【18話】犬猿同期ふたりの恋愛攻防戦!?

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 シンと静まり返るオフィス内で声を震わせながら返事をすると、部長は表情を崩さず続ける。
「今すぐに発注書を確認してくれ。お前、納品日を間違えていないか?」
「そんなっ……!」
 慌ててパソコンの中にある発注書を確認する。
 そんなことあるわけない……はず。ううん、あってはならない。だって明日から催事がはじまる。その催事が盛り上がるかは、店内のディスプレイが大きな役割を担っている。
 その大切なディスプレイの入荷日を間違えたなんて……。
 震える手でクリックし、確認すると明日入荷と送ったはずなのに、日付が来週になっていた。
「嘘……どうして」
 そんなまさか。こんなミス、謝って済む問題じゃない。どうして私、こんなミスを?
 愕然となる私を見て悟ったのか、部長は深いため息を漏らした。
「その様子だと、どうやら入荷日を誤送信していたようだな」
 部長は頭を抱え込み、同僚たちからは戸惑いの声が聞こえてきた。
「申し訳ありません!」
 すぐに大きく頭を下げ謝罪するものの、謝ってもどうにもならない問題に、顔を上げることができなくなる。
 どうしよう、どうしたらいい? 発注先は広島の問屋だ。今から明日入荷で発注をかけても間に合うわけがない。
 どうしたらいいのかわからなくて、泣いている場合じゃないのに、不甲斐ない自分に涙が零れそうになる。
 騒然となるオフィス内。……そこで声を上げたのは彼だった。
「部長、たしか社用車でワンボックスカーありましたよね?」
 大きな声で部長に問う櫻井に、シンとなる。
「あ、あぁ、あるが……それがどうした?」
 部長が戸惑いながらも答えると、真っ直ぐ私の方へ向かってきた櫻井。彼を見ると、顔を綻ばせた。
「バカ、落ち込んでいる暇なんてないだろ? 急いで準備しろ。……広島まで取りに行くぞ」
「広島までって……嘘でしょ?」
 まさかの打開策に茫然となる。それは同僚も同じで、ざわざわしはじめた。
 今の時刻は十時。広島までは高速を使っても十時間以上はかかるはず。それなのに明日のオープンに間に合わせることなんてできるの?
 不安な思いは顔に出ていたようで、それを払拭させるように彼は言った。
「今から出て交代で運転して向かえば、間に合うはずだ」
 でも、もし間に合わなかったらどうするつもりなの? 明日の十時には百貨店はオープンするんだよ? やっぱり間に合うわけがないよ。
 部長をはじめ、みんなも同意見なようで、都内の問屋に同じようなものを取り扱っているところがないか、探そうと動き出した。それが最善策だと私も思う。
 すぐに私も電話を掛けようとしたけれど、彼に腕を掴まれ止められてしまった。
「離して櫻井。……櫻井の気持ちは嬉しいけど、やっぱり無理だよ。今から広島まで行って戻ってくるなんて。クオリティは落ちちゃうけど、他を探すのが無難でしょ?」
 彼は苦しげに表情を歪めた。
 それに今回の企画案は櫻井のものだ。それなのにこんなミスを犯してしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「ごめん櫻井。……あんたの企画なのに泥を塗るようなことしちゃって。もうこれ以上迷惑かけないようにする」
 腕を振り払い、すぐさま取りかかろうとしたものの、彼は放してくれない。
「櫻井?」
 名前を呼ぶと、彼は力強い声で言った。
「バカ、迷惑に思うわけないだろ? それに自分のミスは自分で挽回しろ。俺が助けてやるから」
「――え」
 そう言うと櫻井は掴んでいた私の腕を放し、部長の元へ向かった。
「部長、今から俺と片岡で広島まで行ってきます」
「いや、しかし……」
 戸惑う部長に櫻井は続けた。
「今回のイベントは、広島の問屋のものが必要不可欠なんです。それは部長もご存知ですよね?」
 彼に問われ部長は押し黙った。
「もちろん、間に合う保証はありません。ですが行かせて頂けませんか? 行かずに後悔するより、間に合わずに後悔した方がうんといい」
「櫻井……」
 彼の熱い想いに、胸が熱くなる。
「ワガママなお願いだと重々承知しております。間に合わなかった時に備えて、代わりの物をご用意いただく二度手間だということも。ですがどうか行かせて頂けませんか? お願いします」
 櫻井っ……!
 私が犯したミスなのに、どうしてあんたが頭を下げているのよ。頭を下げてお願いしなくちゃいけないのは、私なのに。
 私、なにやっているの? 櫻井のことを意識してミスを連発して、果てにみんなに迷惑をかけるようなことをしてしまった。悪いのは私なのにっ……!
 泣きそうになり唇をキュッと噛みしめこらえた。
 そして私も部長の元へ行き、大きく頭を下げた。
「部長、お願いします。櫻井主任と行かせてください。ミスを挽回させてください!」
「片岡……」
 そうだよ、自分が犯したミスは自分で挽回しないとだめじゃない。櫻井に頭を下げさせるとか、なにやっているのよ。
 再び「お願いします」と懇願する。すると部長は大きく息を吐いた。
「わかった、ふたりで行ってこい」
「部長っ……!」
 顔を上げると、部長はどこかに電話を掛けはじめた。

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