【30話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

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「もしかして、二人で呑むの初めてじゃない?」
「そうだな。俺はてっきり、咲は俺と呑むのを嫌がっているんだとばかり思っていたよ」
「あー、そうじゃなくてあのときはドキドキしすぎたっていうか、上司と気軽に呑みに行くっていうことにハードルが高いなぁって思ったっていうか」
 ゆっくりお風呂につかったあとの、キンキンに冷えたビールは最高だ。ああ美味しい。
「ならいまは大丈夫だな。なぜならいまこのときの俺は、きみの上司じゃない」
「おっしゃるとおりです、旭課長。いまのあなたはわたしの素敵な恋人ですよ」
 彩り豊かな料理の数々に舌鼓を打つ。諒太郎との会話も楽しいし、海の幸は美味しいし、ビールは最高だし、言うことなしの旅行だ。
 それでもわたしの視線は、テーブルの上に置いたスマホにチラチラと向いてしまう。大丈夫だとは思うけど、翔から連絡があったらと思うとついチェックしてしまうのだ。
「ここの料理も美味いけど、俺は咲の料理のほうが好きだ」
「はいはい、決まり文句いただきました」
 あさりの炊き込みごはんとお吸い物を飲み終えて、無事完食。ほろ酔い状態のわたしは、とってもいい気分で座椅子にもたれた。
 わたしよりも先に食べ終えていた諒太郎は、残りのビールを呑み干して優しく笑った。こういう笑い方をするときの諒太郎は、瞳が澄んでいてドキドキする。
「お世辞じゃない。本心だよ」
「諒太郎は純真なのか女慣れしまくってるのか、よくわからないなぁ」
 ほてりを抑えるために、冷水の入ったコップをわたしは自分の頬に当てる。
 アルコールの入った諒太郎を、会社の飲み会以外で初めて見た。いつもより瞳が潤んでいるように見えるし、声も甘ったるさが増しているしで、とっても危険だ。さっきよりも浴衣がはだけたせいで、逞しい胸板が覗いているのも非常に危険だ。
「どっちも間違っているな。そういう咲はどうなんだ?」
「わたしもどっちでもないよ」
 そのとき扉がノックされて、中居さんたちがやってきた。完食したお皿を下げて、畳に布団を敷いてくれる。
 ぴったりとくっついたふたつの布団が、とたんに生々しく見えてきた。中居さんたちが下がっていって、諒太郎と二人きりになる。
 き、緊張してきた。いまさらだけれど、緊張してきた。だっていまの諒太郎、アルコールと浴衣のせいでものすごく色っぽいんだもん。ああ、やっぱりこんなカッコいい人とわたしが付き合っているなんて、絶対におかしい。現実がおかしい。
 視線を泳がせていると、脇にどかされたテーブルの上でスマホが光るのが見えた。意識がいっきに引き戻される。
 手に取って見てみると、伶奈からのメッセージだった。カレシとの旅行の夜を楽しんでねというような、他愛のない内容だ。わたしは安堵する。
「今日はスマホばかりをずっと気にしているな」
 ごく間近で声が聞こえたと思ったら、逞しい両腕に背中から抱きすくめられていた。諒太郎の体温と胸板の硬さを感じて、わたしの頬がいっきに熱くなる。
「り、諒太郎……っ」
「旅行に出発する前から──金曜日あたりから様子がいつもと違うように見える。なにかあったのか、咲?」
 耳のすぐ後ろから諒太郎の声が聞こえてくる。言葉の内容も相まって、わたしはうろたえた。
「な、なにもないよ。スマホを気にするのはいつものクセっていうだけだし」
「そんなクセがあるとは知らなかった。スマホにいちいち妬きもちをやいていたら身が保たないな」
 ちゅ、と耳にキスをして、諒太郎はさらにきつく抱きしめてくる。
 諒太郎に頼れたら気持ちが楽になるかもしれない。お母さんの入院のことが喉まで出かかったけれど、やっぱり言い出せなかった。
「いつもより元気がないように見えるが、大丈夫か? 心配事や、気になることがあるならなんでも言ってくれ。力になるから」
 諒太郎の手が頬に添えられて、彼のほうを向かされる。諒太郎は心配そうな顔をしていた。
「大丈夫、すごく楽しいよ。こんなに素敵な旅行に連れてきてもらったんだもん」
「俺も楽しいよ。咲といられて幸せだ」
 そっとささやいて、諒太郎は唇を塞いできた。
 やわらかく押し当てるような口づけに、わたしは心地よさを覚える。諒太郎の唇はやがて大胆になっていき、深く絡み合っていやらしさを増していく。
 熱い舌が差し込まれ、口中をゆったりと舐めしゃぶられた。彼の舌が自分のそれに絡む。いやらしい水音が、室内に響く。
 気づけば布団の上に組み敷かれ、唇を貪られていた。
「ぁ……ん、……っ」
「はぁ……っ、咲──」
 諒太郎の眼差しが熱い。肩から浴衣をずり落としながら、今度はうなじに顔をうずめて口づけてくる。
 ついに今夜、諒太郎に抱かれてしまうんだ。緊張して強張る体を、諒太郎の大きなてのひらがタンクトップ越しに撫でてくる。首すじを舐められて、わたしはぴくんと肩を震わせた。

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