【試し読み】お見合い結婚ですが!?~旦那さま、私は愛されていますか?~

作家:朝陽ゆりね
イラスト:蜂不二子
レーベル:夢中文庫セレナイト
発売日:2020/2/14
販売価格:400円
あらすじ

尚美は恋人を作らず、仕事で忙しい毎日を送っていた。そんなある日、お節介な伯母から突然見合い話をされる。相手は伯母の友人の甥・晴嘉(はるよし)。伯母に顔を立ててほしいと言われ、渋々写真を見てみると……そこに写っていたのはかなりのイケメン。この容姿で見合いだなんて性格に問題があるに違いないと、断る気満々の尚美だったが、実際に会った彼は容姿だけでなく身のこなしも素敵な男性だった。……ところが文芸の編集者である彼は、二人になった途端、言葉の誤用を指摘してくるし会話は小難しい話ばかり! 上手くいくはずないと思っていた尚美だが、相手はそうではないみたいで……? 三回会ったら、結婚……!?

登場人物
久保田尚美(くぼたなおみ)
恋人は欲しいが仕事が忙しく出会いがまったくなかった。伯母からの勧めで渋々お見合いをすることに。
桐嶋晴嘉(きりしまはるよし)
大手出版社の文芸編集者。容姿端麗で礼儀正しいが、言葉の誤用を指摘してくるなど細かい一面も。
試し読み

尚美なおみ、ちょっと」
 下から呼ぶ声がする。
 コーラスをやってる母の声は、普段はキンキンと甲高くてあまり好きじゃない。歌っている時の声はものすごくきれいだから真逆で大好きなのだけど。
「尚美ーーー。ちょっと下りてきて」
 うーん、土曜日の朝っぱらから、なによ、面倒くさいなぁ。
 胸中でぼやきながら時計を見ると九時だった。
 九時! もうちょっと寝させてよ。昨日も残業で遅かったんだから。
「尚美ってば!」
「はーーーいっ!」
 ン、もう!
 根負けして起きることにした。というか、ここまでしつこく呼ぶってことは、ホントになにか用事があるのだろう。
 パジャマのまま下りていき、すぐさま後悔した。
「まぁ、尚美ちゃん、そんなかっこで!」
 口うるさい伯母が来ていたなんて……先に言ってよっ。……って、無理か。
「ごめんなさい。着替えてくるからもうちょっと待ってて」
「いいえ、服はいいから顔を洗っていらっしゃい」
「はい……」
 ごもっともだ。
 急いで洗面所に向かい、歯を磨いて顔を洗う。基礎化粧品を塗れば、リビングに取って返した。そして伯母さんの前に座る。
「今日はね、尚美ちゃんにこれを渡したくて来たのよ。私の顔を立ててちょうだい」
 差し出された茶封筒に視線を落とし、イヤな予感を抱きつつ中身を確認する。
「なによ、これ」
「お見合い相手の写真と釣書よ」
「お見合い~!? 伯母さん、今の時代ないわよ」
「あるわよ」
「ないって。どこにあるのよ」
「ここにあるわよ」
 茶封筒を指さしながら力のこもった口調で言われて絶句する。
 そんな屁理屈……ないって。だけど伯母さんにひどい口をきくことはできないのでここは我慢。
「尚美ちゃん、もう二十八でしょ。しかも交際している人もいないなら、お見合いも出会いの一つと思って会ってみなさい」
「そんな言い方ないんじゃない?」
「それこそ今の時代、結婚がすべてだとは私だって思ってないわよ。だけどねぇ、若いのに休日にいつまでも家でゴロゴロしてるのは空気の無駄遣いでしょ」
 空気の無駄遣いって!
「こういうのってね、吸引力なのよ。縁という輪の中に入ることが大事で、入り方はとにかく接することなのよね。今の尚美ちゃんは仕事ばっかりやってるから仕事関係の縁が吸引力で寄ってきて、あなたの周りを回っているの。これを打開して恋愛運を呼び込むには、異性と会って交流することが最善なの」
「…………正論に聞こえるからこわい」
「正論よ。でね」
 ぐいっと伯母さんが身を乗り出してきたので、こちらは同じ分だけ引いてしまう。
 クリップで留められた写真二枚をバラし、私のほうに向けて並べた。
「私の親友の甥っ子さんで、現在三十五歳。光苑社こうえんしゃにお勤めなんだって」
「光苑社って大手の出版社じゃない」
 改めて写真を手に取って、写っている男性の顔を見ると、え? と思うほどのイケメンだった。
 頬から顎までがシャープなのは痩せ気味だから? 鼻筋もすっと通っていて一見ワイルドだけど、目が大きめなので全体としては優しげに感じる。
 俳優張り、とまではさすがに言わないけど、こんなイケメンが三十五まで独身って……それはそれで問題ありそうな気がするんだけど。考えすぎかな。
「なんの仕事をしているのかまでは聞いていないのだけどね、とにかく忙しいそうで出会いがないんだって。そこは尚美ちゃんも同じでしょ。でも、夫婦なんてものは長い人生を一緒に生きるんだから、二十四時間の中で数時間一緒にいたらそれでいいのよ。ベッタリなんて息が詰まるし。ちょうどいいんじゃないかしら」
 それもすごい理屈だけど……どうなの?
 確かに伯母さんはなんとかっていう子育て関係のNPOの代表をやってて、あっちこっち飛び回っているような人だから。
「けどさ、そんなに忙しい人なら、家のこと、なーんもしないんじゃないの?」
「それをうまくやらせるのが妻の手腕よ」
 そうかなぁ~。
「お友達の話では、まじめで誠実な人らしいわ。収入もいいし。とにかく会ってみなさいよ。ねっ!」
「…………まぁ、会うだけなら」
「決まりね! 日にちが決まったらまた連絡するわ」
 伯母さんは機嫌よく言うと、さっと立ち上がった。
「伯母さん?」
「お邪魔したわね」
「もう帰るの?」
「すぐにお友達に連絡しないと!」
「…………そう」
 伯母さんは意気込んで疾風の如く帰っていった。
「まぁ、会うだけ会えばいいんじゃない? 知らない業界の人と話をすることはいいことだし、出版界なんて一般人には接点のない世界だから、面白い話がいっぱい聞けるかもしれないわよ」
 脇から母が話しかけてきた。確かに出版社って惹かれるものがあるわよね。有名作家とか漫画家とかのエピソード聞けそうだし。
「結婚はまだいいけど、カレシは欲しいから。伯母さんが言う吸引力ってのはちょっと納得。とりあえず会社の人以外に会って恋愛運高めるわ」
 そうね、と笑いながらリビングを出ていく母の背を見送れば、次に写真に視線を落とした。
 ホント、イケメン。けど、大手出版社に勤務で、この顔で、お見合いに了承するってさ、素直に喜べない。今どき優良物件なんか落ちてるわけがないから、性格に難ありなんじゃって思ってしまう。
 恋愛運上昇のための吸引力を身に着けたいから見合いはするけど、この件についてはとりあえずお断り前提で。
 それに……カレシは欲しいけど、結婚はまだしばらくはいいと思ってる。お見合いで交際なんて、あっという間に終わっちゃいそうな気がするし。
 もうしばらく遊びたい。いやいや、仕事ばっかりだから、ぜんぜん遊んでないし。
「あーん、もっと青春を謳歌したい」
「なにが青春だよ、アラサーのくせして」
 弟の智一ともかずがいつの間にか横に座っていて、写真を手に取って見ている。
 この弟は私とは八つも年が離れていて、現在二十歳のお気楽な大学生だ。
「ちょっと!」
「イイ男じゃん。姉貴にはもったいないんじゃね?」
「うるさい」
「けど……えっと、三十五?」
 釣書まで手に取って書かれていることをチェックしている。それから私に顔を向けた。
「この学歴でこの職歴でこの顔で三十五。見合いしようなんてさ、なんかあるんじゃねぇの?」
 ううう……
「変な性癖があるとか、性格悪いとか」
 それを言うなっ。同じこと考えてるんだから。
「図星?」
「ホント、あんたはウザいわね」
「ははは。けどさ、男からの意見。さんざん遊んで充分堪能してそろそろ身を固めるか、だったら、外見は問わないから家庭的な女にするか、ってな思考はわかるよ。いいかどうかは別として」
 チクチクうっとうしいヤツ。
「とりま、頑張れよ」
「うっさい」
 釣書と写真を智一から奪って封筒に仕舞い、席を立つ。まるで逃げるように部屋に向かった。
 ベッドにダイブして天井を眺めるも、なんだか気持ちが落ち着かない。
「気分転換に出かけようかな」
 自分しかいない部屋で大きな独り言をこぼす。軽くかぶりを振って立ち上がり、クローゼットに歩み寄って中から服を引っ張り出した。
「あ」
 手にした服を見つつ、またしても独り言をこぼす。
「まさか、着物、とか言わないよね? そんなの持ってないし。今どきだからこじゃれたワンピースとかフェミニン系のツーピースとかでいいよね?」
 ブツブツ言いながら、とりあえず出かけるための用意をする。それからお昼はいらないと言いおいて家を出た。
 地下鉄に揺られ新宿に。まっすぐ百貨店へ向かう。
 いつもは百貨店で服を買うなんてことはないのだけど、お見合いの席に着ていくものなら少々奮発していいものにしたい。美人でもない至って普通の外見の私では、服やアクセサリーに助けてもらわないと。もちろん化粧は言うまでもない。
 お見合い自体には乗り気ではないのだけど、ショッピングは楽しい。半日費やしてあれやこれや不要不急のものまで買ってしまった。
 いつも頑張っているんだからご褒美ご褒美。
 で、家に帰ってきたらいきなり──
「あ、姉貴、グッドタイミング。朝子あさこ伯母さんから電話」
 智一に言われて子機を受け取る。
「もしもし、尚美です」
『ああ、尚美ちゃん、お見合いの日取りが決まったわ』
「え? もう?」
『ええ』
 はやっ!
『来週の日曜日、午後二時、新宿の東王とうおうホテルの一階ラウンジよ。善は急げというからね』
 ……善、かな?
『というのは冗談で』
 ……冗談?
晴嘉はるよしさん、再来週から忙しくなるそうで、時間を取るなら来週までと言ってるそうなの』
「ハルヨシ?」
『相手の名前よ。もう、尚美ちゃん、当日までに釣書ちゃんと見て覚えておきなさいよ』
「……すみません」
『じゃあ、次の日曜日』
 伯母さんは言うだけ言って切ってしまった。
 そっか、相手の名前、ハルヨシってのか。相手に失礼がないように、ちゃんと確認しとこ。バカなことを言って恥をかくのもイヤだし。
 弟のジト目視線を感じつつ、無視して部屋に戻った。そして改めて茶封筒を取り、中のものを出す。
「わ、すごくきれいな字……」
 字面がそろっているだけじゃなく、一字一字も整っている。顔もイケてるのに字もきれいって……なんかそんな優良すぎる物件がこんなに都合よく落ちてるのかな? なにかの罠とか、ドッキリとかじゃないよね?
 それとも智一が言うように、つか自分でも思っている通り、変な性癖があるとか性格に難ありとかっていう推測が決定的のような気がしてきた。

※この続きは製品版でお楽しみください。

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