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2019
12.31

【15話】魔性の色男は鋼鉄処女を蕩かせる

毎日無料

作品詳細

「……っな!?」
 そんなとりとめないことをつらつらと考えていたわたしをクリューガー氏は先に部屋へ通すと、後ろから羽交い締めにした。いや、これは抱きしめられたのだろうか?
「ザシャ、……なんて罪作りな」
「??」
 わたしはわけがわからなくて混乱した。罪作りなのはクリューガー氏の方である。わたしのようなものまで虜にしてしまうその魅惑の唇……それを罪作りと言わずしてなにが罪か!? しかし咄嗟に言葉が出ないわたしを反転させて正面から目を合わせたクリューガー氏の瞳に言葉を失う。
 申し訳程度に備わった、わたしの女性としての本能が警鐘を鳴らす。この瞳は危険だ!
「ザシャ……さっきの続きをする? キスしたい?」
 否とは言わせない壮絶な色気がわたしの喉を詰まらせる。なんとか言葉を紡ぎたいのに、わたしの唇からはあ、とかう、とかとても意味をなすものとは思えない切れ端しか出てこない。それでも氏は容赦なくわたしを追い詰める。
「どんなキスがいい? この前ザシャは言ったな? どの程度か先に申告したいと……唇は舐めていいか? 舌は入れていいか? ……ねえ、ザシャ」
 矢継早にまくし立てるクリューガー氏の器用に動く形の良い唇に視線を奪われる。氏の唇がわたしの名前の形になるたびに心臓が軋むように痛む。
「言ってくれザシャ。どうして欲しいのか」
 クリューガー氏の指がわたしの唇をなぞる。少しかさついた男の指はつぷりと唇を割って口内にやすやすと侵入を果たす。驚いて口を開くと指を増やされた。長い指がばらばらに口内を蹂躙していく。
「う、……うあ、くりゅ、……あ、ふうぁ……」
 たっぷりと唾液を絡ませた指の腹で上顎を優しく擦られると背筋が震えた。とてもじゃないが自分の要求を口に出来るような状況ではない。クリューガー氏だってわかるだろうに、いったいどうしたというのだ。わたしはひどく混乱した。
「ザシャ。指を舐めて」
 しかしそんなわたしを置き去りに、クリューガー氏は差し入れた二本の指でわたしの舌を器用に挟むと関節を曲げてすりすりとこすりつけた。うぐ、……これは苦しい……! 飲みきれない唾液が口の端から顎を伝っていく。その気持ち悪い感触に身体を震わせるとそれに気付いたのかクリューガー氏がべろりと首から口元まで一気に舐め上げた。
「ザシャ、指を舐めて、吸って、さあ」
「あ、……ふ」
 どうしたのだ、何故クリューガー氏はこんなことを……。考えがまとまらないまま、必死に舌を動かして氏の指にしゃぶりついた。唇をすぼめ、飴でも舐めるようにすると口の中のクリューガー氏がピクリと反応した。爪の脇を丹念に舌先でなぞると眉間にしわが寄る。それは不愉快というよりもなにかに耐えるように……そう、たとえば過ぎた快感をやり過ごすように見えて思わず鼓動が跳ねた。
「は、……ふ、ふりゅーはーふんはん……」
 うっかり声をかけると氏ははっと目を見張り慌てて指を引き抜く。
「そんな目で見るな……ザシャ」
 え、どんな目だというのだ? 口にたまった唾液を嚥下するとクリューガー氏はわたしの唾液で濡れた指で形の良い自らの唇をなぞる。
「物欲しげにとろんとして……待っているのか、ここに、私の口付けを」
 ああ、そうだ、わたしはキスが欲しい。
 早く、貴方の唇でわたしを蕩けさせて。
「欲しいです……たくさんして……」
 次の瞬間、息も出来ないほど貪られた。虚勢も仕事もプライドも、なにもかもが融けて口から吸い出されていくようだった。そして後に残ったのは甘いキスを欲しがる、ただのザシャだった。
 そのうち腰が砕けて立っていられなくなると唇を重ねたまま抱き上げられ寝室まで移動した。スプリングの効いたベッドは二人分の身体を難なく受け止める。そこでもキスの雨は止まず、わたしは喘ぐようにして息をした。それが本当の喘ぎになる頃、唐突に今の状況が客観的に理解できた。
「ちょ、クリューガー文官! これはもしかしてキスだけじゃ済まないのでは?」
 上がる息をだましだまし発言するがクリューガー氏はどこ吹く風である。
「キスだ。ただザシャがどんなキスがいいか教えてくれないから……」
 氏はにこりと人好きのする笑みを浮かべてわたしの頬を撫でた。その手のひらが熱くて、この男はどこもかしこも熱いのだなと思う。
「……なので、いろんなところにいろんなキスをしてみようと思う」
「!?」
 言うなりクリューガー氏がわたしのさして高くもない鼻を摘まんだ。驚いてふが? と間抜けな息が漏れたがすぐに唇で塞がれる。
「どのキスがいいか、後で聞くからちゃんと答えるんだぞ?」
 思うさまわたしの口内を貪った後、先ほど摘まんだ鼻先や頬、おでこにキスを落とすとクリューガー氏は随分と楽しそうだ。わたしは展開について行けず高鳴る鼓動をもてあましていた。
 
 クリューガー氏は女性の衣服の作りを熟知しているのか、ただ単にとても器用なのかそれとも慣れているのか……あっという間に私の上半身を裸に剥いた。まるでタマネギにでもなった気分だった。自慢できるほど豊満ではない胸がふるりと揺れてクリューガー氏の前にさらされた。

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