【試し読み】魔法の媚薬と野獣たち~2匹の幼なじみに狙われてます~

作家:此花さくら
イラスト:つきのおまめ
レーベル:夢中文庫ロマンス
発売日:2020/6/3
販売価格:800円
あらすじ

「だったら、一度試してみる? 女のカラダの翼とオレたちのカラダの相性をさ」――大学のマドンナを射止めるために飲んだモテ薬のせいで、なぜか女の子になってしまった翼。しかも周りは翼を生まれたときから女の子だったと信じて疑わない。女の子になってから危ない目に遭ってばかりの翼を助けてくれたのは、幼馴染みの伊吹と翔悟だった。ある日翼は、二人から「ずっと好きだった」と打ち明けられ、さらにとろとろになるまで気持ちよくされてしまう。男だったことを打ち明けても「そんなの気にならない」と言う二人に、男に戻りたいはずの翼の気持ちは揺れ動いてしまい……? 二人の幼馴染みから愛される、甘い三角関係の結末は――

登場人物
八神翼(やがみつばさ)
もともとは男だったが、モテ薬を飲んだせいで女の子になってしまう。
氷室伊吹(ひむろいぶき)
翼の幼馴染。高校時代は生徒会長で、成績優秀、容姿端麗のためモテる。
楽々浦翔悟(ささうらしょうご)
翼の幼馴染。雑誌のモデルをしている。伊吹と学年トップを争うほど頭も良い。
試し読み

 午前七時。目覚まし時計がけたたましく鳴り出すと同時にボクはベッドから飛び起きる。
 そして、けたたましく鳴り続ける目覚ましを止めると二階にある自分の部屋を飛び出して、一階にある洗面所へと駆け込む。
「き、今日こそ……お願いします。どうか……どうか」
 ボクは心の中で、神様、仏様、すべての神様に祈りつつ洗面所にある大きな鏡に自分を映してみる──。
「…………ああ。や、やっぱり……だめだったか……」
 ボクは鏡に映った自分の顔を見て絶望の深い谷へと落ちていく気分だった。
「予想はしていた……。していたけど……」
 ヘナヘナと洗面台に手をかけたままその場に座り込む。冷たい洗面台に額を押し付け、ボクはしばらく動けずにいた。
「こら、つばさ。そんなところで何してるの? 毎朝、騒々しいったらありゃしない。もう、あんたも二〇歳はたちの女性なんだから、もう少し女らしくしなさいっ」
 洗面所のドアが開き、ひょっこりと顔を覗かせた母さんがボクに向かってちょっと怒ったように言う。
「母さん何度も言ってるけど……ボクは女じゃなくて、本当は男なんだってば」
 ボクの言葉に母さんは飽きたように、大きくため息をついた。
「まったく、この子はなにバカなこと言ってるの? 翼、ちゃんと鏡を見てみなさい。どこからどう見ても、あんたは女の子じゃない」
「だから、それは……じいちゃんからもらった薬のせいで」
「夢みたいなこと言ってないで、早く顔洗って大学行く準備しなさい。お母さんはあんたの寝言に付き合ってるほど暇じゃないのよ」
 母さんはそう言うと、「忙しい、忙しい」と言いながらボクを放ってキッチンへと戻って行った。
 ボクは仕方なく立ち上がった。鏡には女性になったボクが映っている。
 ボクこと、八神やがみ翼は二〇歳。都内にある帝都ていと大学に通う大学生。信じてくれないだろうけど、ボクは一ヶ月前まで男として生きていた。
 けれど、ある事件……? いや、ある薬を飲んだ翌日、目を覚ましたら女になっていた。
 そして、どういうわけか周りの人間までボクを生まれた時から女だと思っている、というふうになっていた。
 女になった一日目。ボクは混乱して大騒ぎした。母さんはボクを遅い反抗期になったと言って大泣きするわ、父さんは心療科へ連れていこうとまでした。
 ボクは生まれた時は男だったと何度言っても両親は信じてくれなかった。母子手帳も見せてもらったけど、いつの間にか性別は「女」と表記されていた。
 ボク自身、何が何だかわけが分からず三日間はショックのあまり熱を出し寝込んだ末、その後数日は自分の部屋に閉じこもり他人と会うことすら拒絶した。
 一ヶ月前、ボクの運命をここまで大きく狂わせた事件とは──。

* * *

 都内の国立大学でも偏差値が高いと有名な帝都大学に必死の思いで勉強して入学することができたのが、ボク……八神翼。
 帝都大学への進学でC判定をもらっていて、進路指導の先生からは他の大学を勧められていた。
 まぁ、ボクとしてはどうしても帝都大学じゃなきゃダメというわけではなかった。じいちゃんが帝都大学に入れるような孫がいたら鼻が高い、なんてぽつりと言ったのがボクが帝都大学を志望した理由だった。大学を卒業した後のことを考えると、箔が付くかなと思ったのもあるし。
 諦めかけていたボクに勉強を教えてくれたのが幼馴染の氷室ひむろ伊吹いぶき楽々浦ささうら翔悟しょうごだった。
 伊吹は高校の生徒会長で、成績優秀、容姿端麗と天から二物も三物も与えられたようなヤツ。しかも身長は一八〇センチ……与えられすぎだろ、と文句を言いたくなるようなヤツだ。
 そして、翔悟もバスケットボール部の部長でエース。一八八センチの長身で高校の時から雑誌などのモデルもしている。学力も伊吹と学年トップを争うほどだ。
 そんなできた幼馴染の二人に挟まれたボクはというと……身長一六八センチ。自分ではイケてる方だと思っている──けれど、伊吹と翔悟に挟まれたら、どんなイケメンだって霞んで見える。
 しかも日本人の平均よりちょっとだけ──本当にちょっとだけ身長が低いボクは、二人のせいですごく小さく見える。
 二人には何度も「もう、伊吹と翔悟とは一緒に歩かないっ!」と宣言したはずなのに、二人はボクの宣言を無視して纏わりついてくる。
 そのせいで、ボクの高校時代は沢山の女子に呼び出されては伊吹と翔悟にラブレターだ、バレンタインのチョコだ、お弁当だのを渡して欲しいと頼まれ続けた。
 ボクは郵便配達屋じゃないんだと思ってはいても、幼稚園の頃から一緒にいる親友でもある。
 二人のおかげでボクは、イジメに遭うこともなく平穏な高校生活を送ってこられた。
 ちょっと話が逸れてしまったけれど、とにかく必死に受験勉強をしたボクはなんとかギリギリで帝都大学に入学することができた。
 そして、入学式でボクはある女性と運命の出会いをはたした。
 彼女の名前は澤見さわみ玲子れいこ。身長はボクより少し低く、長いサラサラの髪が風で揺れていた。
 さらにボクが彼女に運命を感じたのは、彼女がボクと同じ文学部でクラスも一緒だったということ。
 しかも彼女は誰に対してもとても優しい。まさに、ボクの理想の女性が現れたんだ。
 けれど、綺麗で優しい彼女を男たちが放っておくわけがない。彼女はあっという間に大学のマドンナになってしまった。
 ボクは何度も彼女に告白しようとしたけれど、彼女を目の前にすると緊張してうまく話すことができなくて、結局ただ黙って笑顔で頷くことしかできなかった。
 そんな、澤見玲子を見つめる日々を送っていたボクを親友の二人は──。
「翼。そんなに澤見のことばかり見ていると、弁当のおかずオレが全部もらうぞ」
「えっ? 翔悟にはちゃんとカツ丼とラーメンがあるだろ」
 翔悟の箸がボクのお弁当の玉子焼きに伸びようとしていた。ボクはサッと素早く翔悟の箸からお弁当を守る。
「それじゃ、俺はこのタコさんウインナーをもらおうかな」
「な、なに~~っ」
 ボクが油断したスキをついて、大好きなタコさんウインナーを伊吹が盗み取ると、パクリと食べてしまった。
「伊吹……何するんだよっ! ボクが一番食べるの楽しみにしていたのにっ」
 ボクが悔しそうに伊吹を睨みつける。けれど、伊吹は男前の涼しい顔で。
「翼がよそ見しているからだよ。俺と翔悟と一緒にいる時は俺たちだけに翼の意識を集中させれてくれないとね」
 そう言って、すべての女子がその場で倒れてしまいそうな神スマイルをボクに向ける。
(ボクが女の子だったら、きっとこの神スマイルに一発で落ちてしまうんだろうな。けど、幼馴染だし小さい時からこの笑顔は見慣れてるんだよな、ボク)
 そんなことを考えていると──。今度は死守したはずの玉子焼きを翔悟に奪われてしまった。
「ああっ! くそっ、翔悟まで。ずるいぞ」
「ははは。オレにスキを見せたのが、翼の運の尽きだな。この美味い出汁巻き玉子はオレがいただく」
 翔悟は不敵な笑みを浮かべて、ボクから奪った母さんお手製の出汁巻き玉子を一口で食べてしまった。
(ううっ……。毎日、伊吹も翔悟もボクのお弁当のおかずを奪っていく。確かに、高校の時も時々はあったけど……。大学に入って、ボクが澤見さんに気を取られるようになってから、おかずを奪われる回数が多くなってきた気がする……ハッ! もしかして、これがイジメというやつなのか?)
 思わず、二人に目をやる。ボクがうざくなってイジメているのか? けれど、それはボクの単なる妄想に過ぎなかった。
「ほら、出汁巻き玉子の代わりに、この分厚いカツをやるからそれで勘弁しろ」
「……あ、ありがと」
 翔悟がボクにカツを分けてくれた。
「俺の唐揚げも好きなだけ食べていいから」
 伊吹がボクのお弁当に唐揚げを一つ、二つと入れてくる。
「い、いいよ。一個で。伊吹の唐揚げ全部もらったら、伊吹のおかずがなくなっちゃうだろ」
 ボクはさらに唐揚げを入れてこようとする伊吹の手を止めた。伊吹はというとニッコリと微笑んで。
「俺は翼を見ているだけで、ご飯を食べられる」
「はぁ? な、な、何言ってるんだよ。ボクだけでご飯食べられるっておかしいだろ?」
「いいや、おかしくないね。オレも翼が美味そうに飯を食っている姿を見ているだけで十分だ」
「ふ、二人ともバカじゃないの? ボクの顔なんて見ててもご飯は美味しくならないよ。澤見さんみたいな綺麗な人だったら別かもしれないけど」
 男の……見た目も平凡なボクを見てもどうにもならない。ボクの言葉に二人はちょっと怒ったように顔をグイッと近づけてきた。
「おい、翼っ! お前、自分のことをちっとも分かってねぇな」
 翔悟がいつもより低い声で唸るように言う。
「そうだよ。どれだけ俺たちが苦労してると思ってるんだい? 翼はもっと自分の魅力を理解しないといけないよ」
 伊吹まで、困ったような怒ったような顔でボクを諭してきた。
「なんだよ。魅力って? 伊吹と翔悟の言ってる意味、全然分からないよ」
 ボクに何の魅力があるかなんて知らない。というか、ボクより伊吹と翔悟が魅力的じゃないかと思う。
(そういえば……高校の時もこんな話をした記憶があるような……ないような……)
 色々とツッコみたいことはあるけれど、お昼の時間は限られている。ボクは急いで残りのお弁当を食べることにした。
「あのさ……。早くお昼食べないと、午後の授業遅れると思うんだけど……」
 ボクは伊吹と翔悟を見た。二人は顔を見合わせた後、クスクスと笑った。
「えっ? 何? なんで笑ってるの?」
 ボクが不思議そうに二人の顔を交互に見ると。
「オレたちは、もう食べ終わったぜ」
「う、うそ?」
「本当だよ。ほら、トレイの上にある物はなくなってるよ。食べ終わってないのは、翼だけ」
 ボクは驚いて、伊吹と翔悟のトレイを見た。確かにさっきまであったはずのお昼ご飯がすべてなくなっている。
「ふ、二人ともいつ食べ終わったの?」
 ボクが唖然として問いただすと。翔悟が面白そうに笑いながら。
「翼と話をしながら食べた」
 あっさりと言う。伊吹も「うんうん」と頷いている。
(バ、バカな。しゃべりながら食べるなんて……。それじゃ、ボクも早く食べ終わらないと)
 ボクは慌ててご飯を口の中に放り込んだ……途端。
「ゴホゴホッ……。むぅぐぅうううっ」
 急いでご飯を口の中に詰め込んだせいで、喉にご飯を詰まらせてしまった。苦しげに胸をトントンと叩いていると、伊吹が水を差し出してくれた。
 ボクはその水を手に取ると、急いで喉に流し込んで。
「はぁ、はぁ、はぁ。し、死ぬかと思った」
「そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ。時間はまだあるから」
 伊吹がボクの口の端についたご飯粒を指ですくい上げると、ペロリと自分の指を舌で舐めた。
 その仕草が色っぽくて、ボクはドキッとしてしまった。
(な、なんだよっ! そのイケメンな仕草は。こういうことをさらりとするんだよな、伊吹は。ボクもなに女の子みたいにドキドキしてるんだ)
 ボクは我知らず頬が熱くなる感じだった。顔を伏せていると、今度は翔悟がボクの手から箸を奪い取って。
「オレが食わせてやるよ。ほら、口開けろ。あ~~ん」
 翔悟がボクにご飯を食べさせようとする。周りの女子たちのボクに向けられる視線が背中に突き刺さる。
「い、いいよ。子供じゃないんだから、自分で食べられるっ」
 ボクは翔悟から箸を奪い返すと、今度は喉に詰まらせないようにお弁当を食べる。
 伊吹と翔悟は、そんなボクをただ黙ってじっと見ているだけだった。遠巻きに女子たちがボクたちを観察している。
 ボクは、いたたまれない気持ちになりながらお昼時間を過ごす羽目になってしまった。

 大学の授業が終わるとボクは真っ直ぐに自宅に帰ってきた。そして、ソッコーで自分の部屋へと行く。
「はぁ……。今日も澤見さんは綺麗だったな……」
 ボクは、教室で友達と楽しそうに話をしている澤見さんの横顔を思い出していた。
「本当はボクも澤見さんと同じ、テニスサークルに入りたかったのに。そしたら、もっと澤見さんと一緒に過ごせる時間があるのになぁ」
 大学に入学してからのボクは目的もなく、ただただ毎日を無意味に過ごしていた。憧れの澤見さんとの距離は一向に縮まらない。
 ボクは大学に入ってからサークルも部活もしていない。別に興味がないわけじゃない。
 サークルや部活の勧誘を受けることもあったけど、ボクが「サークルに入ろうかな?」なんてボソッと口にした時、伊吹と翔悟が真顔でボクを止めてきた。
 理由を聞くと、伊吹と翔悟は「翼によからぬ妄想を抱いているヤツらが多いから」とわけの分からないことを言っていた。
「ボクも伊吹や翔悟みたいなイケメンだったら、こんなに悩まずに澤見さんに告白できたのに……。せめて身長が一七〇センチだったら……」
 身長が告白する基準ってわけではないのだけれど──。やっぱり、男たるもの、好きな女の子よりは少しでも身長は高い方がいいと、ボクは思っている。
「ああ……。告白して玉砕したらボクはもう大学へ行けなくなる」
 ベッドに寝転んで、日課のようにあれやこれやと悩んでいた時だった。
 部屋の棚に置かれていた家族写真が目に入った。
「んっ? なんでボクの部屋に家族写真が置いてあるんだ?」
 ボクは起き上がると棚に置いてあった家族写真を手に取った。ばあちゃんが亡くなる前に撮った写真だ。
「じいちゃんだな。ボクの部屋に家族写真を置いたのは。まったく、二〇歳になった男子の部屋に家族写真なんてあったら恥ずかしいだろ」
 ボクは写真を手に一階にあるじいちゃんの部屋に向かった。
「じいちゃん、勝手にボクの部屋に入るなって言ってるだろ。それに、家族写真なんて恥ずかしいから置くなよ」
 一階奥にあるじいちゃんの部屋の襖を開けて中に入る。じいちゃんはお茶をすすりながらスマホでゲームをしていた。
「おお、翼。元気そうだな? 写真は気に入ったか?」
「だからぁ……。勝手に部屋にこんなもの置くなって」
 ボクは写真立てをちゃぶ台の上に置いた。じいちゃんは老眼鏡をかけたまま、ヒクヒクと右の眉毛を動かした。そして──。
「……悲しいな。昔はじいちゃん、じいちゃんと言ってワシの後ばかり追いかけていた翼が、そんな冷たいことを言うとは……。ばぁさん……ワシはこの家では邪魔者なんじゃ」
「ちょっ、勝手なこと言うなよっ! 別に誰も邪魔者だなんて言ってないだろ。ただ、勝手にボクの部屋に入って写真を飾らないで欲しいんだよ」
「写真ぐらい、いいじゃないか。外国の映画だと、暖炉の上とか色んなところに家族の写真が飾られているじゃないか?」
「外国は外国。ここは日本だよ」
 ボクの言葉に、今度はポケットから古い写真を取り出してジッと見つめながら。
「ばぁさんや聞いてくれ。翼はワシやばぁさんのことなんてどうでもいいんだと。ああ……なんて薄情な孫なんだ……ワシも早くばぁさんのところに行きたいなぁ」
 じいちゃんは古びたその写真に向かって嘘泣きをしている。
(はぁ……。もう本当に面倒くさいな。何かというとすぐそうやってばあちゃんのところに行きたいと言うんだから。家族の誰よりも元気なくせに)
 まぁ、じいちゃんの気持ちもちょっとだけなら分かるけど。姉さん二人とボクがまだ小さい頃は、両親とも共働きだったからボクたち姉弟の面倒はじいちゃんとばあちゃんが見ていた。
 二人の姉さんたちも就職して、仕事や遊びでほとんど家にいない。ボクも大学に入学してから授業やレポートで忙しく、じいちゃんと話をする機会も減ってるから。
 まだ、ボクに見せつけるように写真に話しかけているじいちゃんの手から古い写真を奪い取る。
「もう、いい加減にしてくれよ。こんな古写真なんか引っ張り出して……んっ? なに、この写真の女の人すごい綺麗じゃないか? じいちゃん、誰だよこの女の人?」
 じいちゃんから奪い取った写真には、長い黒髪に女学生ふうの袴を穿いて微笑む美少女が写っていた。
 ボクの驚く顔を見ながら、じいちゃんは勝ち誇ったように胸を張る。
「この女性はなぁ……。女学校時代のばぁさんだ」
「えっ? えええええぇぇぇぇーーー!!」
 写真の美少女がばあちゃんだと言われ、ボクは思わず大声を上げてしまった。
「し、知らなかった……ばあちゃんってこんなに美人だったのか」
「翼はシワシワになったばぁさんしか知らないからな。いやぁ、若い頃は白百合のようで綺麗じゃったんだぞ」
「白百合って……。でも、そんな美少女とよく結婚できたね。ボク、昔のじいちゃんの写真は見たことあるけど……」
 ボクはそこで言い澱んでしまった。若い頃のじいちゃんはやんちゃな雰囲気はあっても、決して男前……と言えるわけではなかった。
「こらっ、翼。今、ワシのこと男前とは言えないなとか思っただろ」
「うっ! そ、それは……」
「まぁな、確かにお前の思う通り男前とは言いがたかったがな」
「じゃあ、じいちゃんはどうやってばあちゃんを口説いたの?」
 ボクは思わず身を乗り出してじいちゃんに聞いていた。
「ふふふ。それはなぁ……実はワシには秘策があったんじゃ」
「秘策?」
 ボクはじいちゃんの「秘策」というものが、どうも信用できなかった。疑いの視線を向けていると。
「お前、信じておらんな? よし、だったら証拠を見せてやろう」
 そう言うと、じいちゃんは仏壇の奥をゴソゴソと探り始めた。そして──。
「おおっ! あったあった」
 じいちゃんは嬉しそうにそう言うと、仏壇の奥から紫色の小さな小瓶を取り出し、ちゃぶ台の上に置いた。

※この続きは製品版でお楽しみください。

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