【23話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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 らしくないことを言っているとわかっている。でももう、片岡に対する想いに嘘をつきたくないんだ。
 呆然としている同僚が見ている中、素直な想いを彼女に伝えた。
「昨日は一日会えなかったから、会えて嬉しいよ。身体は大丈夫か? ちゃんと寝たよな? 心なしか隈がある気がするんだけど」
 顔にうっすら見える隈を指で触れた瞬間、我に返った片岡は顔を真っ赤にさせた。
「ちょっと!?」
 すぐに振り払われた手。そして涙目になりながら俺を睨んできた。
「なにしてんのよ! みんなが見ている前で!」
 声を荒らげ、俺を指差す。なんだろう、そんな姿も愛しく思える俺は重症なのかもしれない。
「わかっているよ。でも俺、誰にも隠すつもりないから。……お前への気持ちは」
「な、に言って……っ!」
 茹でタコのように顔を真っ赤にさせる片岡に、どうしても口元が緩んでしまう。
「仕方ないだろ? お前が好きでたまらないんだから」
 堂々と気持ちを暴露すると、聞いていた同僚たちはワッと歓声を上げた。
 瞬く間に俺が片岡に告白したことは、本社中に知れ渡った。「ついに付き合いはじめたんだ」とか、「え、付き合っていたんじゃなかったの?」とか、「もう結婚するって聞いたんだけど」なんて、噂はまた勝手にひとり歩き。
 でもこれで堂々と他の男を片岡に近づかせないことができる。
 この日を境に俺は、全力で彼女に想いを伝えた。隙あれば「好きだ」と囁き、片岡が少しでも困っていたらすぐさま手を差し伸べた。
 これまで恥ずかしくてできなかった女の子扱いをし、とことん甘やかした。
 そのたびに片岡は戸惑いながらも、嫌がってはいなかった。あと少しで自分の想いは彼女に届くかもしれない。
 俺たちの関係は大きく変わるかも……そう思っていたんだけど……。

「櫻井さんのことが好きなんです!」
「片岡さんとはまだ付き合っていないって本当? だったら私と付き合って」
「セフレでもいいからお願い! それほど櫻井くんのことが好きなの」
 片岡に告白してからというものの、なぜか以前にも増して女性社員からモテるようになってしまった。
「ごめん、俺が好きなのは片岡だけだから」
 そのたびに丁寧に断るものの、告白は後を絶たない。今日も昼休みに入るとすぐに呼び出され、告白された。
 もちろん「片岡以外、好きになれないから」とハッキリ伝えたものの……。
「なぜだ? どうして急にこんなことになった?」
 騒がしい社内食堂に遅れて向かい、先に来ていた優と合流した後、食事をしながら思わず漏れた愚痴。
「それはもちろん、虎が一途に片岡を想う姿にみんな惹かれたんだろ。片岡みたいに虎に愛されたいらしいよ」
「なんだよ、それ」
 片岡が好きだと公言しているのに、告白してくるってことは、俺の気持ちが疑われているってことじゃないのか?
 そう思うと面白くなくて、ムスッとしながら味噌汁を啜った。
「案外さ、誰かの物ほど人間欲しくなるものだろ? それと同じ心理なんじゃないか?」
「悪いけど俺には理解できないね」
 告白してくる子の中には、「二番目でもいい」と言う子や、「セフレでもいい」と言う子までいる。
 俺もずいぶんと遠回りしたけど、決して片岡以外の子と付き合いたいとは思わなかった。気持ちがない付き合いをしたって、虚しくなるだけじゃないのか?
 ひとりひとり違う〝好き〟って感情に理解できずにいると、優が尋ねてきた。
「それで片岡とは、どうなった? 話してくれるようになったのか?」
「いや……相変わらず避けられている」
 思わずガックリ項垂れる。
 せっかく片岡といい雰囲気になってきたというのに、告白される回数が増えてからというもの、彼女の俺に対する態度はよそよそしくなり、ギクシャクしはじめた。
 そしてつい数日前、避けられるようになってしまった。
 告白されてもしっかり断っているし、彼女に対する気持ちは揺らいでいない。
 でも片岡にはそれが伝わっていない気がする。六年間もずっと素直になれずにいたんだ。急に好きだって言われても困るよな。
 そんな中、俺が告白されはじめ、ますます気持ちを疑われているんじゃないだろうか。
 もしかしたら自分を好きと言っておきながら、隠れて誰かと付き合っているのかもしれないと。
 いや、すべて俺の憶測でしかないし、片岡が今どんな気持ちでいるのかわからないけれど……。わからないからこそ、いろいろと考えてしまうんだ。彼女の気持ちを。

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