【28話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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 オフィスに戻るものの、そこに櫻井の姿はなかった。
「やっぱり帰っちゃった?」
 息も途切れ途切れに周囲を見回すものの、やはり見当たらない。
 すると残業していた後輩が私を見つけ、不思議そうに声を掛けてきた。
「あれー、片岡先輩どうしたんですか? もしかして忘れ物ですか?」
「あ、違うの。その……」
 なんて言えばいいかと悩んでいると、後輩はハッとし慌てて言ってきた。
「もしかして誰かに聞いて戻ってきたんですか!? びっくりですよねー、あの子、秘書課のマドンナって言われている子なんですけど、狙った獲物は逃さないって有名なんですよ。櫻井主任の片岡先輩への気持ちを疑うわけじゃないですけど、不安になっちゃいますよね」
「え、どういうこと?」
 聞き返すと彼女はキョトンとした。
「えって……櫻井主任が告白で呼び出されたのを聞いて、戻ってきたんじゃないですか?」
 嘘、また櫻井誰かに告白されているの? しかも秘書課のマドンナだなんて……。
 好きって自覚したからこそ不安になる。
 だって告白されてから、ずっと曖昧なままでいたんだもの。もういい加減、はっきりしない私に嫌気が差しているかもしれない。
 マドンナって言われているくらいの子だもの、綺麗な子なんだよね? そんな子に告白されたら、心は揺らいでもおかしくない。
「あの、片岡先輩?」
 だめだ、居ても立っても居られない。
 黙り込んだ私を心配する後輩に「ありがとう、お疲れ様!」と伝え、足早にオフィスを後にした。
 どこに行ったんだろう。でも告白するのに社外に出ることはないよね。きっとまだ社内のどこかにいるはず。
 ふたりの居場所もわからないまま、手あたり次第探していく。
 ずっと気持ちを伝えてくれた櫻井に、今度は私がたくさん好きって気持ちを伝えたい。
 息を切らしながら探すこと数十分。人気のない廊下でふたりの姿を見つけると、私は一目散に駆け寄った。
 足音に気づいた櫻井は私の姿を捕らえた瞬間、目を丸くさせた。
 けれど私は、彼と一緒にいる彼女が想像以上に綺麗な子で、焦りを覚える。
 もしかしてもう告白した後? 櫻井はどんな返事をしたの?
 気になりながらも彼の元へ向かうと、途端に気まずそうに目を逸らした櫻井に嫌な予感がはしる。
 もしかして櫻井……告白にオッケーしたの? だから気まずそうに目を逸らした?
 不安でいっぱいになり、たまらず私は彼の腕をギュッと掴み、大胆な行動に出た。
 呆然としている彼女を見つめ、櫻井を取られたくない一心で口を開いた。
「ごめんなさい、櫻井は私のものなの。……私も櫻井のことが大好きなの。だから取らないで」
「え……片岡?」
 突然の告白に彼は驚きの声を上げる。けれど私が気になるのは櫻井に告白した彼女の反応。
 ドキドキしながら彼女の反応を待つ。すると彼女はクスリと笑みを零した。
「なんだ、おふたりは相思相愛じゃないですか。だったら潔く身を引きます」
「えっ……?」
 後輩から押しが強い子だと聞いていたから、拍子抜けしてしまう。そんな私に彼女はにっこり笑った。
「私、人の幸せを壊してまで欲しいとは思いませんので。だから安心してください。櫻井さんのこと取ったりしませんから」
「あっ……えっと……」
 自分の言ったセリフを彼女に言われ、我に返る。
 私、いくら必死だったからとはいえ、かなり大胆なことを言ったよね?『私のもの』とか、『とらないで』とか。
 改めて思い返すと恥ずかしくて居たたまれなくなる。
 すると彼女は、いまだに状況が飲み込めていない櫻井を見つめた。
「櫻井さん、さっきの告白はなかったことにしてください」
 丁寧に一礼すると、彼女は踵を返し去っていく。
「あっ、ありがとう! 気持ちには応えることができないけど、嬉しかった」
 そんな彼女の背中に向かって、櫻井が叫ぶように言うと、彼女は一瞬立ち止まるものの、またすぐに歩を進めた。
 あの子も櫻井のことが、本気で好きなんだよね? だからさっきみたいなことを言ったんだよね?
 彼女の気持ちを考えると胸が痛む。
 でも例え誰かを傷つけたとしても、私も櫻井に対する気持ちを譲ることなんてできないから。
 彼女の姿が完全に見えなくなると、櫻井は痺れを切らし思いっきり私の両肩を掴んだ。
「なぁ、今のなに? 俺、片岡の告白を真に受けて、都合のいい方に考えてもいいのか?」
 焦った様子で私を見つめる彼の瞳は大きく揺れていて、不安な気持ちが伝わってくる。
 だからこそ私は安心させたい一心で、自ら彼の胸の中に飛び込んだ。
 途端に櫻井は身体を強張らせるものの、大きな手が背中に触れた。優しく包み込まれ、愛しい気持ちが溢れてくる。

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