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【17話】一途な次期公爵様は身ごもり令嬢を逃がさない

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「あの、マクレガー公爵ご夫妻にご挨拶しておりませんが……」
 産後というのもあるけれど、お世話になるのに挨拶もしていない現状にとても不安になってしまう。
「あぁ、それは君が起きて落ち着くまで待ってもらっているよ。父も母も俺に怒りを向けてきても、君には俺が申し訳ないことをしたと言っている。それで、君さえよければ、初めての孫を見せてもらえないかとも言っている」
 なんとも、私にはかなりの配慮を頂いているようで、逆に恐縮してしまう。
「私は大丈夫です。ただ、身なりが整えられなくて申し訳ないですが」
 私の返事にローウェン様はむしろこっちが申し訳ないと言って、扉に向かって声をかけた。
「サリーが大丈夫だと言うので、父と母をこちらに」
 そんなローウェン様の声に、ドアの前にいたらしい執事服の男性が頭を下げて答えた。
「かしこまりました。旦那様と奥様を呼んでまいります」
 執事さんが部屋から出て、十分ほどで再び部屋にノックの音が響くと、それにローウェン様が答えて部屋にはローウェン様を渋くした男性と、ローウェン様と同じ黒髪に紺の瞳の女性が入ってきた。
「初めまして、ミラーティア嬢。私がマクレガー公爵、レオナルド。ローウェンの父親だ」
 男性が優しそうに笑顔を浮かべて名乗ってくれた。
 女性もその隣に並び、笑顔で告げる。
「マクレガー公爵夫人、ロザンナよ。あぁ、無理に起きなくていいわ。今日出産したばかりでしょう? ゆっくり体を休めていて?」
 起き上がって挨拶しようとした私を、慌てて止めるほどに優しい夫人。
 いきなり現れた私に優しい言葉をかけてくれる夫妻に、やはり起きて挨拶しなければと身を起こして話すことにした。
「このような形でのご挨拶で申し訳ありません。ミラーティア子爵家長女のサリーと申します。この子はまだ産まれたばかりで、名前はこれから考えるところなのですが。ローウェン様と私の娘になります」
 ご両親が来る前に眠ってしまった娘を見つつ話すと、ロザンナ様が娘を見て懐かしそうな表情を浮かべた。
「この髪の感じ、産まれた時のローウェンそっくりよ。間違いなく息子の子でしょう。産まれるまでお嫁さんを放置するような、どうしようもない子ですが、どうかこの子と一緒になってやってくれないかしら?」
 私はてっきりこの結婚は反対されるものだと思っていたのだけれど、産む前にチラッと話してくれていたローウェン様の言葉に嘘はなかったようで、公爵夫妻はこの結婚に反対ではない様子。
「あの、私は子爵家の娘です。子どもは産みましたが、結婚は反対されるのではと思っていたのです」
 そんな私の言葉に、ロザンナ様はレオナルド様と顔を見合わせると微笑んで言った。
「私も伯爵家の出なのだけれど、この家の男たちはこの人って見染めたら譲らないのよ。結婚したいと思った相手を見つけたら、身分なんて関係なくその人との結婚を認めるのがこの家のしきたりみたいなものなの。だから、ローウェンが見つけたあなたに私たちは反対しないし、迎え入れる準備をしていたのよ」
 そこまでをにこやかに話したロザンナ様は、その後ため息をついてローウェン様をジトッと見つめて言った。
「まさか、相手に逃げられてこんな形で迎えるなんて……。ほんとうに情けない。こんな息子だけど、よかったら見捨てず、可愛い孫ちゃんと我が家に嫁いできてくれると嬉しいわ」
 一気にロザンナ様が話すと、その続きをレオナルド様が話し出した。
「まだまだ休みたいだろうし、考えたいだろうが。実は今が一気に手続きするチャンスでね。君とローウェンの結婚許可証と孫娘の出生届を順番に出せば、結婚後の子どもとして認められるんだ。先に出生届を出すと、その後子どもの手続きが難しくなる」
 そういった手続きについて私は知識がないのでわからないことも多いが、確かにここでしっかり手続きを済ませておいた方がいいことはわかる。
「君の家のご両親には結婚したいのでお許しいただけないかと、すでに訪問して許可をいただいている。あとはこれに君に名前を書いてもらうだけなんだ」
 用意の周到さに驚くものの、反対がないのであれば私もこの結婚に足踏みする必要もない。
 だってずっと憧れていた人と、その人との間にできた子と家族として暮らしていけるのだから。
 子どもができたとわかった日、少しだけ夢見て諦めていたことが叶うのだ。

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