【22話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

作品詳細

『彼女と俺の関係は?』

「申し訳ありません!」
 オフィス中に響く彼女の声は震えていて、胸が痛んだ。それと同時に彼女の反応が嬉しくて、ついからかってばかりいた自分の言動に嫌気が差した。
 滅多にミスをしない片岡が、こんな大きなミスを犯したのは、全部俺のせいだ。
 片岡に辛そうな顔をさせたくないのに、俺はいったいなにをやっていたんだろう。
 あんな顔が見たくて、ずっと片想いしてきたわけじゃないのに。
 自分が情けなくて拳をギュッと握りしめる。
 でも一番辛いのは片岡だ。だったら俺にできることをするだけだ。
 すぐに部長にかけ合い、彼女が責任を感じない最良の策を提案する。
 代わりの物を手配するのは簡単だ。でもそれではずっと片岡は今回のミスを引きずるだろ? そんな思いをさせたくない。
 間に合うかわからないまま車を走らせていると、彼女の口から耳を疑う言葉が飛び出した。
「ありがとう」
「えっ……?」
 初めて掛けられた言葉に、驚きの声を上げてしまう。運転に集中しながらも、助手席に座る彼女をチラチラと何度も見るものの、瞼を閉じていて表情からは気持ちを汲み取ることができない。
 でも片岡は言ってくれたよな? 聞き間違いじゃないよな?
 『ありがとう』ってフレーズが、何度も頭の中でリピートされ、じわじわと実感していくと同時に、嬉しくて照れくさくて、いろいろな感情に襲われる。
 この気持ちをどうしても片岡に伝えたくて、大胆にも俺は恐る恐る彼女の頭を撫でた。
「同期なんだ。……普段からもっと頼っていいんだよ、バーカ」
 悪態をつきながらも、彼女が愛しくて頭を撫でる手は、自然と優しくなる。
 片岡になら、どんな迷惑をかけられたっていい。むしろ、嫌になるほど頼ってほしいと思っている。
 片岡が素直な想いを伝えてくれたんだ。なにがなんでも、絶対に間に合わせてみせる。
 こいつにこれ以上辛い想いをさせたくない。その一心で広島へ向かってトンボ帰りし、不眠不休で準備に明け暮れ、無事に予定通りオープンすることができた瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた。
 けれど達成感で満たされ帰りたくない俺は、催事スペースが見渡せる店内の通路ベンチに腰掛け、俺が考えたイベントを楽しむ子供たちを眺めていた。
 すると片岡がやって来た。
 もう二度と好きな子に悲しくて苦しい思いをさせたくない。そのためには逃げてばかりいた自分と決別しないとだよな。
 東京へ戻る車内でずっと考えていた。もういい加減、片岡に告白しようと。回りくどいことをせずに、ストレートに気持ちをぶつけようと。片岡が『ありがとう』と素直な気持ちを伝えてくれたように。
 でもいざ本人を前にすると、すぐにはたった二文字の〝好き〟が言えず、昔の話をしてしまった。
 しかしそのおかげで気持ちは固まり、彼女に自分の想いを打ち明けた。当然すぐには信じてもらえなかったし、きっと青天の霹靂だったと思う。
 俺はもう逃げない。絶対に振り向かせてみせる。
 それから二日間、俺と片岡は有休をもらい、お互い疲れをしっかりとって出勤すると、彼女は誰よりも先に来ていて、同僚ひとりひとりにお菓子片手に謝罪に回っていた。
 なぜだろうか、好きって気持ちを伝えられて、これからはもう回りくどいことをせずに、正攻法で攻めることができるからか、異様に片岡が可愛く見えて仕方ない。
 同僚と話している彼女の元へ真っ直ぐ向かい、声を掛けた。
「おはよう」
「あ、おはよ……う!?」
 声の主が俺だと気づくと、あからさまにギクリとなる身体。その反応が面白くて笑ってしまった。
「なんだよ、変な声を上げて」
「そ、それはあんたが急に声を掛けてきたからでしょ?」
 照れているのか、頬を膨らませてぶっきらぼうに言う姿が、たまらなく愛しい。
 いつもだったらここでもっとからかうところだけれど、もうそんなことはしない。
「それは悪かったな。……早くお前と話がしたかったんだよ」
「へっ……?」
 途端に目を見開き、驚き固まる片岡。

作品詳細

関連記事

  1. 【1話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

  2. 【5話】恋甘キッチン~溺愛社長の一途な独占欲~

  3. 【24話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

  4. 【5話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

  5. 【4話】堅物夫(仮)を恋に落とす方法

  6. 【2話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

  7. 【23話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

  8. 【23話】堅物夫(仮)を恋に落とす方法

  9. 【4話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

Bookstore

dブックロゴ

bookliveロゴ

PAGE TOP
テキストのコピーはできません。