【25話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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『ふたりの恋愛攻防戦の結末』

「おはよう片岡、今日も可愛いな」
「お前、無理しすぎ。もっと俺に頼れ」
「片岡……好きだよ、すっげぇ好き」
 告白されてからというものの、同僚の前でストレートに気持ちをぶつけてきたり、ところかまわず甘い言葉を囁いたりと、櫻井の態度は一変した。
 まるで別人のように接してくる彼に、私はずっと翻弄されていた。
 でも嫌に思っている自分はいなくて、甘やかされたり、〝好き〟って言われるたびにドキドキして、胸が苦しくなっていた。
 それに彼の気持ちを聞いてから、櫻井を見る目が百八十度変わった。
 これまでだって仕事面では尊敬してきた。でも彼の仕事に対する思いを聞いたからかな。ますます尊敬するばかり。
 さり気なく後輩をフォローしたり、士気が上がるよう声掛けしたり。一番付き合いが長いはずなのに、彼のいいところをずっと見落としていた。
 気づけばいつの間にか、あいつを目で追っている自分がいたんだ。
 恋愛とはしばらくご無沙汰だけど、好きって気持ちがどういうものなのかは知っている。
 だから非常に困っている。私の最近の櫻井に対する気持ちは、それに近いものがあるから。
 会社では、気づけば彼の姿を探していて、声を掛けられるたびにドキドキする。
 笑顔を向けられると胸をギュッと締めつけられて、「好き」って言われると息が詰まりそうになるほど苦しくなる。
「やっぱり私、櫻井に惹かれているのかな……」
 帰宅後、持ち帰った仕事をしながらふと彼のことが頭をよぎった。
 そして考えてしまう自分の気持ち。
 入社式で出会ってからずっと、同期の関係を続けてきた。親友のように言いたいことを言い合って、散々喧嘩もした。
 でも社会人になってから辛い時も楽しい時も、一番近くにいてくれたのは櫻井だった。
 困ったことがあったら、迷いなく櫻井に泣きつくほど私は彼を信頼している。
 あまりに彼との距離が近すぎて、気づけなかっただけなのかも。本当は私、もっと前から櫻井に惹かれていたのかもしれない。
 そこまで考えがいきつくと、途端に恥ずかしくなり首を横にブンブンと振る。
 なにを今さら恥ずかしくなっているの? もうすでにやることはやっちゃったじゃない。
 今度はあの日のことを思い出すと、また恥ずかしくなって撃沈。机に突っ伏した。
「あーもう……。恋愛ってこんなにドキドキするものだったっけ?」
 まるで初恋のような甘酸っぱい気持ちに襲われ、「わー!!」と叫びたい衝動に駆られる。
 櫻井は六年もの間、私のことを想ってくれていたんだよね? 彼の態度からは想像すらできなかったけど、ずっと想ってくれていたんだと思うと胸が熱くなる。
 あまりにストレートに攻めてくる彼の気持ちから、逃げ出したくなるけれど、そんなことはしたくない。
 ちゃんと向き合いたい。私は櫻井のことをどう思っているのか。……彼と同じ気持ちなのかを。
 けれどなぜか私に告白した後、櫻井は今まで以上にモテるようになった。
 なんでも私に対する想いが素敵! と憧れる女子が急増中だとか……。
「あ、片岡先輩聞きました? また櫻井主任、告白されたらしいですよ?」
 後輩と打ち合わせ中、休憩を挟むと思い出したように彼女は言った。
 こういう類のタレコミはこれが初めてではない。
「そっか、櫻井モテるね」
 笑顔で言うものの、心は大きく揺れていた。
 櫻井……また告白されたんだ。
 話を聞くたびに、不安に襲われていた。彼の気持ちを信じていないわけではないけれど、やっぱり櫻井はカッコいいし仕事もデキる。
 私より見合う相手はいくらでもいるはず。……自分に自信がないから、気持ちが変わって誰かと付き合うんじゃないかと心配になる。
 それと当時に、櫻井がモテはじめたことが面白くない。
 別に私は櫻井と付き合っているわけではないし、なにより彼に対する想いも不確かなものなのに、こんな感情を抱くなんて間違っていると思う。
 それでも告白されたと知るたびに、面白くないんだ。
 こんな感情を抱くのは、やっぱり私は櫻井のことが好きなのかな。だって好きじゃなかったら、醜い感情を抱くことはないはず。これまでだって何度も彼が告白されたことを知っている。実際に目の当たりにしたこともあるのに……。
 出そうで出ない問題に悩まされていると、後輩がアワアワしはじめた。
「す、すみません片岡先輩! 先輩の不安を煽るようなことを言ってしまって」
「え?」
 ハッと我に返ると、彼女は申し訳なさそうに唇を噛みしめた。
「でも不安になることないと思います! だって櫻井主任、片岡先輩にベタ惚れじゃないですか! それに私たち企画課の社員は、みんなおふたりを応援していますからね!!」
「あ、ありがとう……」
 後輩の熱い思いにたじろいでしまう。
「おふたりはまさにお似合いのカップルです!」
 そして力説する彼女に乾いた笑い声が漏れる。

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