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【9話】一途な次期公爵様は身ごもり令嬢を逃がさない

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「声をかけなきゃ食事も忘れて編み物に没頭するし、気づけば一日で三十本近いレースリボンを編み出すのは、仕事のしすぎよ!」
 そんなビーさんの叫びを聞いて、ベランナはさもありなんって顔をして頷くと、今までの私のことも話し出す。
「王宮でも、サリーはよく気がつくから自分の範囲を終わらせると、別のところもサクサクと片付けてしまうのよ」
 ベランナの言葉に、ビーさんたちは頷き合うと私に向かって言う。
「サリー、ここではお昼休憩と、おやつ休憩はしっかりとらなきゃダメですからね!」
 雇用主であり、姉のようなビーさんにガッツリと宣言されてしまい、この日から私は午前のおやつ休憩、お昼休憩、午後のおやつ休憩ときっちり三回休憩させられることになった。
 でも、ここの皆さんが私同様けっこうな仕事人間なので私に合わせて休憩を取るようになると、それが良い効果を発揮し仕事効率が上がったらしい。
「休憩は、人間には必要だったのね。サリーのおかげで私たちも改善されて良かったわ」
 などと言うくらいにはビーさんたちも仕事に集中すると、休むこともなくなるレベルだったらしい。
「いや、サリーちゃんが来てくれて良かったよ。リーシャもビーもなかなか休まないから、大変だったのよ」
 とは、今まで二人を休ませることに頭を悩ませていたシシリーさん談。

 穏やかに、ドレス作りを行いながら過ごしていくと季節は夏の半ばに差し掛かっていた。
 それまでも、二週に一回診察を受けに診療所には顔を出している。
 今日はその診察日、このあたりの道にも慣れて一人で来た私にメイばあさんが言った。
「だいぶ、お腹が出てきただろう? でも、これからまだまだ大きくなるから。ビーに言って余り布ででも、ゆったりとした形のワンピースを作っておきなさい。もう、今の服はきついだろう?」
 お腹周りが少し目立ってきた私は、確かに今までの服はきつくなってきた。
 お腹の子が元気に育っている証拠だが、このままでは手持ちの服で着られる物がなくなってしまう。
 なるほど、お腹周りのゆったりしたワンピースなら作りも簡単だし、すぐに用意できそうだ。
「帰ったら、ビーさんたちに相談してみますね」
 ニコッと笑顔で言うと、メイばあさんもニコニコと言った。
「服がきつくなってきた、どうしよう? ってあんたが言えば、ビーは夜までの間にワンピースくらい仕上げてくれるだろうさ」
 診察を終えて、ゆっくりと歩いてお店に戻る。
 城下の街並みにもずいぶん慣れたものだ。
 少し休憩をしようと木陰に入って一休みすれば、お腹の中からポコンと衝撃が来る。
 まだささやかな強さだけれど、お腹の子が元気な証拠であるこの衝撃が、最近楽しみになっている。
「あらあら、あなたは元気ねぇ。ママは暑くて少し疲れてしまったわ」
 動いたらお腹を撫でながら話しかけるのが癖になりつつある。
 そうすると、お腹の中からお返事のようにポコポコと反応があるのだ。
 たぶん、なんとなく聞こえているんじゃないかなと思っている。
 再び歩き出し、裏口からお店に戻れば工房で型紙を引いていたリーシャさんが私に気づいて手を止めた。
「おかえり、サリー。お腹の子は順調だった?」
 診察の後に一番に顔を合わせることの多いリーシャさんは、いつもこの質問をしてくれる。
 私とお腹の子を心配してくれているのがわかる。
「今日も順調だって。行きも帰りも、ずっと元気に中で動いていたわ」
 私の返事に、リーシャさんは私の少し膨らんだお腹の前に来て声をかけてくれる。
「あらあら、君は今日も元気なのね」
 そんなリーシャさんの声にも、中からポコンと反応が来る。
「お返事してるわ」
「まぁ、私の声にも返事してくれるなんて。お腹の中から優秀ね」
 二人で笑っていると、私の戻りに気づいてシシリーさんがお茶を持ってきてくれた。
「ほら、帰ってきたばっかりでしょう? 外は暑いんだから、しっかり水分補給しないと」
 そんな声掛けに、ビーさんも反応してしばし四人でお茶休憩となった。
 現在は、午後三時過ぎ。少しのお茶菓子を楽しみながらビーさんが聞いてくる。
「ねぇ、サリー。お腹の子が順調なのはいいことよね。でも、あなた。そろそろ手持ちの服のお腹周りがきついんじゃない?」
 さすがは服屋のオーナーである。
 服がきつくなってきていることに気づいていたらしい。
 それは、人を見ただけで大体のサイズがわかってしまうリーシャさんもだったようで、なんとリーシャさんは既に大きめの簡単なワンピースを縫い上げてくれていた。

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