【試し読み】私たち、一線越えちゃいました!

作家:橘柚葉
イラスト:中田恵
レーベル:夢中文庫クリスタル
発売日:2016/7/1
販売価格:400円
あらすじ

今春めでたく入社したばかりの小泉桃、二十二歳。配属された課には初恋の人、篠崎主任がいてドキドキが止まらない。再燃した恋だったけど諦めなくちゃ。だって彼には見目麗しい婚約者がいるのだから。しかし、私は見てしまったのです。主任の浮気現場を! 浮気はダメと忠告した私に感謝し「実家で作ったいい物をやる」と主任は言っていたけど……。主任の実家は有名和菓子店だから、おまんじゅう、羊羹……そんな甘いお菓子を想像していたのに、「桃。もっとキスさせろよ。足りない」甘い言葉に酔って頂いてしまったのは主任の身体。普段はクールで硬派。それなのに浮気男、そんな主任を愛してしまった私の受難の日々が始まる!

登場人物
小泉桃(こいずみもも)
配属先の上司・篠崎はかつての初恋の人。再燃しそうになった恋心を抑えながら仕事をするが…
篠崎斗真(しのざきとうま)
容姿端麗で仕事ができるモテ男。才色兼備の婚約者がおり、結婚は秒読みという噂も。
試し読み

1 いたしてしまいました!

「ほら、もも。舌を出して」
「あ……っふんん!」
 絡み合う舌と舌。そして深く口づけをされて、口内で再び絡み合う。
 クチュクチュというお互いの唾液の音が部屋に響き、それがなんとも言えぬ羞恥を煽る。
 キスってこんなに気持ちのいいものだったなんて……
 今まで付き合ってきた男性は一人だけ。それも短期間に寂しく儚く散ってしまった。
 キスをして、セッ○スをして。とりあえず一通りは済ませてきた。
 ただ、回数にしたら数えるほど。そんな短い付き合いだった。
 私の気持ちが足りなかったのか。彼の気持ちが足りなかったのか。
 今となってはわからないけど、恋と呼ぶにはいささか何かが足りない関係だったことは間違いないのだろう。
「ほら、もっと。桃のすべてを見せてみろよ」
 耳元で囁く声は、甘くて蕩けてしまいそうだ。
 今、与えられる刺激と甘さは以前体験したものとは全く別物だった。
(私……溺れちゃうかも)
 私をギュッと抱きしめる彼は、初恋の人。中学生の頃の私はこんな夜が来ることを想像していただろうか。
「桃。もっとキスさせろよ。足りない」
 求められるまま熱に浮かされたように、私は彼に抱きついた。
「そう、良い子だ」
「ああっ!! ……ふぅんんっ!」
 言葉で蕩け、指で身体を開かされる。そして私はシーツに身体を投げ出した。

 * * * *

 カーテンのすき間から朝の光が零れ落ち、そのまぶしさで目を覚ました。
 最初は自分のベッドだと疑わず「今日は休み! ゆっくり寝ちゃうぞ~」なんて二度寝を決め込もうとしたのだ。
 しかし、すぐにいつもと様子が違うことに気が付いた。
 ベッドのスプリングが違う。布団だって違う。
 何より異変を感じたことといえば、自分が裸だということ。
 いつもなら間違いなくパジャマを着る。裸で眠るなんてことは今までに一度だってない。
 まさか……、そんな思いを抱きながら周りを見回す。
 そして、とんでもないことをしでかしたことを知ってしまった。
(昨夜の私に誰か「正気に戻れ! バカ桃!」そう言って罵倒してよぉぉぉ!)
 隣にはキレイな寝顔を惜しげもなく披露している男が一人。
 その人物は誰なのか。嫌と言うほどわかっている。
 どうして彼が私の隣で眠っているのか。わかっているが、わかりたくない。
 どうせなら何も覚えていたくなかった。酒の力で記憶を吹き飛ばしてほしかった。
 しかし、現実はシビアなもので酒の力を借りても忘れることはできなかった。そういうことだ。
 昨夜の情事を、私は鮮明に覚えている。まさか、こんなことになるなんて……
「覚えている……覚えているんだけど」
 私は頭を抱え、低く唸った。
 ゴールデンウィーク明けに商品リサーチ課に配属になり、バタバタとせわしく月日が流れた。
 やっと落ち着きが見えてきたのが、昨日のこと。
 六月下旬、週末。課の皆さんが新入社員である私の歓迎会を開いてくれたのだ。
 そしてお酒をたくさんいただいた。課の皆さんとも打ち解けた。
 開放的な気分になって、たくさんアルコールを摂取したことはしっかりと覚えている。
 そして千鳥足になった私を、隣で眠りこけている男性が介抱してくれたのだ。
 そこまではしっかりと覚えている。だけど……
(どうして!? 私は篠崎しのざき主任とエ○チしちゃったわけ?)
 ここは一つずつ順を辿り、こうして朝チュンしてしまった理由を探った方がいいだろう。
 落ち着いて、と何度も自分に言い聞かす。
 私は布団を胸まで引き上げ、これまでのことを思い出した。

2 目撃しちゃいました!

 小泉こいずみ 桃。二十二歳。容姿は可もなく不可もなくといった感じ。
 凹凸もまぁ……それなりにあると信じたい。
 そんな私のチャームポイントといえば、今までカラーリングしたことがない髪だ。
 セミロングの黒髪は丁寧にケアしているおかげで傷みも少ない。
 それが唯一の私の自慢だったりする。
 そんな私が四大を卒業後、食品メーカーである我が社に入社したのは今年四月のこと。
 ひと月ほど研修に明け暮れ、やっと商品リサーチ課に配属されたのはゴールデンウィークが明けた頃だった。
 初めて商品リサーチ課のオフィスに入った私を待っていたのは、昔の知り合いとの再会だった。
 お互い顔を合わせた途端、目を丸くさせた。間違いない。相手も私のことを覚えていたということだ。
 覚えていてくれたことが嬉しくて思わず声が弾んでしまいそうになったが、グッと堪えて大人な対応をみせた。それは向こうも同じだった。
「商品リサーチ課主任の篠崎です。よろしく」
「小泉 桃です。どうぞよろしくお願いします」
 勢いよく頭を下げたあと、目の前の篠崎主任を見る。
 相変わらず表情が分かりづらいが、目尻が下がっている。たぶん、私との再会を快く思ってくれたのだろう。
 商品リサーチ課の主任である、篠崎斗真とうま。二十八歳、独身。
 同期の中でも出世頭だという彼は、この歳にして主任という役職に就いている。
 仕事がデキるというのは大前提ではあるが、運良く(?)ポストが空いていたため、役職に就くのが早かったらしい。
 他人には厳しく、自分にはさらに厳しくがモットー。
 仕事はできるし、容姿も抜群にいいので女性社員の間では人気ナンバーワンらしい。
 そんなモテモテの彼ではあるが、女性社員に対しては仕事の延長といった感じで冷たいようだ。
 そして、告白してくる女性社員をバッタバッタと切り捨てると有名。
 しかし、「そこがカッコいい! 硬派!」と言って人気は衰えることをしらないという。
 そんな篠崎主任は、私にとって特別な人だ。所謂『初恋の人』というヤツである。
 私が中学二年生、十五歳の春。通い出した塾に篠崎主任がいたのだ。
 当時、篠崎主任は県内の大学生で二十一歳。バイトとして塾の講師をしていた。
 あの頃からとても格好良かったのは記憶している。
 スラリとした肢体。たぶん百八十センチはあることだろう。
 モデル体型で、顔もとびっきり良くて『俳優さんですか?』と街で何度も聞かれたという伝説を持つ人である。
 しかし、塾の講師としての篠崎主任はとにかく厳しかった。と、言ってもテストの点が平均点以下だった私が悪いのだけど。
 とにかく徹底的にこけにされ、だけど徹底的に教えてもくれた。
 クールではあるんだけど、キチンと最後まで面倒を見てくれる。それが嬉しくて、頑張って勉強した。
 そのおかげで、私は志望校に無事合格できたのだ。
 高校生になり、塾へ通わなくてもよくなった。だけど、そのときに寂しさが込み上げたことは今でも思い出せる。
 篠崎先生に会うことができなくなる。
 それがとても悲しくて、寂しくて、胸がズキズキ痛んだ。私はそのときになってやっと篠崎先生に恋をしていたと気がついたのだ。
 もし、私が篠崎先生に告白をしたとする。だけど、私たちは結ばれることはなかっただろう。
 片や高校一年生、片や社会人。歳も離れているし、環境も境遇も全く違う。なにより高校一年生の私を恋愛の対象として見てもらえるわけがない。
 と、言うわけで勇気を出して告白なんてできず、あっけなく幕が下りた私の初恋。
 それは良い思い出と処理をして私は高校生活を謳歌し、大学生になり、人並みに恋をしたりもした。
 でも、その恋はすぐに破局を迎えた。まだまだ恋に夢を見ていただけだったと今ならわかる。
 そのあとの私は激戦につぐ激戦をくぐり抜け、なんとかこの会社の内定をもぎ取ったのだ。
 そして今、初恋の人が目の前にいる。
 ドキドキして苦しい。どうしよう、仕事にならないかもしれない。
 そんなピンク色でフワフワした気持ちを抱いてもいたが、すぐに現実を突きつけられた。
「小泉。なんだ、この資料は」
「篠崎主任に頼まれていた書類ですが」
「俺は五年前の資料を持ってきてくれと頼んだはずだ」
「?」
「よく見てみろ。これは三年前のものだ」
「あ……申し訳ありませんっ!」
 勢いよく頭を下げると、頭上で篠崎主任が大きなため息をついたのがわかった。
 ギュッと手を握りしめていると、再び厳しい声が響いた。
「謝っている暇があったら早く資料を持ってこい。会議まであと三十分だ。急いで」
「はい、わかりました」
 慌てて資料室に駆け込み、五年前の資料を探し出す。
 もう一度資料を確認して五年前のもので間違いないことをチェックすると、それを抱え込んだ。
 すぐさま自分のデスクに戻り、数値をピックアップしていく。
(ああ、もう。私のバカ!)
 しかし、今は自分自身を罵倒する時間さえも惜しい。
 会議まであと少しだ。それまでに資料を揃えたい。自分への罵倒はそのあとだ。
 時間いっぱいを使い、なんとか会議が始まる前までに資料を作成し、コピーをして部数を揃えることができた。
 その資料の山を篠崎主任に渡し「チェックをお願いします」と頭を下げた。
 チラリと私に視線を向けたあと、篠崎主任は資料を手に取り、パラパラと目を通していく。
「よし。なんとかなったな、よく頑張った」
「っ!」
「今度は同じミスをしないように。一つずつ学習していけよ、小泉」
 ポンと私の頭に触れたあと、篠崎主任は慌てて会議室へと飛んで行ってしまった。
 確かに篠崎主任は厳しい人だ。でも、その人のためを思ってキツく当たっているだけ。昔から篠崎主任はそういう人だった。
 懐かしさが込み上げた私だったが、気を引き締める。
 同じミスは繰り返さない。これがきっと一番大事なことなのだから。
 商品リサーチ課に配属されて、ひと月。篠崎主任に怒鳴られる回数が減ってきたころ、やっと周りを見回す余裕もできてきた。
 噂話なども、同期をつてに聞くことが増えている。
 その中で私が一番関心を持っていたのは、もちろん篠崎主任のことだ。
 仕事ができて、モデルのような容姿。モテないわけがないとは思っていたが、予想は的中した。
 かなりモテる篠崎主任だが、近々結婚する予定があるという。
 秘書課に所属する深見ふかみさんという才色兼備のお姉様とお付き合いしているようだ。
 篠崎主任より年上のお姉様ではあるのだが、とにかく素敵な人である。
 この前、チラリと食堂でお見かけしたがオーラが違う。
 格の違いを見せつけられ、対抗する気も失せたほどだ。
 その深見さんと篠崎主任の結婚は秒読みということ。それを聞いて胸がズクズクと痛んだが、仕方がないだろう。
 逆立ちしたって深見さんに勝てる要素は私に一つもない。
 それに、篠崎主任は私の初恋の人だ。特別な思いがあるが故に、心が疼いているだけかもしれない。
 なんとか自分の気持ちを誤魔化そうとはするのだが、やっぱり胸が痛む。
 失恋を感じつつ、それでも日々は流れていく。
 六月中旬。そろそろ梅雨入り宣言がされるかもなぁ、と思いながら会社へ向かう途中の出来事だった。
 アパートから会社までは車を使っている。
 いつものようにハンドルを握り、いつもと同じ道を走っていた。
 道中にはラブホテルが点在しているのだが、信号待ちの間になにげなくそのラブホテルの入り口を見ていた。そのときに事件が起きたのだ。
「リア充め、平日の朝から……」
 ラブホテルから一台の車が出てきた。
 思わず悔し紛れで呟いた言葉だったが、すぐに息を呑む。
 ハンドルを握っている人物に見覚えがあったからだ。
 運転席にいる男性、それは会社に行けば顔を合わせる篠崎主任だった。
 そして驚くべきことはまだある。助手席に乗っている女性だ。
「嘘……深見さんじゃ、な……い?」
 篠崎主任と付き合っていて、二人は結婚秒読みだと同期に聞いたばかり。
 それなのに、篠崎主任の隣に座っている女性は深見さんではない。
「一体、これはどういうことなの?」
 篠崎主任が運転する車は、そのまま走り去ってしまう。
 残された私は、今自分が見た光景が信じられなくて何度も目を瞬かせた。
(どうして篠崎主任はラブホテルから出てきたの?)
 答えは簡単だろう。助手席の女性とラブラブイチャイチャして、大人の時間を過ごしていたということだ。
 なんだか生々しくて、だけどそれは現実なわけで……
 深見さんとのことを聞いたときも胸が痛んだが、決定的瞬間を見てしまった今はもっと胸が痛む。
 そして同時に篠崎主任の浮気も確定した。
 いつもクールで硬派。他人に厳しく、自分には特に厳しい人である。
 それなのに浮気をしているなんて……かなりショックだ。
 私がずっと描いていた篠崎主任像とはかけ離れているようである。
 見間違いであってほしい。私の勘違いであってほしい。
 そんな思いが募りすぎて、私は会社に着くと篠崎主任を会議室に呼び出していた。
 自分のとった行動に私自身ビックリしている。だけど、どうしても確かめておきたかった。
 篠崎斗真という人間は、私が思い描いていた人で間違いないと信じたかったのだ。
「で? 相談があるということだったが」
 冷静な様子で私を見つめている篠崎主任は、これから私が言おうとしていることなど想像もしていないことだろう。
 私はギュッと手を握りしめたあと、何でもない振りをして明るい声で篠崎主任に問いかける。
「今朝、主任はどこにいましたか?」
「は?」
「どこにいたかを聞いているんです」
 目の前の篠崎主任は相変わらずの無表情で私を見下ろしている。訳が分からない、そんな雰囲気だ。
 これでわかった。篠崎主任にしてみたら、色んな女の子とラブホでイチャイチャし、朝帰りすることは日常茶飯事ということだ。
「そんなこと、お前に何か関係があるか?」
「私には関係ないかもしれませんが、今朝のことを私が会社で言いふらしたら……大変なことになるのは主任じゃないですか?」
「言っている意味が全くわからないな」
 揺さぶりをかけても顔色ひとつ変えない。そういうところは昔も今も変わらずといった感じだ。
 私はどんどん沈んでいく気持ちをなんとか立て直し、篠崎主任を見つめた。
「私、通勤は車なんですよ。そして私が住んでいるのは実家近くのアパート。通勤途中にはラブホテルがいくつかあるんです」
「……」
「ここまで言えば、わかりますよね」
 これまでずっと私を上から目線で見ていた篠崎主任だが、これからは私のことをそんな扱いができなくなるだろう。
 私のことなんて見向きもしないことはわかっている。
 ちょっとだけ切なさも込み上げてくるが、さすがに深見さんと婚約という話まで出ているのだ。
 それなら篠崎主任のため。ここは一つお説教をしてやらねばならないだろう。
 私はムンと口を横に引き、神妙な顔をして篠崎主任に注意をする。
「篠崎主任。お付き合いしている人がいて……それも結婚を考えている女性がいるのに、裏切るようなマネをしてはいけません」
「……」
「今回のことは私の胸の内だけにしまっておきますから、ご安心を。というか、こんな恐ろしいこと口外なんてできません」
 考えただけで震える。地獄絵図だ。
 それなら見て見ぬ振りをし、篠崎主任には心を入れ替えてもらった方がいいだろう。
 篠崎主任を見上げ、私はニッと口角を上げる。これは私なりの精一杯の強がりだ。
 好きな人には幸せになってもらいたい。篠崎主任が改心し、深見さんを今後ずっと愛し続けてくれればそれでいい。
 余計な波風を部外者が立てるというのも、いかがなものかと思うし。
 腰に手を置き、ちょっとだけ上から目線で篠崎主任に物申す。
「言っておきますけど、あちこちに言いふらさないのは今回だけですからね。ですから、深見さんには土下座をして謝ってください。男として情けないです!!」
「別に彼女とは付き合ってもいないし、結婚なんて話もない。それに誰とも付き合ってなどいない」
 相変わらずのポーカーフェイスでシレッと言い切る篠崎主任を見て、私は肩をすくめた。
 この期に及んで、まだそんなことを言っているのか。
 深見さんとのことは新入社員の私の耳にまで届いている。
 ということは、この会社の人間なら誰しもが知っている情報ということだ。
 それに、私はこの目で篠崎主任が深見さん以外の女性とラブホテルから出てくるのを目撃している。誤魔化しても無駄だ。
 私はわざとらしく笑った。
「またまた、そんなこと言って。人を驚かせようという魂胆が見え見えですよ」
「……相変わらず人の話を聞かない」
「何か言いましたか?」
 塾に通っていた頃、塾の講師であった篠崎主任が私に言っていた言葉だ。
 人の話を聞かない。猪突猛進。ちょっと落ち着いて周りを見ろ。周りの言葉に耳を傾けろ。
 勉強以外のことでも、そんなふうに言われたことを思い出した。
 ちょっとセンチメンタルな気持ちになった私に、篠崎主任はため息交じりで頷いた。
「いや、了解した。部下からのありがたい忠告に感謝して、近々実家のいい物をやろう」
 篠崎主任のご実家は老舗和菓子屋で、そこのお菓子はどれも頬が落ちそうなほどに美味しい。
 篠崎主任が塾の講師をしていたとき、時折差し入れとして持ってきてくれていたのだ。
「それは楽しみですが……それより深見さんに土下座が先ですよ。きちんと謝って許してもらってください。許してくれるかどうかはわからないけど」
 やっぱり好きな人には幸せになってもらいたい。
 ちょっぴり寂しくて悲しくて辛いけど……それでも、やっぱり篠崎主任には幸せになってもらいたいのだ。
 そんな私の気持ちが伝わればいいのだけど……相変わらずの篠崎主任の様子に、どこか不安を覚えた。
 そして、そのときの私の予感は的中することになるのだ。

※この続きは製品版でお楽しみください。

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