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【最終話】一途な次期公爵様は身ごもり令嬢を逃がさない

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 用意されていたペンを持ち、私は結婚許可証にサリー・ミラーティアと署名した。
「ローウェン様、至らぬところが多いと思いますが、よろしくお願いいたします」
 ここまで囲い込まれて逃げられるとも思えない。
 私はローウェン様にとうとう捕まったのだった。
「サリー。ありがとう。君も娘も幸せにする。愛しているよ」
 私をその腕に抱きよせて、そっとこめかみに口づけを落としたローウェン様に、夫妻も満足そうにして、私たち二人を見つめてくれていた。
「さぁ、この書状を早く教会へと届けてくれ」
 レオナルド様の言葉に、控えていたらしい執事さんが動き、書状を持って部屋を出ていった。
 たぶん数十分後には教会に届が出されて、受理されることだろう。
「さぁ、これで我が家に嫁と孫ができたわけだ。めでたいがお祝いは君たちが落ち着いてから行おう。今日は、このあとは二人で名前をじっくり考えると良い。届は明日中に出せば問題ないからな。では、サリー。ゆっくり休んでくれ」
 公爵夫妻との挨拶を終えて、部屋は再びローウェン様と私たちだけになる。
「この子の名前、サリーはなにか考えていたかい?」
 そう聞かれて、私は首を横に振る。
「女の子か男の子かもわからないので、産まれたら考えようと思っていました」
 私の返事にローウェン様は頷き、こう聞いてきた。
「その、この子の目を見た時に名前が浮かんだのだけれど」
 遠慮がちに話し始めたローウェン様に、私は続きを促すことにした。
「どんな名前ですか?」
 私の問いに、ローウェン様は少し恥ずかし気に答えた。
「エスメラルダはどうだろうか? 君の瞳に似た綺麗なグリーンだから」
「エスメラルダ。良い名前ですね、愛称はエメかしら?」
 娘を見つつもローウェン様に聞けば、少し驚きながらも問われる。
「いいのか? 俺の名付けで」
 私は頷いて、娘の頬を撫でつつ返した。
「えぇ。だってこの子は間違いなくローウェン様の子です。父親に名前を考えてもらった、その由来も聞けば納得ですもの」
 私の返事にローウェン様は私の手を取り、そしてもう片方で一緒にエスメラルダを撫でて言った。
「ありがとう、サリー。これから、エメと三人で幸せになろう」

 結婚を考えていなかった私に、出会いと、そこからさらに奇跡のような形で子どもを授かり。
 ここに至るまで、いろいろあった。
 身分の違いから無理だと諦めて逃げ出したはずなのに、気づけば憧れの人に捕まっていた。
 きっとここからは、頑張ることも多いはず。
 それでも、こう言ってくれるローウェン様とエメがいれば大丈夫だろうと思えたのだった。

 その後、無事に結婚許可証は受理されて私はサリー・マクレガーとなった。
 翌日には出生届を出して、産まれた娘もエスメラルダ・マクレガーと名付け、ローウェン様の長女として届けられた。
 美貌の宰相補佐官が結婚し、さらには子どももできたことは王宮や社交界ではかなりの話題になったそうだ。
 そして同時に、花や服やおもちゃを買い占めては屋敷に帰るローウェン様の姿が多数の文官や騎士に目撃され、子煩悩で奥様を大切にしているという話も駆け巡ったのだという。
 しばらくの間、この話が社交界では一番の話題だったと、王都へ社交に訪れたベランナが遊びに来てくれた時にも話してくれた。
 ベランナとその旦那さんは、産まれたエメにたくさんの服や帽子を持ってきてくれた。
 その時聞くと、ベランナも半年後にはお母さんになるらしい。
 子育て仲間が増えるようで、嬉しいと感じた。
 ローウェン様の変わりぶりが世間に出る頃には、私は毎回「買いすぎです!!」とお屋敷で叫ぶ羽目になっていたし、その様子は公爵夫妻や使用人たちに微笑ましく見守られていた。

 かくして、エメが一歳の誕生日を迎える頃、私たちは身内だけで結婚式を挙げた。
 私とお揃いのドレスを着たエメを抱えながら、死が二人を分かつまで支え合うことを司祭様の前で三人で誓った。
 子どもと三人で祭壇前に並んで誓うことを許されたのは、家族と本当に近い友人のみのお式だったから。
 でも、どこまでも温かで大切な思い出になる式となった。
 私とエメに甘いローウェン様にとことん愛される日々は、この先も続きそうです。

Fin

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