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【24話】氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

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「ん……」
 不思議な感覚だった。柔らかくて、ふにっとして、温かくて……
 最初は本当に合わせるだけ……フィオーナが逃げないとわかると、上唇と下唇をついばむように唇で挟んできた。ふっくらした下唇に軽く歯を当てられると、身体の中心がむずむずと疼く感覚がして、フィオーナはぴくんと震えてしまう。
 恥ずかしさのあまり身を縮めていると、貝のように合わさった唇のあわいを舌先で軽くなぞられる。びっくりして唇を開くと、熱い舌がするりと口腔に入ってきた。
「ふっ……、んぅ……」
 まさか舌を挿れられるものとは思っていなくて、伏せていた目も開けてしまう。
 その瞬間、こちらをじっと見つめる夫の青い瞳が飛び込んできて、カッと顔中に熱が上った。
「あ……あふっ……」
 恥ずかしくてたまらないのに、目を逸らすことができない。熱い視線に絡め取られて、フィオーナもぼうっと相手を見つめ返した。
 そのあいだ、口腔内ではウォルトの舌がゆっくりとうごめいていた。ぬるつく舌に歯列の裏をたどられ、口蓋をくすぐられると、お腹の奥がぐずぐずと掻き回される感じがして落ち着かなくなる。
 縮こまっていた舌を突かれたため、おずおずと差し出すと、すぐに絡め取られた。重なった唇の隙間からぴちゃ……と濡れた音が響いて、なんだかくらくらしてきてしまう。
 口づけを深めながら、長い銀の髪を掻き上げられ、地肌をたどられる。もう一方の手で背のくぼみをなぞられたときは、ぞくぞくする疼きが這い上がって、足のあいだがカッと熱くなるのがはっきりわかった。
(どうして、こんなふうに熱くなるの……?)
 緊張のせいなのか、それとも……
「ふ……ンン……っ」
 身体の線をなぞられながら、口腔の深いところまで舌で探られ、頭の中に靄がかかってきた。体中がどこもかしこも敏感になって、二の腕を撫でられただけで妙な声が漏れそうになる。
 ようやく唇が離されたときには、フィオーナの瞳は今にもこぼれそうなほどトロンと潤んで、白皙の頬は鮮やかに紅潮していた。
「ウォルト……さま……」
「……怖くはない? 大丈夫?」
 ぼんやり呟くフィオーナの頬や額に口づけながら、ウォルトが少しかすれた声で尋ねてくる。
 色気を感じるその声に身体の芯がさらに疼くのを感じながら、フィオーナは頷いた。
 ウォルトは彼女の鼻先に口づけ、ゆっくり身体を倒してくる。体重をかけられるまま、フィオーナは寝台に仰向けにパタリと倒れた。
「んっ……」
 覆い被さってきたウォルトが、フィオーナの髪を梳きながら再び口づけてくる。おずおず唇を開くと、再び舌が挿入された。
「ん……、ぅん……」
 角度を変えて口づけられて、そのたびに頬の内側や舌の付け根を舐め取られて、次第に意識がふわふわしてくる。それなのに身体はどんどん熱くなって、気づけば腰が勝手に揺らいでいた。
 ウォルトもそれに気づいて、それとなく腰を押しつけてくる。熱いなにかが足の付け根あたりに押し当てられて、フィオーナは反射的にピクッと震えるが、嫌悪感は覚えなかった。
 むしろ少しずつ募っていった快感がより明確になって、熱いなにかに腰を押しつけてしまう。
「ふ、ぁ……、ンン……」
 体中が甘く痺れる感覚に、フィオーナはうっとりと目を伏せる。ぬるつく舌が与えてくる快感と、下肢に擦り付けられる硬いものの熱さに、全身がすっかり蕩ける思いだ。
(気持ちいい……)
 気づけばもっとして欲しいとばかりに、彼の分身に自身の秘所を擦り付け、湧き上がる緩やかな快感に陶酔していた。ウォルトも重ねた唇のあわいから熱い吐息を漏らしながら、フィオーナの身体の線をたどることに夢中になっている。
 そのうちウォルトの唇が離れ、今度は首筋やデコルテをたどり出すのを感じた。
「は、ぁ……、ンン……っ」
 熱い吐息が肌にかかるのに小さく震えながらも、フィオーナは気持ちよさのあまり、温かな湯につかっているような満ち足りた気分になる。
 蕩けるようなその心地に、フィオーナは安心して身を委ねた。

「……フィオーナ?」
 抱きしめていた細い身体から、くたりと力が抜け落ちるのを感じて、ウォルトは顔を上げる。
『氷姫』の異名のごとく、いつもは真っ白な愛妻の頬は、今はよく熟れた桃のように淡く染まって、驚くほどの色香を醸し出していた。緩く伏せられた長い睫毛も、羞恥のため浮かんだと思しき涙で光って、生来の美貌と相まってハッとするほどの美しさを見せている。
 だが長い口づけで赤く腫れた唇から漏れてくるのは、規則正しい寝息だ。すぅすぅと寝入っている妻を見ているうち、ウォルトは思わず笑ってしまった。
 だがその拍子に、押しつけていた自身の屹立が彼女の下肢に擦れて、少々つらい思いをする。
 正直、ここまで昂ぶった状態で止めるのは苦しい。だがフィオーナにとってはよかったかもしれない。
 ようやく心を開き始めてくれた段階なのに、男の欲望など見せつけられたら、きっとまた萎縮してしまうことだろう。
 彼女を起こさないよう、その上から慎重に退いて、隣に身を横たえる。
 フィオーナは安らかな顔で眠っていた。
 これまでは眠っているときでさえ眉間にわずかに皺を寄せ、どこか緊張した面持ちをしていたのだ。寝る姿勢も決まって横向きで、自分の身体を抱えるように丸まっていた。無意識のうちに防衛本能が働いていたせいだろう。
 仰向けですやすや眠る彼女からは、そういった危機感めいたものは感じられない。ウォルトにとってはそれがなにより嬉しかった。
 彼女を大金と引き換えに引き取った経緯も説明できて、結婚前からはびこっていた胸のつかえもようやく取れた。
 これで彼女が自分を愛してくれたなら、もう望むことはなにもない。
 身の裡を支配していた欲望も、彼女の穏やかな寝息を聞くにつれ徐々に収まっていった。
 代わりにしみじみとした幸福感が押し寄せる。こうして彼女と穏やかな時間を過ごしたいという願望は、意に沿わぬ侯爵家での生活を支えてくれる唯一のよりどころでもあった。
 それがこうして叶っただけでも、自分は果報者だ。
「おやすみ、フィオーナ。いい夢を……」
 妻の柔らかな唇にそっと口づけ、毛布を引き上げたウォルトも、やがて静かに眠りについた。

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