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【1話】失恋おやゆび姫は溺愛紳士に翻弄されてます

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こんな身体、大きらい
 
「悪い、お前のこと恋愛対象として見れない」
 好きな人に勇気をふり絞って告白するたびに言われてきた言葉。
 どうして私じゃダメなのかな? どうして好きな人に恋愛対象として見てもらえないのだろう。
 好きな人と両想いになりたい。彼氏がいる友達と同じように幸せになりたいだけなのに。
 告白して振られるたびに胸を痛ませ、そして臆病おくびょうになるばかりだった。
 この先もずっと、こんな身体の私では誰も好きになってくれないのかもしれないと――。
 
「リスちゃん、今日も元気に牛乳飲んでいて偉いね」
「早く身長伸びるといいな!」
 まるで成長期の子供を褒めるように笑って言いながら、頭を撫でていく先輩たちに、私はすっかり十八番おはことなってしまったセリフを言うのだった。
「子供扱いしないでください!」
 けれど、いつもどんなに厳しい口調で言っても、「わかっているって」なんて言いながら、適当にあしらわれてしまうんだ。
「もう、どうして社会人になってまで、忌々いまいましいあだ名で呼ばれないといけないのかな」
 騒がしい昼休みの社内食堂で200ミリの牛乳パックを片手に、去って行く先輩たちを一睨みしながら文句を言う私、星野ほしの有住ありす。身長百四十五センチ、童顔どうがんの幼児体型で今でもよく学生に間違えられるけれど、二十二歳の社会人一年目だ。
 大人になれば、友達のように成長期がやってきて私も身長がもっと伸びると信じていた。なのに一向に伸びることはなく、低いまま。
 そんな私は高校時代から名前の“有住”になぞられて、“リスちゃん”と呼ばれている。大学時代も、そして社会人になった今も。
「え~、私は“リスちゃん”なんて可愛いあだ名でいいと思うけど?」
 目の前の席でうどんをすすりながら羨ましそうに話すのは、同期入社の友達、横田よこた紗耶香さやか
「私なんていっつも“爆乳女”とか“牛子”とか、心ないあだ名ばかりだからね!?」
 はしを向けられ、強い口調で紗耶香に言われてしまうと、なにも言えなくなる。
 私は昔から背が低いことがコンプレックスだけれど、同じように紗耶香は胸が大きいことがコンプレックスだから。
 Fカップあると聞いたときは、思わずAから順にアルファベットを数えてしまったほど驚いた。
 うらやましい限りだけれど、仲良くなって話を聞いていくたびに、胸が大きいと大きいなりに、大変なこともあるのだと知った。
「でっ、でも紗耶香は恋愛対象に見られないなんてこと、一度もなかったでしょ?」
「ヤリたい女としか見られたことないけど?」
 するどい眼差しを向けられ、間髪入かんぱついれず言われると、いよいよなにも言えなくなる。
「もーふたりとも早く食べないと昼休み終わっちゃうよ?」
 そんな中、紗耶香の隣の席で私たちを静観せいかんしていたもうひとりの同期友達、坂上さかがみ未知みちは五人前の定食をもぐもぐと食べながら言ってきた。
「え、やだ! 未知ってば食べるの早すぎない!? あと少しで食べ終わっちゃうじゃない」
 思わず自分の定食の残量と、未知の残量を交互に見つめてしまう。
「ふたりが食べるの遅すぎなの。それに! 私から見たらふたりの方が羨ましいから。……私なんてこの食欲旺盛さを目の当たりにされると、みんなドン引きして去っていくんだからね?」
 恨みのこもった声で言う未知に、私と紗耶香は顔を見合わせ苦笑いしてしまった。
 未知はとにかく大食い。スレンダー美人で最初会ったときは、なんてきれいな子だろうかと見惚れてしまったほど。
 誰が見ても痩せている彼女だけれど、とにかく食べる。さっきの未知の話じゃないけれど、引いてしまうくらい食べる量が尋常じゃない。
 それが未知のコンプレックスだった。好きな人と両想いになれて付き合い始めても、未知の食欲にドン引きされ、みんな去っていくとか……。
 そんな私たちの出会いは、勤め先である大手食品メーカーの入社式の日だった。たまたま席が三人並んでいて、入社式前に話してみたら三人とも同じ本社勤務ということが発覚。そこから話が広がり次第に仲良くなっていったのだ。
 入社して約七ヵ月。少しずつ仕事にも慣れてきた。

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