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『過去に男性に言われて一番印象的だった言葉』深志美由紀

こんにちは、深志美由紀です。
さて今回は「言葉シリーズ」の最後、「男性に言われて一番印象的だった言葉」をテーマに考えてみたいと思います。

もう、この段階からネガティブなことしか考えられない自分が悲しい。
なんとか面白いネタに持って行こうとは思いますが、自信がありません。物凄く暗い話になったらごめんなさい。

いやいや。何かあるでしょう、こう、良い感じの印象的だった言葉が……(長考)…………。

ああ、また、ろくでもないことを思い出してしまいました。
本来の恋愛テーマからは全然ズレている……でももうこれ、他のことが思いつかないので書かせてください。
すみません。

男性に言われて一番印象的だった言葉。
あれは、二度目の夫となる男性と同棲を初めて半年ほど経ったときの事でしょうか。
当時、アダルトグッズショップの夜勤で働いていた彼から、仕事中であるはずの深夜3時頃に電話が掛かってきました。彼は何やら息を切らせており、そして切羽詰まった声で言うのです。

「美由紀ちゃん。ごめん。俺、逮捕されちゃうかもしれない……」

は……???

ちょっと待て、君は今、仕事をしているのではないのか?
一体何がどうなってそんなことに?

詳しく訊いてみると事情はこうでした。
どうやら、彼は、お店の商品であるアダルトビデオを何本か、持って帰ってきたり友達にあげたりしてしまっていたらしいのです。この点についてはまったく庇うことができません、立派な窃盗、横領です。
で、それを社員に疑われ、荷物を見せろと言われて突き飛ばして逃げてきたとか。

そうして通報された結果、何台ものパトカーに追われているというではありませんか。

「だ、大丈夫なの?とりあえず自首したほうがいいのでは……?」
「いや、俺、絶対家に帰るから。待っててくれ」

そんな、ハリウッド映画で死亡フラグ立てた人みたいなことを言われても。
逃げれば逃げるほど罪が重くなるのでは……と思いつつ、とりあえず電話を切りました。
まんじりともせず夜が明けましたが、あんのじょう、彼は帰ってきません。

そして朝の10時頃でしょうか。「お宅の同居人の男性が捕まりましたよ」と警察から電話が掛かってきたのでした。

まあここからは拘置所へ面会に行ったり弁護士を雇ってあげたり裁判を見守ったりという、普段であればできないような貴重な体験をいろいろとさせて貰ったので、それはそれでまたとない機会であった、と前向きにとらえている私ですが、ひとつだけ非常に困った出来事がありました。

彼の容疑の捜査に当たり、我が家を家宅捜索するということになったのです。

その部屋は私の名義で借りていたのですが、彼と住んでいたのは確かなので、それは仕方ありません。
拒否することもできぬので、おとなしく従ったわけですが、実は私は彼にも内緒の秘密のダンボールを押し入れに隠していたのです。その中身は、同人誌即売会用の荷物一式とBL同人誌の山、日活ロマンポルノのDVDなどなど……。
まさかそれらを持って出るわけにもいかず、私は捜索当日、警察の方と入れ替えに部屋を出ました。

その後、釈放された彼から聞いたところによると、そんな私の秘密のグッズは全て白日の下にさらされ、なにしろその中身たるやちょっとエッチな本や、同人誌販売用の金庫とお釣り銭(百円の50枚束)などという一見あやしげな品物でございますゆえ、「これもお前が店から盗んだんじゃないのか?」と問い質されたとか……。
「え、そ、それは知りません……多分彼女のものじゃないかと……」

は、はづかしい!!!!!!

掻かなくても良い恥を掻きました。あああああああああ。

というわけで、今まで男性に言われて一番印象的だった言葉は「俺、逮捕されちゃうかも」でした。

ああ、本当にろくでもない話ですみません。ちなみに元夫は罰金刑を受けました。別れた今はもう連絡を取っていませんが、まっとうに生きている事と思います。

深志美由紀(ミユキミユキ)
  
2010年10月、「花鳥籠」にて無双舎主催第一回団鬼六賞優秀作を受賞。
現在、官能小説を中心にティーンズラブ・恋愛小説など、新聞、雑誌、電子書籍他で執筆活動中。

作品紹介

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