔に見覚えはない。そもそも、こんなイケメン、会ったことがあるなら千晴のほうが忘れないだろう。
「月出家は裕福だろう? 仕送りも少なくないはずだ」
 ──げ? よりによって親の知り合い?
「な、なんで私の家のことまで……」
 彼が企んだような笑みを浮かべた。
「月出さんに、お嬢さんの写真を見せてもらったことがあってね。お父さん似だね?」
 千晴は、その場でがばっと土下座した。一人暮らし計画にいきなり暗雲である。
「親にだけは絶対、内緒にしてください」
「どうしようかな……だってさ」
 俊介が膝立ちで近寄ってきた。長い指で千晴の顎を取り、顔を上向かせる。袖からちらっと見えた腕時計が光った。ものすごく高級そうだ。
「こんなかわいいお嬢さんが、こういう個室で男に襲われたらって親御さんがご心配なさるだろう?」
 千晴はキッと鋭い視線を投げかけた。
「あなたがそんなことをしなければ大丈夫です」
 なぜか男の口の端がうれしそうに上がった。
「いいね。気が強いは嫌いじゃない」
 目の前に男の顔がある。だが、彼の意図が読み取れない。ただわかるのは顔の造りが端正で、眼差しが凛々しいということだ。メガネのせいか理知的に見える。うっかり見惚れそうになったところで、千晴は我に返った。
「お願いです。春休みの間だけなんです。見逃してください。一人暮らしがしたいんです」
「どうして?」
 ──姉と離れて自分を見つめ直すため。
 そんなことを口にできる千晴ではない。
「男でも作る気か?」
 そう訊かれて、どきんとした。自分でも気づいていなかったが、美人の姉と離れたいということは、最終的には男が目的なのかもしれない。
 千晴は急に自分を滑稽こっけいに感じた。
「答えろよ」
 ぶっきらぼうにそう言われ、千晴はかちんときてしまう。初対面の男に問い詰められる筋合いはない。
「作れるものなら、作りたいですよ!」
 千晴がキレ気味にそう言うと、彼が、ぷっと笑った。笑うと少しかわいい顔になる。
「処女?」
 あまりに不躾ぶしつけな質問に千晴は憮然とした。
 ──かわいいとか思った私がバカだったわ!
「処女なんだ?」
 ──しつこいな。
 男というのは初めてが好きすぎる。
「どうせ、色気ないですよ」
「そうでもない」
 次の瞬間、指先で唇の周りをなぞられる。指が唇の上のくぼみで止まった。

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