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【28話】デキる上司が狙うは恋愛戦力外のシンデレラ

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 愛梨の反応に対し、落ち込んだ様子の健太はがっかりするように首をかくっと傾けた。
「それは俺の渾身の愛情表現も、全然気づいてもらえてなかったってことだね?」
 ──渾身の愛情表現……?
 その言葉で一息に愛梨の頬に熱が集まった。
 これは夢なのか。ドッキリか。
 でも、健太から発せられる熱は現実だと伝えてくる。
 嬉しさのあまりに混乱して、つい先程まで感じていた恐怖など宇宙のかなたまで吹き飛んでしまっている。胸の鼓動は激しすぎて、よもや心臓が壊れてしまいそうで、愛梨は胸を押えた。
「いつどんなふうにアピッたのかは、悔しいから教えてあげない。知りたかったら、自分で考えてみて。俺とどんなふうに過ごしていたか」
 そう言って笑っているけれど、本音は拗ねているようで……健太は少し子供っぽいところもあるみたいだ。
 でもそんな部分さえも愛しいと感じてしまう。
「あ、案外イジワルなんですね。でも、あの、高倉さんのそんなとこも……好き、です」
 男女間での〝好き〟を言うのは初めてで、さらに頬がボンッと火が点いたように真っ赤になった。
 体中が熱くてドキドキしてどうしようもなくて、恥ずかしさのあまりに心中で叫び声をあげる。
 逃げ出したくなるけれど、それを察した健太の腕にすぐさま捕らえられては叶わない。
「ありがとう……愛梨、きみを愛してるよ」
 二度目の抱擁は少し緩め。名前を呼ばれた感慨にふけるのも束の間、健太の指先が顎にかかって上を向かされると、彼の瞳が間近に迫ってきていた。
 反射的に目を瞑ると迷うことなく合わせられた唇は柔らかで、肌にかかる彼の息さえも甘く感じる。
 唇を舌先でなぞられて、くすぐったさから僅かに開くと、舌がするりと侵入してきた。
「……ん」
 もっと大きく開けてと要求するように、柔らかくも硬い感触が何度も歯列をなぞる。
 そっと口を開けて彼を受け入れた刹那に、ぬるりと舌を絡め捕られた。サイドをなでるように動くそれがとても気持ちよくて、愛梨の腰をゾクゾクと震わせる。
 初めての感覚で驚いてしまった愛梨が微かに逃げると、それを追い求めるように舌が動いてくる。
 そんな彼が愛しくてたまらなくて、拙いながらも自分からも絡めるように応えると、掻き抱くように強く抱きしめられ、キスは次第に深く激しくなっていった。
 クチュ……クチュ……と、舌が絡み合うたび粘着質な音が大きく耳に響く。
 健太に与えられる刺激とふたりの息遣いが、愛梨の体の奥にくすぶる情熱を呼び起こしていく。
 体の芯が熱く疼いて、もっと彼に触れてほしくてたまらない。
 セクハラを受けてからは男性不信に陥って話すのも怖かったのに……こんなふうに思える日が来るなんて想像もしていなかった。
 愛梨も彼に触れたくてどうしようもなくて、背中に腕を回すと、するりと動いた彼の舌先が上顎をチロチロとくすぐった。
 今まで経験したことのない、その夢見るような心地よさに甘い声が鼻から漏れた。
「うふぅ……ん、ふっ」
 健太の背中側の服をぎゅっと掴んでとろけるような気持ちよさに堪えていると、舌先をちゅっと吸われて甘い痺れがうなじにも響いた。
「ぅんっ」
 思わず首をすくめると、彼の指がうなじの髪の生え際をなだめるようにするするとなでる。彼の指先から熱が出ているかのように、全身の肌がじんわりと熱くなっていく。
 舌がねっとりと絡められ、まもなく離れた健太の舌と愛梨のそれに繋がった糸が、ゆっくりと切れる。
 キスだけでこんなに感じてしまうなんて、愛梨は知らなかった。これまでセクハラキスはあっても、好きな人と交わすのはこれが初めてなのだから。
 キスの余韻に浸りながらぼんやり彼を見つめていると、健太が愛し気な表情で愛梨の耳に触れた。
 耳朶を指で挟まれて優しく揉むように擦られると、腰の辺りがぞくぞくしてくる。
 こんなふうに敏感に反応してしまう自分が恥ずかしい。元上司が言っていたように、愛梨はエロい体なのだろうか。
 こんな自分を健太はどう感じているのか。いやらしい子だと思われて、嫌われてしまったらどうしよう。
 そんな考えが頭をよぎったとき、健太がぼそりと呟いた。
「ヤバいな……」
「え?」
 不安になった愛梨の耳元に唇を寄せた健太は、耳朶をかぷっと甘噛みした。ついで耳輪を舌先でつーっと辿る。
「あ、んっ」
「ゴメン、愛梨の反応がかわいすぎて。俺、今夜は自分を止められないかもしれない」
 何度も耳朶を舐られながらも囁かれると、よもや全身の力が抜けてしまって、全面的に健太に体を委ねていた。
 ぽすんという音とともに背中に柔らかなクッションを感じ、愛梨はベッドに寝かされたことを知る。そしていつの間にやらスーツの上着が脱がされていた。
「今から愛梨を俺だけのものにするよ。それでまた俺の〝渾身の愛情表現〟をするから。今度はよく覚えておいて。体でも、心でも、いい?」
 実をいうと、愛梨は〝ハジメテ〟だ。
 出張前には予想もしていなかったことで、心も体も準備ができていない。
 今身につけている下着のことや、その他あれこれと考えてしまうけれど、それよりも彼に触れてほしい気持ちの方が強い。
 彼をもっと近くで感じたい。
 だから──。

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