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【16話】一途な次期公爵様は身ごもり令嬢を逃がさない

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7.家族になりませんか?

 隣に寝かされていたであろう、産まれたばかりの娘の泣き声に私は目を覚まし、その姿を探すと見知らぬメイド服の女性がいた。
 彼女の腕には娘が見えて、どうやら抱っこしてあやしているらしい姿が目に入った。
「すみません、あの……」
 寝ていたベッドから身を起こし声を上げると、女性は私に微笑みを浮かべて娘を抱かせてくれた。
「お疲れ様でございました。お嬢様のおしめは既に交換してありますので、お乳を与えてあげてくださいませ。若旦那様を呼んでまいります」
 丁寧に話し、そして離れていった女性に、私はこの場所がなんとなく理解できてしまった。
 出産で疲れて眠ってしまった間に、私と娘は診療所からローウェン様のお屋敷であるマクレガー家へと移動してしまったのではないかということ。
 結婚を申し込まれていたが、私はまだ承諾の返事はしていない。
 終わるのはいつだという痛みを耐え抜き、無事に娘を産めたことに安堵した矢先の話だったので、返事もままならなかった。
 確か、出産が終わった時には薄暗かったと思う。
 今は日差しが眩しいくらいなので、だいぶ寝かせてもらったのだろう。
 抱っこした娘は口をムグムグと動かし、また泣きそうな顔をしているので、私は寝る前にあげていたことを思い出しつつ、二度目の授乳を試みる。
「待たせてごめんね。さぁ、ご飯ですよ」
 声をかけて、娘に乳を与える。
 やはりお腹が空いていたのだろう。泣き声でじんわりとにじんでいたお乳を口の前に出すと、グッとくわえて吸い付いてきた。
 その必死な姿はまだ慣れないながらに見ていて可愛いと思える。
 両方のお乳を交互に吸ったら満足したのか、表情が緩んだのがわかる。
「お腹いっぱいになったのね。さぁ、げっぷしましょうか」
 お顔を肩口に乗せてお尻を支えつつ、背中を撫で上げると可愛らしい「けふぅぅ」というげっぷの音がして、私は娘を再びベッドへと寝かせる。
 そんな授乳の一連が終わると、部屋にノックの音が響いた。
「サリー。俺だが、入っても大丈夫だろうか?」
 その声は間違いなくローウェン様で、私は返事をする。
「はい。どうぞ」
 私の返事の後にローウェン様は部屋に入り、私と娘が寝ているベッドのそばに来て椅子に腰かけた。
 お乳を飲んだばかりの娘は、少しご機嫌に寝転んでいる。
「あぁ、起きてたんだな。瞳はサリーに似て綺麗なグリーンだ」
 娘を見て、ニコニコと嬉しそうなローウェン様に私は問いかけた。
「私と娘が寝ているうちに移動しましたね? 私はまだ、ローウェン様にお返事していないと思うのですが……」
 私の言葉に気まずげにしながらも、ローウェン様が話してくれた。
「あの後、君が寝てからビーさんたちと話したんだ。このまま家に帰ると子どもの世話をしながら、自分たちの仕事の様子を見て早くから仕事に戻りかねないと言っていて。それなら、俺の家なら人手はあるし、ゆっくり休みながら子育てに専念できるのではとなって、家に連れ帰ることにしたんだ」
 そこは確かに否定できない部分だし、事実出産直前まで仕事をしていた。
 たぶんあの家に戻れば自然と、早いうちから仕事復帰していただろう。
「その話を聞いていた医師や産婆さんが、最低でもひと月はしっかり休ませてやらなきゃだめだし、身体が戻るまでには半年以上かかるものだと言っていた」
 さすがに、産後の身体の戻りまでは私も初めてのことで知らなかった。
 そんなに回復に時間がかかるなら、ビーさんたちのところに戻るよりはローウェン様のお屋敷でお世話になるほうが回復も早いかもしれない。
 しかし、そうはいってもいきなり生まれたての赤ちゃんと一緒に女性がお屋敷に来たら騒然としておかしくないのでは? と今更ながらにローウェン様のご両親である公爵夫妻がこの現状をどう考えているのか不安になる。

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