【28話】堕ちて幸せ!?~復讐に燃える完璧令嬢は魔王の花嫁になりました~

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『そういえば……悲劇のアシュバートン侯爵令嬢。彼女は……正直ナシだったな』
『彼女、美人でしたよねぇ。俺、踏まれて罵られたかったです』
 アハハ! とバージルさまが笑い、私を抱くルーファスの手にグッと力がこもる。
『舞踏会で踊るぐらいならいいんだがね。妻にするとしたらナシだ。彼女のような意志の強そうな女性を妻にしたら……。きっと国が傾く』
『おや、傾国の美女じゃないですか』
『やめてくれ』
『彼女だったら経験豊富そうだから、愛人にするにはいいかもしれませんね。色んなプレイにも応じてくれそうです』
『僕はああいう、きつい顔立ちは好みじゃないんだ。性格、性欲共に強そうだろ? そもそもきっと僕は、彼女相手なら勃たない。クラリッサみたいに、何でも言うことをきいてくれる子の方が好きだな。アシュバートン侯爵令嬢の胸が大きい所も、僕にとっては興ざめだ』
『普通、大きい方が良くないですか?』
『僕はそうじゃないんだよ。少女っぽい方が好みだ』
『ハハ! 危ない趣味ですねぇ』
『だがクラリッサも子を産むようになったら、それなりに忙しくなるだろうから……。そうなったら内緒で愛人を探してもいいかもな』
『王子はいいですねぇ。愛人をどれだけ作っても、国を思って世継ぎのスペアを作るで言い訳が済むんですから』
『……秘密だよ』
『王子がその歳まで結婚してなかった原因も、実は影でレディたちをつまみ食いしてたからっていうのも……。クラリッサ殿下にも世のレディたちにも、秘密にしておいた方がいいんでしょうね』
 バージルさまが含んだ笑いをし、それに王子が苦く笑う。
『男の甲斐性だよ。新婚のうちは大人しくしているつもりなんだから、頼むよ』
『はいはい、分かってますよ』
「……もう、……よして。……本当に」
 吐き気を覚えて手を口元にやると、魔鏡はフッと映像を映すのをやめて、座り込む私たちを映した。
 顔面を真っ青にした私は、自力で立つこともできなかった。
「……ライラが心を痛める相手じゃない」
 もう一度、固い声でルーファスが言う。
「私は……、迷惑な存在だったのかしら」
 ポツリ、と落とすように思いを吐露すると、残りがつられて次々に出てくる。
「クラリッサに友情を感じて、善意で行ったことはすべて迷惑だったの? あの子に……愚かな女と思われていたの? 私……っ、慈善事業だってクラリッサのことだって、全部相手の幸せを願っていたのに!」
 大理石の床にボタボタと涙が零れ、思い切り握った私の拳にもかかる。
「立派な淑女であろうと思ったわ! 王太后さまから祝福の言葉を頂いて、そこから私の人生は始まっていたもの! 周囲の期待に応えようとした! 誰よりも淑女らしい淑女であろうとして、遊びたいのも我慢して努力し続けたわ!」
 磨き上げられた床に、私の歪んだ顔が映っている。
 ──なんて醜いの。
「その努力も全部! 男性には要らないものだった! 顔が可愛くて、何でも言うことを聞く女性だったら良かったの!? より良い人間になろうとしただけなのに! 自分のために、誰かのために学んだわ! 知識を得て自分の意見を持ったらいけないの!? 間違えていることを間違えていると言ってはいけないの!? 誰かに親切にしたら──皆裏でああいう風に思っているの!? 私はあの社交界で──皆に嘲られていたの!?」
 泣き叫ぶ声は、私自身の心を煽ってゆく。
「──私なんて! ──誰にも必要とされていなかったんだわ!!」
 そこから先は──、何も言葉にならなかった。
 号泣する私を、ルーファスは黙って抱きしめていた。
「すまん」という言葉が聞こえたような気がしたけれど、私は己の心に荒れ狂う嵐に翻弄されていた。
 慟哭は続き──、やがて私の喉からかすれた呼気しか聞こえなくなった頃。
「……真実を知って欲しかった。お前が想っていた男は下らない男だった。お前が親友だと思っていた女も、ただの腹黒女だった。これ以上あんな奴らのことでライラに悩んで欲しくない。悩むなら……俺のことだけを想って欲しかった」
 ぐったりと力の抜けた私を抱き上げ、ルーファスが呟く。
 ──だったら、どうしてあんなものを見せたの。
 あなたさえ魔鏡の映像を見せなければ、私はこんなにも傷つかなかった。

 最後に私はルーファスのことすら恨み、──意識を闇に落としていった。
「すまない」と聞こえた気がしたけれど、その言葉は私の意識にも引っ掛からず、スルリと暗闇に消えた。

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