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【21話】失恋おやゆび姫は溺愛紳士に翻弄されてます

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「やだな、もう……」
 自傷的な言葉が漏れてしまう。
 本当に自分が嫌だ。こんな身体の自分も、子供みたいな態度をとることしかできない自分も。
 嫌なことを言われたからって逃げ出して、心配してくれた風見さんに失礼な態度取ってまた逃げて。
 これじゃ子供って言われても仕方ないじゃない。全然大人じゃない。見た目そのままだよ。
 せっかく止まったはずの涙が、またポロポロと溢れ出す。ブランコの手すりをギュッと握りしめてしまった。
 私が誰にも恋愛対象として見てもらえないのは、この身体のせいだけじゃないのかもしれない。内面もまだ子供のままだからじゃないのかな? だから誰にも好きになってもらえないのかも。
 マイナスなことばかり考えてしまうと、ますます涙は止まらなくなり慌てて手で拭った。
「だめだ、帰ろう」
 いつまでもここにひとりでいたら、永遠に泣き続けてしまいそうだ。
 最後にゴシゴシと涙を拭って立ち上がり、ゆっくりと公園の出口へと向かっていくと、こちらに駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
 ここは閑静な住宅街。住人の人かと思っていたんだけど……。
「……っやっと見つけた」
 私の前に息を切らして駆け寄ってきたのは、風見さんだった。
「どう……して風見さんがここに……?」
 足は止まり、驚きすぎて目の前で肩を大きく上下させる彼を凝視してしまう。すると風見さんは一度大きく深呼吸をして、真っ直ぐ私を見据えた。
「そんなのリスちゃんを追い掛けてきたに決まっているだろ? ……心配したよ、なかなか見つけることができなかったから。やっと会えてよかった」
「風見さん……」
 ふわりと笑う彼に視線が釘付けになってしまう。
 心配してくれて探してくれていたんだ。風見さん、呼吸が乱れているよね。
 駆け足で来てくれたと思うと嬉しくて、次第に顔が火照ってしまい、彼の顔が見られなくなっていき視線を下げてしまった。
「あのさ……誤解しないでほしい」
「え?」
 風見さんの伝えたいことが理解できなくて顔を上げると、彼はいつになく真剣な面持ちで私を見つめていた。
 視線がかち合っても彼は表情を変えることなく言葉を続けた。
「先輩たちのように思っている人ばかりじゃないから。……リスちゃんのこと、ちゃんと見てくれている人も沢山いるから」
「風見さん……聞いたんですか?」
 思わず聞いてしまった。
 風見さんは私と入れ違いに来たはず。だったら居酒屋での一幕は知らないはず。けれどさっきの物言い……明らかに事情を聞いたみたいだから。
 すると彼は少しだけ眉尻を下げ、困ったように目を細めた。
「ごめん、松本さんに聞いたんだ。……それでリスちゃんを追い掛けてきた」
「……そうだったんですか」
 じゃあ知られてしまったんだ。私が先輩たちになにを言われたのか、どうして私が泣いてしまったかも。
 知られてしまったと思うと風見さんの顔を直視できず、また視線を落としてしまった。
「すみませんでした、あんなこと言われ慣れているはずなのに、酔った先輩の話を真に受けちゃって逃げるように出てきちゃって。……せっかくの送別会だったのに」
 いつもより早口になってしまう。これでは動揺してしまっているのが、バレバレだ。
 けれど仕方ないじゃない。動揺するなって方が難しいよ。風見さんに知られてしまったのだから。
 遠くから聞こえる車のエンジン音が風に乗って聞こえてきたとき、風見さんはゆっくりと話し出した。
「俺の前で無理しないでよ」
「……え」
 思わず視線を上げると、風見さんは苦しそうに表情を歪めた。
「リスちゃんは可愛いよ、女の子の中で誰よりもずっと」
 力強い眼差しを向けられ、言葉を失ってしまう。風見さんの言葉が嬉しくて胸が痛い。例え私を元気づけようとしているだけだとしても、風見さんの言葉が嬉しくて仕方ないよ。
「ありがとうございます……っ」
 感極まり声が震えてしまう。すると風見さんはフッと笑った。
「言っておくけど、お世辞でリスちゃんを励まそうとして言っているわけじゃないから。……俺の本心だから」
「え……本心?」
 びっくりして聞き返してしまうと、彼は愛しそうに私を見つめたまま目を細めた。たったそれだけで驚くほど心臓は速く脈打ち始める。
 そんな私の事情を知る由もない風見さんは、さらに胸が苦しくなるようなことを言った。
「そうだよ、本心だよ。……それに俺はちゃんと知っているから。リスちゃんはいつも一生懸命に仕事に取り組んでいて、だからこそあの企画のアイディアを出せたって」
 優しい声色で紡がれる言葉が胸に響いて、じんわりと心が温かくなっていく。
 自惚れじゃないんだよね。お世辞で元気づけようとしてくれているわけでもないんだよね。……さっきの言葉は風見さんの本心なんだよね?

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