【40話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

作品詳細

第七章 ゆだねる想い

 その後の諒太郎の行動は早かった。
 今日の半休プラス三日間の有給を取ってからわたしを病院に連れていき、「恐らく疲れとストレスが溜まっているのだと思いますよ」と診察を受けて漢方薬を処方してもらった。それからマンションに戻り、わたしを寝室で寝かせてから、梨々子ちゃんに「今日は夜ごはんを自分で作るように」と連絡を入れる。
「もう十二時か。薬を飲まなくちゃいけないな。おかゆでもいいから、なにか口に入れよう」
「この漢方、食前に飲むやつだよ。あんまりお腹減ってないから諒太郎だけ食べて」
「そうか。食欲がないのに無理をさせてもいけないしな」
 諒太郎は、ベッドの端に腰掛けてわたしの頬を撫でた。心配そうな表情だ。
「すぐに食べられるようにしておくから、お腹が減ったら言ってくれ。冷蔵庫のもの、勝手に使ってもいいか?」
「いいけど、諒太郎って料理できるの?」
「一人暮らしの経験があるからな。手料理の腕を披露できる機会をやっと手に入れたんだ。仕事以上に張り切って作るから、楽しみに待ってろ」
 諒太郎は、水と薬をサイドテーブルに置いてくれた。
「今日も実家のほうに行く予定だったのか?」
「うん。できれば予定どおり行きたいんだけど……」
「行くのは無理だな。いまはとにかく寝て、あとで弟さんに連絡を入れよう。そうだ、スーツから部屋着に着替えたほうがいい。どこに置いてある?」
「そこのクローゼットに、Tシャツとスウェットがある……」
 諒太郎はごそごそと探し当てて、持ってきてくれた。それからわたしのスーツを脱がし、部屋着を身に付けるのを手伝ってくれる。下着姿をみられるのは恥ずかしかったけれど、諒太郎は必要以上にわたしにふれてこなかった。体調を気遣ってくれているのだろう。
「ありがとう、諒太郎……」
「ああ。おやすみ、咲」
 わたしの髪を撫でてから、諒太郎は寝室を出ていった。カバンの中にノートパソコンが入っていたから、居間で仕事をするのかもしれない。
 そういえば、この部屋に誰かを入れたのは家族以外に諒太郎が初めてだ。伶奈すら遊びに来たことはない。
 同じ空間に他人がいると、気心の知れた仲でも落ち着かないだろうと思っていた。でも、諒太郎がいると思うと安心する。
 身を起こして薬を飲み──めちゃくちゃ苦かった──、ふたたび横になった。息をつくと疲れが重たくのし掛かってくる。わたしは目を閉じて、そのまま眠った。

 諒太郎に起こされたとき、寝室内は薄暗くなっていた。
「咲、体調はどうだ?」
「ん……、まだ眠い……」
「わかった、じゃあ今日はこのまま寝よう。実家に連絡は入れなくてもいいか?」
「うん、大丈夫……。翔とお母さんは、来れるときにだけ来てって言ってたし……」
「そうか、なら安心だな。おやすみ、咲」
 諒太郎の声が心地いい。もう夜だし、このまま諒太郎は家に帰ってしまうんだろうな。さびしいな。
 頭にもやがかかっているみたいだ。あんまり眠たくて、わたしは眠りに引き戻されていった。

 翌日、起きたら午前十時を回っていた。スマホの時計をぼーっと見て、今日は何曜日だったっけと思う。
(平日だから、会社ある日だよね。どうしよう、完全に遅刻だ……)
 ぼーっとしたまま考えて、それからやっと思い出した。
 今日は有給を取ったから、会社に行かなくていいんだ。
 のろのろとベッドから降りて、寝室を出る。洗面所で顔を洗ったら、気分がいくらかスッキリした。
 鏡に映る自分は、目の下にクマができているものの、憔悴はしていない。全身の重だるさは昨日よりずいぶん良くなっているし、目眩もなかった。
(あ、でも、昨日はメイクしたままで寝ちゃったから、肌がちょっと荒れてるかも)
 せっかくの休みだし、今日はすっぴんで過ごそう。翔に電話して、昨日のお母さんはどんな様子だったかを聞いて──、そうだ、諒太郎にも連絡しないと。
 昨日は送ってくれてありがとうって伝えたい。諒太郎がそばにいてくれたから、安心して休むことができた。そのおかげで、心も体もすっきりと上向きになれたのだ。
(よし! 朝ごはん食べるか)
 洗面所を出ようとして振り返ったときである。
 開いたままだった扉から、長身のイケメンが姿を現したのでわたしは腰を抜かしそうになった。

作品詳細

関連記事

  1. 【7話】国王陛下の寵愛蜜戯~獰猛な独占欲~

  2. 【2話】氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

  3. 【3話】氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

  4. 【4話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

  5. 【3話】デキる上司が狙うは恋愛戦力外のシンデレラ

  6. 【2話】デキる上司が狙うは恋愛戦力外のシンデレラ

  7. 【4話】氷姫を蕩かす熱愛~侯爵様の優しいキス~

  8. 【1話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

  9. 【1話】デキる上司が狙うは恋愛戦力外のシンデレラ

Bookstore

dブックロゴ

bookliveロゴ

PAGE TOP
テキストのコピーはできません。