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『男性に言われてドキッ!とした言葉』深志美由紀

今回のテーマは初回ということで乙女系らしく、「男性に言われてドキッとした言葉」(今更何を、と思われるかもしれませんが編集長提案です、悪しからず)。

「甘えた男とチョロイン事典」(夢中文庫/水口めいさん漫画・深志美由紀原作)などを読んで頂くと分かるのですが、生粋の浮気者なダメ男が好きな私。

彼らに言われてドキッとした言葉は多々あれど、それが本当だった試しがございません。
そもそも浮気男は女性をドキッとさせるのが上手いのです。だからこそ女にモテるわけですから!
それこそ、少女漫画やTL小説のようなドSヒーローのごときセリフを簡単に繰り出し、次の瞬間には覆す。彼らはそういう生き物なのです。
「一目見た時から忘れられない」「今までこんな気持ちになったことはないよ」「俺以外に抱かれないでくれ」「もう彼氏のところに帰したくないな」――これがフィクションであれば、彼らのトキメキを生むセリフは真実なのでしょう。しかし、残念ながらこれは現実。そして彼らはダメ男。
その場の気分と雰囲気で、女性が欲しがる言葉を咄嗟に口に出すことができるのが彼らの特技。
こんな耳触りの良い言葉をうのみにして「彼って私の事が好きなのね、モテそうだし、浮気者に見えるけど一途な人なんだわ」などと考えて、好きになってしまったら運の尽き。
彼らはあらゆる女に同じことを言っているのでございます。

ああ、本当に、ちょっと考えれば分かるだろ!
現実に、自分に一途で格好いいドSヒーローなんかいないんだよ!!
と、私も過去の私自身にツッコミを入れたい。でも信じてしまうんです、そのたびに。バカなんじゃなかろうか。いや間違いなくバカに違いありません。しかも何度も繰り返してるからね、こういうの……。

ちなみに私の中で最上に「ドキッとしたセリフに本気になってやらかした」体験は、2番目の夫となる男性と交際をし始めて2週間ほど経ったときの話です。

当時、私には夫がいましたが、いろいろと理由があってなかなか安定しない結婚生活を送っていました。そこで以前から友人だった売れないバンドマンである彼と一線を越えてしまい、交際を始めてしまったのです(本当にすみません)。
付き合い始めて2週間、3回目のデートの時に彼は言いました。

「もうこのまま帰したくない……」

はい。お約束ですね。今考えれば、彼がただ単にその場のノリで雰囲気に乗って発言しただけの言葉だということが私にも理解できます。
しかし、私は空気が読めず、冗談の通じないバカだった。

「それ本気?分かった、もうあたし帰らない!」

恐らく、彼は「え?」と思ったことでしょう。
「え、いいの?もっとよく考えた方が……」
「うん、もう決めたから。だって私の事、帰したくないんだよね?今そう言ったよね!?」
「え、あ、は、はい……」

というわけで、本当にその日以来帰らず駆け落ち同然で家を飛び出した私。きっと彼もさぞかし困ったことでしょうが、数日の間に自力でアパートを借りて新生活を始めた自分の極端な行動力はさすがだなとも思います。
しかしこれは本当に、あらゆる方向に迷惑千万でした。今ではその点は反省していますが、しなければ良かった、とは思ってはいません。恐らく、そうしていなければ今私が団鬼六賞に応募して作家になっていることはなかったからです。

まあそれもまた、調子のいい彼の浮気三昧な生活のせいなのですが、このお話はまたの機会に……。

ああ、全然「ドキッとした言葉」でも乙女系らしくもない話になってしまった、すみません。
皆さまも調子のいい「ドキッとするセリフ吐く男子」にはぜひ注意してください。

深志美由紀(ミユキミユキ)
  
2010年10月、「花鳥籠」にて無双舎主催第一回団鬼六賞優秀作を受賞。
現在、官能小説を中心にティーンズラブ・恋愛小説など、新聞、雑誌、電子書籍他で執筆活動中。

作品紹介

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