【33話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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番外編『サプライズ? プロポーズ』

 それはある日突然はじまった。
「なぁ、菊。一番好きな花ってなに?」
「えー、なんだろ。チューリップかな。形が可愛くて好き」
 何気なしに好きな花を聞かれ、普通に答えた。
「菊、一番好きな食べ物は?」
「うーん……お寿司かな?」
「じゃあ、好きな色は?」
「……水色?」
 それからも度々虎から質問される日々。
「好きな音楽は? 好きな映画は? 漫画で一番好きなものあるか?」
 怒涛の質問攻撃に、疑問を抱きはじめた。いや、こうもあからさまに質問ばかりされていたら、誰だっておかしい、なにかあると気づくはず。
 そして最後に虎は、バレバレな行動に出た。
「菊……ちょっと手を握らせてくれ」
「いっ、いいけど……」
 いつもはなにも言わずに手を繋いだり、抱き着いてくるのに、わざわざ聞いてきた時点で怪しい。
 彼は手を握るというより、執拗に指を……特に左手薬指ばかり触ってきた。
 これはもしや、いよいよなのだろうか。
 虎と付き合いはじめてそろそろ一年。最近の彼の言動にドキドキし、期待は膨らむばかりだった。

「アハハッ! やだ櫻井ってば面白い。バレバレだって気づかないのかな」
 豪快にゲラゲラ笑う真理をジロリと睨んだ。
「もう、そんなに笑わないでよ。虎は虎なりに一生懸命やってくれているんだから」
 ある日の仕事帰り、真理と会社近くのイタリアンバルに来ていた。美味しいお酒と料理に舌鼓を打ちながら、お互いの近状を報告。
 そして最近の虎の様子を伝えると、彼女は笑い出したのだ。
「だってこれが笑わずにいられる? 聞いただけの私でさえわかったわよ。櫻井が菊にプロポーズしようとしているって」
 断言する真理に、声を潜め問う。
「やっぱりそう思う?」
 すると彼女は即答した。「もちろん」と。
「逆にそれだけの情報を聞き出しておいて、プロポーズじゃなかったら驚きだわ。でも櫻井ってば可愛いところがあるじゃない。いつもクールに仕事してかっこつけているくせに」
「まぁ……」
 私も真理と同じく、ちょっと抜けている残念なところがツボだったりする。カッコよくて仕事もデキるくせに、サプライズがボロボロだなんて可愛くない?
「もちろん知らなかったフリするんでしょ?」
「そりゃそうでしょ。だって私のために頑張ってくれているんでしょ? だったら知らないフリしてめいっぱい大喜びする」
 ワインを飲みながら話しつつ、恥ずかしくなる。だって真理、ニヤニヤしながら私を見てくるんだもの。
「いいなぁ、バレバレのサプライズプロポーズ!」
「バレバレは余計だけどね」
 でもどんな風にプロポーズしてくれるのか楽しみだな。
 期待に胸を膨らませていると、真理はしみじみ話し出した。
「あんたたちもとうとう結婚かぁ。……ねぇ、お互い子供を同級生になるように出産しない?」
「いいね、それ」
「でしょ?」
 つい三ヵ月前、真理は矢神くんと結婚した。もし本当に虎がプロポーズしてくれて結婚となれば、その先には出産が見えてくる。
 子供同士が同級生で仲良くなれたら……って想像するだけでわくわくする。その後も終始子供の話で盛り上がり、二十三時に解散。
 その際、真理は言った。「結婚の報告を聞けるの、楽しみに待っている」と。

 虎と付き合いはじめてから、年齢も年齢だし自然と結婚を意識するようになった。
 なにより結婚するなら虎以外の相手は考えられなかったから。
 ただ、想像しかできなかった。恋人関係になれたことさえ、ちょっぴりいまだに夢みたいだし。
 きっと虎は、付き合って一年の記念日にって考えているよね? それはあと一週間後。
 これだけ期待しておいて、プロポーズされなかったことを考えると怖くなるけど、嫌でも期待は高まるばかりだった。

 そして迎えた付き合って一年の記念日は平日で、お互い仕事。でも数日前、仕事終わりに会おうと誘われている。
 どこで会うかとか、今日が記念日だなって言われなかったけれど、敢えて言わなかったと結論づけてもいいですかね。
 チラッと後輩に指示を出している彼を盗み見る。仕事中の彼はやっぱりカッコよくて、トクンと胸が鳴ってしまう。
 付き合う前は同期でありライバルで、毎日言い争うほど憎き相手だったのに、どうして好きって自覚しちゃうと、虎がキラキラしていてカッコよく見えて仕方ないんだろう。
 虎はどんな顔で私にプロポーズしてくれるのかな。それが今夜かと思うと、なにがなんでも残業するわけにはいかない。
 仕事に全力で取りかかった。

「お待たせ、菊。悪いな、待たせて」
 定時と同時に仕事を終えた私とは違い、虎は一時間ほど残業となった。オフィスで待っているのも……と思い、会社近くのカフェで待っていた。
 虎は走ってきてくれたのか、呼吸が少し乱れていて額には汗が光っている。それだけでたまらなく嬉しい気持ちにさせられる。
「ううん、全然だよ。お疲れ様」
 労いの言葉を掛けると、虎は照れたのか「おう」なんて言いながらも、私の荷物と伝票を手に取った。
「行こう」
「あ、虎、支払いは私が……」
「いいから。待たせたお詫び」
 虎はスマートに支払いを済ませてくれた。
「ごめん、ありがとう」
「いや、こっちこそ待たせて本当に悪かった」

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