【試し読み】もっと、あなたのことを教えて?~契約結婚から始まった恋~

作家:あゆざき悠
イラスト:乃里やな
レーベル:夢中文庫クリスタル
発売日:2018/8/22
販売価格:400円
あらすじ

「俺と結婚してほしいんだけど」──同期で仕事のライバル、社内でも大人気のイケメン・浅井怜人からお互い仕事に打ち込むために、と契約結婚を持ち掛けられた遠山梢。ふたりが勤める会社では社内婚活推進ということもあり毎月婚活パーティーが行われ、独身者は強制的に参加させられる。お互いに仕事優先、自分のことは自分でする──仕事に集中したいと思っている梢にとっても悪くない条件の「契約結婚」に乗ることにしたのだが……。気をつかわない結婚生活だったはずなのに梢の気持ちに大きな変化が。彼に恋愛感情を抱いたらこの関係が終わってしまう? 契約結婚なのに彼に愛されたいなんて……。結婚してから始まるラブストーリー!

登場人物
遠山梢(とおやまこずえ)
美人で姉御肌、男女ともに好かれるタイプだが仕事一筋。怜人のことをライバル視している。
浅井怜人(あさいれいと)
アイドル風の爽やかなイケメン。仕事に集中したいがために梢に契約結婚を持ち掛ける。
試し読み

第一章 利害一致

 四月の第三金曜日、その衝撃な言葉が響いてきた。
遠山とおやま、俺と結婚してほしいんだけど」
 遠山こずえは真正面に立つ男から、真剣な顔でプロポーズをされた。
浅井あさいくん、いったい何を言っているんだろう?)
 梢の前に立っている男は、彼女と同期の浅井怜人れいとだ。彼は社内一の爽やかイケメンで髪は少し茶色く、毛先を遊ばせていることから、某男性アイドルグループにいそうな人といわれている。もちろん、容姿がいいだけではなく、仕事もできる。それでいて独身、彼女ナシで常に女性から執拗なアプローチを受けている。
 怜人と梢は付き合っているというわけではない。
「ダメかな?」
 彼は照れ笑いを浮かべ、梢は不可解な気持ちを募らせていた。

 梢と怜人は大手広告代理店フジヤマの企画部だ。フジヤマはそもそも藤山と漢字で書くのだが、創設者が日本一の広告代理店になろうと富士山とかけてカタカナ表記にしたらしい。
 四月一日、会社は新体制を迎えた。社長が世代交代し、息子の代になったのをきっかけに社内ルールが大幅に見直された。
 残業の見直し、出勤時間の見直しなどを含めた働き方の改革。そして何よりも社内恋愛禁止の排除だ。社内婚活を推進し、少子化を少しでも軽減したいというものらしい。
 そしてその迷惑な『社内婚活』パーティーは毎月行われるらしく、第一回目の四月は新入社員歓迎会を兼ねた独身者の集まりだ。
 独身者は恋人がいる、いない関係なく強制参加となっている。
(こんな集まりをしているくらいなら、さっさとプレゼンの資料をまとめたい)
 梢は仕事で頭がいっぱいのまま参加していた。声を掛けられても気のない返事はいつものことだ。梢は黙っていれば美人に入る。女性からも慕われるような格好いい女性で、男性が声を掛けにくいタイプだ。黒く長いストレートヘアのように性格もまっすぐ。時折、気の強い一面を見せる姉御肌だ。
「クールで仕事ができて、その上綺麗だもんなぁ。遠山さんを落とせる男なんていないだろ」
「あしらい方もうまいよな。さすが美人で男慣れしているだけあるよな」
 婚活パーティーでそんなことを囁かれていた梢だが、本人の耳に入っていない。もっとも彼女がその噂を耳にしたら、笑い飛ばすだろう。梢はこの五年ほど彼氏に恵まれず、仕事一筋の枯れ女街道まっしぐらだ。
 パーティー中、怜人が次から次へと女性から声を掛けられているのが、梢の目の端に映っていた。
(モテる人って大変よねぇ。あぁ、それよりも月曜日のプレゼン、絶対に浅井くんに負けたくない! 浅井くん、余裕そうだからきっといいものを引っ提げてきているんだろうな)
 そんなことを思っていた矢先、彼に声を掛けられた。
「遠山、ちょっと話がしたいんだけど」
 店の外に連れ出され、梢は深々と頭を下げた。
「浅井くん、ありがとう。これで帰れる」
「ちょーっと待った! 話があるんだよ」
 怜人に引き止められ、梢は頷いた。
「うん、月曜のプレゼンのことだよね?」
「違うから」
 そして結婚しようと言われた梢だった。
「俺も抜けてくるからさ、詳しい話は別の店でしようか」
「わかった」
 怜人に言われた通り、梢はゆっくりと歩き始める。
(結婚とか言っておいて、きっと仕事の話よね)
 梢はそんなことを思っていた。

「やっと追いついたっ! 遠山は歩くのが早いな」
「あ、ごめん」
 息を切らす怜人に梢は頭を下げる。
「気にするなよ。こっちの店にしよう」
 落ち着いた雰囲気のバーに入り、梢は怜人と奥のテーブル席に座った。
「何にする?」
 怜人にメニューを見せられ、梢はスパークリングワインを頼んだ。
「さっき食事はできた?」
「少しは」
「俺は全然、食べられなくてさ」
 怜人はミックスナッツと乾きものの盛り合わせを頼んだ後に、シーフードピザにサラダと唐揚げを頼んでいる。
「お疲れ」
「お疲れ様」
 梢は笑いながら怜人とグラスを掲げる。
「食事も飲み物も全然、口にできないのにさぁ、男たちは五千円取られているんだよ」
「ご愁傷様。私は三千円」
「遠山、俺と給料変わらないよな?」
「そんなの知らないわよ。浅井くんがどれくらい貰っているかわからないもん」
「まぁ、そうか。そうだよな。で、さっきの話だけど」
 怜人が切り出し、梢は頷いた。
「結婚って何?」
 梢が尋ね、怜人は息を洩らす。
「実はさ、恋愛禁止令が無くなっただろ。あれのせいでまったく仕事ができない」
「仕事ができないって、どういうこと?」
「月曜のプレゼンも何も用意できていない状態。社内にいれば、ところ構わず好きだの付き合ってくれだのって呼び出される毎日だよ」
「仕事中にそれは辛いね。でも何も結婚じゃなくていいでしょ。誰かと付き合えば済むことじゃないの」
 梢の言葉に溜息をもらす怜人は、ウエイターを呼んでドリンクを頼む。さりげなく梢のおかわりも頼んでくれる。
「誰か適当に相手を選んでも別れたらまた同じことの繰り返しだろう。だったら、結婚してもいいと思える相手と契約結婚しようかと」
「それが私なの?」
「遠山が一番、利害一致しそうだから」
 梢は思わず唸った。
「社内婚なら遠山の出世に響くこともないし、互いに結婚休みとか祝い金を貰えるだろう。財布は別々でいいだろうし、家のこともお互いに別で構わないよ。仕事優先なのはお互い様だろうし」
「そっか。そう考えると、社内で結婚したほうが得よね。祝い金はそれぞれ十万ずつだったよね。まぁ、積み立てた分の一部だけど。それにお互いに休みを取れば、抜け駆けもされないもんね」
 梢がそう言い、怜人は笑っていた。
「抜け駆けって、俺はそんなつもりないけど」
「月曜のプレゼンも準備できていないって言いながら、二日で仕上げるんでしょ?」
「無理だな。今回は企画を出さないよ。遠山が結婚してくれるなら、仕事に専念できそう。今まで社内でこそっと相談していた件も、家でできるよな?」
「そうね。そこは便利よね。出世にも給料にも響かないし、ボーナス査定も下がらない。でも基本的に家で仕事の話はしたくないな」
「オッケー。じゃ、お互いの生活に必要なルールを決めようか」
「浅井くんって結婚願望があったんだね」
「遠山こそ、結婚願望があったんだな」
「結婚願望とはちょっと違う。三十になるからかな。親族がうるさいのよ。仕事もいいけど結婚も考えてって感じで」
「あぁ、女性は多いよな。俺はまだ何も言われないけど、仕事ができる環境に早く戻したい。で、遠山は他に希望ある?」
 梢はうーんっと唸った。
「家事は別々よね。掃除も分担、洗濯もそれぞれ。あとは仕事を優先させてほしいとか」
 食事をしながら二人はルールを決めた。
 ひとつめのルールはお互いに仕事が優先であること。
 ふたつめは自分のことは自分でする。料理も掃除も洗濯も自分のことは自分でやり、共有部分はお互いに分担。
 みっつめ、家に戻ったら仕事の話は極力しない。どうしてもというときはお互いの状況を見てから話す。
 よっつめは梢には必要のないルールだと思っていた。身体の関係を持つか持たないかはお互いの意思を尊重すると言ったが、怜人が梢に対してそういう対象ではないことくらいわかっている。
 いつつめのルールは月に一度は外食してデート。そこでルールの見直しを考えるというものだ。
「最初からルールばっかり作っても仕方ないよな。で、一緒に暮らす場所だけど、遠山は住みやすいところとかある?」
「んー、希望としては今の家よりも会社に近いところがいいな」
「今ってどこに住んでいるんだっけ?」
 梢が駅名を告げると、怜人が目を見開いて驚いているようだ。
「俺と同じ駅を使っていたんだ? 会わないよな」
「浅井くんは西口?」
「俺は東」
「じゃ、反対側ね」
 梢が笑い、怜人も笑っていた。
「ゴールデンウィークにお互いの両親に挨拶って形でいいかな?」
「わかったわ。連絡をしておく。会社内ではそれっぽい雰囲気が必要?」
「いや、いつも通りでいいよ。昼休憩が被るなら一緒に食事するくらいで」
 怜人がそう言い、梢は頷いた。

※この続きは製品版でお楽しみください。

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