【21話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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 いつもどうして櫻井は、あんな企画案が思いつくんだろうって嫉妬していた。
 でもそれは純粋に、櫻井自身が楽しめる企画案を考えていたからなんだ。
 嫉妬して負けたくないって必死になっていた自分が恥ずかしい。私はただ、櫻井に勝つことばかり考えていたのだから。
 今回だって櫻井の想いが詰まったイベント企画だったはず。それなのに私、あんなミスを犯して迷惑をかけてしまった。
 罪悪感で押し潰されそう。
「櫻井、ごめんね。私のせいで、迷惑をかけて」
 彼に深々と頭を下げた。
「櫻井の想いが詰まった催事を、台無しにするところだった。本当にごめんなさい」
「片岡……」
 何度謝っても足りない。私より多く運転してくれて、百貨店に着いてからも、指揮をとってくれた。
「ありがとう。オープンに間に合ったのは、全部櫻井のおかげだよ」
 また泣きそうになり慌てて顔を上げると、彼は急に私の頭をガシガシと撫でた。
「えっ、わっ!? ちょっと櫻井っ!?」
 思いっきり撫でられ髪はグチャグチャ。手で髪を整えていると、櫻井の優しい声色が降ってきた。
「気にすることない。誰だってミスはするだろ? 大事なのはミスした後、どうやって挽回するかだ。……今日のお前は、カッコよかったよ」
「櫻井……」
 珍しく私を褒める彼には慣れなくて、ドギマギする。
 整い終わった髪に無駄に触れてしまう。
「それに最近お前のミスが目立っていたのは、俺のせいだろ?」
「えっ?」
 申し訳なさそうに話す彼に、ドキッとした。やっぱり櫻井に気づかれていた? 私が彼を意識していたことに。
 不安になっていると、櫻井は私の様子を窺いながら言った。
「悪かったな、あの日の夜のことを、ないがしろにしていて。そのせいで仕事に支障をきたしていただろ?」
「それはっ……!」
 言葉に詰まる。彼が言っていることは事実だけれど、認めてしまったら意識していると言うようなもの。
 でもこれはもう、櫻井にバレているよね? グルグル考えていると、彼はクスリと笑みを零した。
「でも俺、お前には悪いけど嬉しいんだ」
「え?」
 嬉しいって、どういうこと?
 その真意が知りたくてジッと彼を見つめる。すると櫻井は照れくさそうに言った。
「仕事中なのに、片岡の頭の中は俺でいっぱいだったってことだろ? それ、すっげぇ嬉しい」
「……っ!」
 甘い瞳を向けて話す彼に、かぁっと身体中が熱くなり戸惑う。
 どういうつもりで櫻井は『嬉しい』だなんて言ったの? もしかしてまたからかわれているだけ?
 これまでの櫻井の言動から、安易に信じることができない。
 そんな私に櫻井は、想いをぶつけてきた。
「信じてもらえないかもしれないけど、さ……」
 歯切れ悪く前置きすると、彼はいつになく真剣な瞳を向ける。切れ長の瞳に吸い込まれそうになり、視線が逸らせない。
 トクン、トクンと胸の鼓動を鳴らせながら、彼の言葉を待つ。
 すると彼は真っ直ぐ私を見つめ、騒がしい音をかき消すように言った。
「俺、出会ってからずっと片岡のことが好きだった。……一目惚れだった」
「……う、そ」
 にわかには信じがたい話に漏れた声。すぐに櫻井は困ったように笑った。
「これまでの俺の言動を見ていたら、信じてもらえないかもしれないけど嘘じゃないから。自分でもガキだと思うけど、好きだから素直になれなくて、一々反応するお前が可愛くて、からかってばかりだった」
 彼の口から出たとは思えない甘いセリフに、目を白黒させてしまう。
「それに俺、他の男にお前を奪われないよう、裏でいろいろと手を回していたんだけど、気づかなかった? 彼氏ができないことに関して、なにも疑問に思わなかったのか?」
「え……だってそれは、私自身に問題があるとばかり……」
 まさか夢にも思わないじゃない? 私に彼氏ができないよう、櫻井が裏で糸を引いていたなんて。
「それぐらい片岡のことが好きなんだ。だから決して簡単な気持ちでお前を抱いたわけじゃないから。それだけはわかって」
 ふわりと笑う彼に、胸を締めつけられ、頷くだけで精いっぱいになる。
 思いもしなかった。櫻井が私を好きだなんて。……だから私を抱いたって本当なの?
 ドキドキさせながらチラッと見ると目が合う。すると彼は私に顔を近づけ、得意げな顔で言った。
「簡単に諦められる気持ちじゃないんだ。だから覚悟しておいて。絶対お前を振り向かせてみせるから」
「なっ……!」
 彼の強気な告白にびっくりして、思いっきりのけ反る。
 その瞬間、椅子から落ちそうになったところを伸びてきた彼の腕が、しっかりと私の身体を支えてくれた。
「あっぶな。気をつけろ。怪我でもしたらどうするんだ」
「け、怪我って……」
 それよりさっきの告白はなに? 今、私の背中に回っている腕は!?
 パニックになり口をパクパクさせてしまう。そんな私を見て、櫻井はニヤリと笑い、わざと私の耳元に顔を寄せ囁いた。
 「その顔、最高にそそるから、俺の前だけにしろよ」って。
 混乱していて恥ずかしくて、信じられなくて頭の中はグチャグチャ。いろいろな感情に支配されている。……けれどひとつだけたしかな想いがあった。
 それは告白されて〝嬉しい〟と感じた気持ち。

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