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【28話】氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

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「もう少し君が慣れてきたら、教えてあげる。今日はもうおやすみ。疲れただろう」
 確かに、二度も絶頂を味わって、指先に力が入らない。瞬きすることすら億劫で、フィオーナは素直にまぶたを伏せた。
「おやすみ、僕の愛しいひと――」
 意識が完全に眠りに沈む前、優しい言葉とともに口づけられる。
 ふわふわしていた身体にも心にもぽっと温かな火がともって、フィオーナはすっかり満足して小さく微笑んだ。

 こなれないフィオーナに対し、ウォルトは時間をかけて快感を教えてくれた。
 日々のふれあいもどんどん濃厚になり、膣壁を擦り上げられて達することもすぐに覚えてしまう。
 そのうちウォルトも脱衣するようになり、フィオーナは生まれて初めて、成人した男性の身体を目の当たりにすることになった。
 服の上からは細身に見えたウォルトは意外としっかりとした身体つきをしていて、うっすらと割れた腹筋につくほど反り返った一物には、思わず及び腰になるほどだった。
 だがそれもウォルトの一部と思えば、過剰に怖がることもない。
 何度か目にするうち、ふれることもできるようになって、竿部を握って彼の絶頂を手伝うこともあった。
 膨らんだ先端から勢いよく飛び出した白濁にはびっくりしたが、荒く息をつき汗を滴らせるウォルトの姿はなんとも艶めかしく、ドキドキして目が離せなくなったほどだ。
 だがその猛々しい屹立を膣孔に挿入するのだと教えられたときは、大いに動揺した。ウォルトのそれは長大で、とても収めることなどできないと思えたから。
 狼狽えるフィオーナに対し、ウォルトはいつも通り鷹揚に微笑んで、「君が受け入れられると思ったときに言ってくれればいいから」と言った。彼に我慢させているようで申し訳ないと思ったが、ウォルトは今のままでも充分に満足らしい。
『君に一方的に恋い焦がれているだけだったこの十数年を思えば、毎日同じ寝台で休める今は贅沢すぎるくらいだよ』
 無理して言っているわけではなく、本当に心からそう思っているようだ。
 フィオーナはフィオーナで、夜ごとふれられて身も心も彼に染まっていくのがわかるが、いやだとはちっとも思わない。
 それどころか彼と肌を交わすたびに、『氷姫』とあだ名されるほど凍りついていた胸がほろほろと溶け落ち、温かく満たされるのを感じるのだ。
 それはウォルトを愛し始めている証拠でもあるのだが、長く愛情から遠ざかっていたフィオーナには、芽生え始めた気持ちがどういうものか、はっきりとわからない。
 ウォルトもまた、自分の情欲をぶつけるよりも、フィオーナの心が溶けることを望んでいたから、決して無理強いはしてこなかった。
 この日々がずっと続いていけば――そう願わずにはいられないほど、心穏やかな日々だった。

*      *

 そうして気づけば、結婚式を挙げてから二ヶ月という月日が流れていた。
 見頃を迎えたバラが王都中を埋め尽くして、どこもかしこも華やかな雰囲気に包まれている、社交期の盛りだ。
 連日のようにあちこちで舞踏会が開かれ、貴族たちが楽しむための観劇やオペラも盛況になってきている。
 爵位を継いだばかりで、本当なら顔を売るためにウォルトはあちこちの社交場に顔を出さねばならない立場だ。
 少し前にフィオーナがそのことについて尋ねたとき、彼はきっぱり言い切った。
「爵位を継いだことより、新婚であることのほうが重要だ。社交ももちろん大切だけど、愛する奥さんと二人きりで過ごすほうが、僕にとってはずっと大事だからね」
 堂々と言い切られて、フィオーナは嬉しいようなこそばゆいような、なんとも言えない面持ちになる。愛の言葉を伝えるときはちょっと恥ずかしそうにしている夫なのに、こういうことは涼しい顔できっぱり言い切るのだから不思議なものだ。
 とはいえ、社交期の初めに結婚したからには、その年は夫婦そろってあちこちに足を運び、男性側は嫁いできた花嫁を妻として紹介して回るのが慣例だ。
 ウォルトも、そろそろ人前に出て行ってもいい頃合いかと思ったのだろう。
 ある公爵家で開かれる舞踏会に顔を出してみよう、とフィオーナを誘ってきた。
「友人の家なんだけどね。招待状が届いていたから、そこに行こう」
「ご友人……?」
「アレンという名前でね。爵位を継ぐに当たって、彼にも彼のお父上にもたくさんお世話になったんだ。一番に君を紹介したい」
 そういう相手なら、確かに一番に顔を出すべきだろう。ただ国内でも格式ある公爵家ということで、かなり緊張してしまうが。
 これまで袖を通さずにいた夜会用のドレスがようやく日の目が見られる、ということで、メイドたちは張り切って支度を調えてくれた。当日は午前中のうちに入浴し、念入りに身支度を調え化粧をして、コルセットもきつめに締める。
 未婚の娘と違い、既婚者となれば肌の露出が多いドレスを着ることも許される。だがまだ新婚であること、フィオーナには扇情的なものより清楚なデザインが合うとのことで、あえて露出が少ない慎ましいドレスを選択した。
 ドレスの色は深い青色だ。ともすれば地味になりそうな色だが、幾重にも襞を寄せて膨らませたスカートや、胸元にあしらわれたレースが美しい一着である。身につける宝飾品をゴールドに統一すれば、一気に華やいだ雰囲気になった。
 腰まで流れる銀の髪はこてを使って緩く巻き、一部を結い上げて残りを自然に垂らした。髪飾りにはドレスと同じ生地を使ったコサージュをつける。
 肘まである手袋を身につけ、サファイアと金の鎖が連なるブレスレット、同じデザインのネックレスで手首と首もとを飾る。ようやく支度が調う頃には、もうお茶の時間を過ぎていた。
「少し派手ではないかしら……」
「とんでもない! 大変お似合いですわ、奥様。旦那様がご覧になったら、間違いなく惚れ直すはずです」
 胸を張って断言するメイドたちに背を押されて、フィオーナは馬車が待つ玄関ホールへ降りていった。
 夜会用の丈の長い上着を羽織り、帽子とステッキを手にしたウォルトはいつにもまして凜々しく素敵だ。
 思わず見惚れたフィオーナだが、それは相手も同じらしい。妻が階段を下りてくる気配を察した彼は、執事に向けていた顔をこちらに向けて、目を瞠って固まった。
「ど、どこかおかしいでしょうか……?」

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