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【11話】無慈悲な皇帝の行き過ぎた純愛~前世は断罪された悪女でした~

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「あの、皇帝陛下……?」
「あぁ、すまない。まさか会えるとは思わなかったのでな」
 私を解放してくれた皇帝陛下は、それでも何故か私の両手を掴んだまま、そのサファイアの瞳でじっと見つめてくる。冷血皇帝という渾名あだなからは考えもつかない熱い視線に、私は身動みじろぎもできなくなってしまった。
「……先程の物言い、ソーニャの記憶を全て継いでいるわけではないのだな」
「え、あ、はい。その、断片的に夢で見ているだけで……あ、あの、性格は引き継いでいないと思うんです。むしろ反面教師というか。だって、その、たとえ王太子殿下の婚約者とはいえ、やり過ぎはよくないですよね。だから、婚約破棄をされるのにも納得、というか」
「婚約破棄された後のことは?」
「言われてみれば、見たことないかもしれません」
 まぁ、あんな性格で婚約破棄されたんだから、その末路はあまり見たくもない。だって、家で軟禁か、はたまた修道院か、下手をすればひっそり毒殺だってありえるかもしれないし。うぅ、やっぱり権力って怖いな。行き場のなくなった娘の扱いって考えたら、ぞくぞく悪寒がはしる。
「――――」
「皇帝陛下?」
 何故だろうか。なんだか、すごく悲しそうな顔をしたように見えたのは。
「――――は貴女に謝らなければならない」
 私は目を大きく開いた。目の前で話しているのは皇帝陛下なのに、口調が全く別人のものに変わってしまったからだ。
「そもそもファシング家という後ろ盾を得るための婚約だった。だが、その後ろ盾を別の家に鞍替えするしかなかったのだ。確かに貴女は過ぎた散財など悪目立ちする行動があったかもしれない。だが、あのとき私は、貴女に本当の婚約破棄の理由を誠実に告げるべきであった、と今なら思う」
 この口調、そして、話している内容。それらはある人物を思い起こさせた。
「コルネリウス殿下……?」
 かつてのソーニャの婚約者である、王太子殿下その人だ。
「驚かせてしまったようだな。余も驚いた」
 元の皇帝陛下の顔に戻り、彼の手が私の頬を撫でる。
「今度こそ、そなたを幸せにしたい。確かに一度そなたの想いを裏切ることになってしまったが、再びこの手をとってはくれないだろうか」
 信じられないセリフばかりだったけれど、「幸せにしたい」という目の前の男性の言葉に、嘘は感じられなかった。
(ソーニャの婚約破棄の理由が、単なる政争の結果で、皇帝陛下が王太子殿下で、今度こそ幸せにしたいと言ってくださっているということ?)
 私は、この手を取ってもいいのだろうか。
「私は……ソーニャ・ファシングではなく、カティア・シュナーベルで」
「あぁ」
「下位貴族の娘でしかないし、とても皇帝陛下に釣り合う血筋ではありませんし」
「構わぬ」
「それに、また権力に振り回されてとんでもない愚行を重ねてしまうかもしれなくて」
「そなたが嫌がるなら、それを止めよう。それがそなたを選んだ余の務めだ」
 信じても、いいのだろうか。
「私は……」
 震える声で承諾を告げた。

◆―――――――◆―――――――◆

「まったく、あの人ったら、勝手にほいほいと……」
「まぁまぁ、お母様。さすがに拒否を示せる相手ではないですから」
 珍しくぷりぷりと怒りを露わにしているお母様の隣で、私は荷物を整理していた。
「だからって、これはあんまりだわ」
 まぁ、お母様の言いたいことはよく分かる。私も驚いたから。
 婚約者であるハンネス様への補償や、これからの私の身の振り方、支度金などなどを国王陛下と宰相閣下と話し合い――というか、身分の関係上ほとんど一方的な通達だっただろうけど――をしてきたお父様は、とんでもない条件を飲んでしまっていた。
『カティア・シュナーベルは視察団と帰国を共にすること』
 お母様が烈火のごとく怒っているのがコレである。手続きをして私が国王陛下の養女となり、我が家から籍を抜くことになってしまうことは飲んでくれたけれど、さすがにこの条件は論外だったらしい。
「視察団が帰国するのは一週間後だっていう話でしょう? 嫁ぐ娘に何もしてあげられないじゃない」
「その分、王家のほうで色々と準備してくださっているようですわ」
「そういうことじゃないのよ? 嫁入りの心構えとか、母と娘のスキンシップとか色々とあるじゃない」
 お母様の言いたいことは分かる。私自身もあれよあれよと急流に流されるように話が進んで行ってしまっているので、どこか他人事で実感が湧いていないのだ。
「皇帝陛下もお忙しい方ですし、先方も嫁のなり手を探していらっしゃったようなので……」
「普通は受け入れ準備をしたり、しきたりを事前に教え込んだり、色々と時間をかけるものなのよ? これでは国のために身売りするようなものじゃないの!」
 確かに、お母様の言うことも最もだ。こんなに急ぐ理由について、我が家は何も知らされてはいない。お父様も、皇帝陛下の要望としか聞かされていないらしいから「それほど寵愛されているということじゃないのかな」なんて甘いことを言っていたけど。

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