【2話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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「なに? そんなにイライラして。もしかして今日はアレの日なのか?」
「は、はぁ!?」
 デリカシーの欠片もない櫻井に足を止め、人差し指を立てて彼に詰め寄った。
「違うから! 私がこんなにイラついているのは、ぜーんぶあんたのせいだから!!」
 後退りしながら狼狽える彼に、日頃の鬱憤を晴らしていく。
「どうして櫻井はいつもいつも、私をイライラさせることばかり言ってくるの? 普通は同期としてもっと他に掛ける言葉があるんじゃないの?」
 そうだよ、少なくとも入社したての頃の櫻井は優しかった。
 仕事がうまくいかず、悩んでいたら声を掛けてくれて、励まし、冗談を言って笑わせてくれた。
 でもお互い任される仕事が増えてくると、仲良しこよしではいられなくなった。同期といえど、仕事となれば別、ライバルになるのだから。それでも仕事以外では優しかったのに。
 いつからか、仕事中だけではなく、顔を合わせれば言い合うようになり、私たちは犬猿同期の関係になっていった。
 昔のことを思い出していると、櫻井が反撃に出た。
「じゃあ同期として言ってやる」
「え。――きゃっ!?」
 一気に櫻井が私との距離を縮め、顔を近づけてきたものだから背中がのけ反る。そんな私を見て、彼は唇の端を吊り上げた。
「いいか? 今のお前じゃ、いつまでたっても俺の上にはいけないぞ。一生部下のままだ」
「……っ!」
 強気な態度で言われてもなにも言い返せない。だって櫻井の言う通りだから。今の私じゃこいつには勝てない。実力に差がありすぎる。
 悔しくて唇を噛みしめると、櫻井は勝ち誇った顔を見せた。
「せいぜい頑張ることだな。……いつか俺より出世することを夢見て」
 そう言うと櫻井は颯爽と去っていく。私は彼の大きな背中を見つめるだけしかできなかった。

「悔しい~! 今回も櫻井に負けたことが、本当に悔しい!!」
「ちょっと菊! 声が大きいから……!」
 次の日の昼休み。私は社内食堂で、同期の経理課に所属している井口いぐち真理まりに愚痴を零していた。
 真理とは入社式後の研修会で同じグループになり、話すうちに意気投合。よく休日も共に過ごすほど仲が良い。
 知的で美人な彼女を狙う男性社員も多いけれど、残念ながら真理には付き合って一年になる彼氏がいる。
 相手は私たちの同期で、櫻井と特に仲が良い営業部の矢神やがみゆう。優しくて頼りになる素敵な彼氏。
 真理もまた友達思いで、こうしていつも私の愚痴に付き合ってくれている。
 そんな彼女に周囲を気にして声を鎮めるよう、人差し指を立てて注意されるものの、怒りは一日たっても収まりそうにない。
「昔はもっと優しかったのに、出世したら急に生意気になっちゃってさぁ。しかもなに? 幼稚で憎たらしいくせにモテるって! あいつのせいで私、何度彼女に間違われて嫌な思いをしてきたか……!」
 怒りで箸を持つ手が震える。
 見た目がいい櫻井はとにかくモテる。若くして主任に出世してからは特に。みんな気づかないの? いくらカッコよくて仕事がデキるといっても、中身は小学生並みなのに……!
 ふるふると身体を小刻みに震わせる私を見て、真理はため息を漏らした。
「菊が櫻井をどう思おうが、誰が見たってあんたたちふたりは、ラブラブなケンカップルよ?」
「やめてよ、気持ち悪い……!」
 私と櫻井がラブラブなケンカップル? 冗談じゃない! 考えただけでゾッとする。
 それなのに真理は呆れ気味に言う。
「そんなこと言って。いっつも言い合いばかりしているけど、それはお互い気心が知れているからこそできるものでしょ? 私はあんたたちふたり、お似合いだと思うけどな」
「冗談でもやめて」
 さり気なく櫻井を勧めてくる彼女に、私は本気でNOサインを出した。
 悪いけど櫻井のことを、恋愛対象には見られない。同期として入社して、気心は知れている。だからこそ、そういう対象に見られないんだ。
 だって想像できる? 私と櫻井が手を繋いだりハグしたり。はたまたキスしたり、それ以上のことをしちゃうところを! ……だめだ、考えただけで寒気がする。
「でも櫻井のこと、本気で嫌いではないでしょ?」
「それはまぁ……。なんでも話せる相手ではあるし、同僚としては一応尊敬している」
 自分にはない才能を持っているとわかっている。
 だから同期で一緒に配属されて切磋琢磨してきたのに、どんどんあいつは先をいって私は置いていかれているんだ。

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