【24話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

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「諒太郎が赤くさせたんだよ」
「咲は素直じゃないのに素直だな」
「どっちなの、もう」
「どっちでもいいよ。どんなふうでも咲が好きだ」
 このスーパー恋愛体質男め。
「そういえば、家庭教師センターから連絡があったぞ。後任がそろそろ決まりそうらしい」
「そうなんだね、良かった。梨々子ちゃんの勉強をみることができなくなるのはちょっとさびしいけど」
「そう言ってもらえると兄として嬉しいよ。ところで、弟さんは元気にやっているか? お母さんは働いているんだったよな」
「うん、大丈夫。母親とは最近あんまり連絡とってないけど、便りがないのは元気な証拠っていうしね。弟の学費のほうもちゃんと払えてるよ。途中で諒太郎に解雇されちゃったら、あっというまに大ピンチに陥るけど」
 冗談めかして言うと、諒太郎も笑った。
「こんなに優秀な人材を手放すわけがないだろう?」
「身に余るお言葉感謝します、雇用主サマ」
「お金のことでもなんでもいいから、なにかあったらすぐに教えてくれ。力になるから」
「うん、ありがとう」
 諒太郎は本当に優しい人だ。わたしはほほ笑んで、彼の唇にキスをした。

 諒太郎は宿を早速とってくれた。今週末という急な話だったからどこもいっぱいで、十軒目に電話したところでやっと取れたらしい。ものすごく楽しみだ。
 車で片道二時間くらいの、海辺の温泉街ということで、のんびりとリフレッシュできそうだ。予定をあえて詰め込まず、海岸を眺めたり温泉を楽しんだりして、ゆっくり過ごそうということになった。
「そろそろ白状しなさい、咲。あんた男できたでしょ?」
 店員さんが運んでくれたパスタをフォークに巻きつけながら、伶奈が言った。わたしは言葉に詰まる。
 金曜日のランチタイムは、お弁当ではなくひさびさに外に食べに来ていた。会社から徒歩五分のところにあるカフェレストランである。いまの時間帯、サラリーマンやOLのお客さんが多いけれど、うちの社員は来ていないようだ。
 伶奈の目つきからして、確信を得ていることは間違いない。これ以上ごまかすことはできないだろう。わたしはついに降参した。
「伶奈の言うとおり付き合ってる人はいるよ。というか、なんでわかったの?」
「カンよ、カン。咲は態度や表情にはあんまり出ないけど、雰囲気がなんとなく違うもの」
 カンのいい友人を持つと厄介だ。わたしはエビピラフをスプーンで掬った。
「隠してるんだから、人には言わないでよ」
「それはいいけど、なんで隠してるの? 男の一人や二人いたってなんの問題もないじゃない」
「相手がちょっとね。問題があるというか、バレたら面倒だなって思って。これ以上は言えない、ごめん」
「ふうん。いいわ、勝手に探偵するから」
 伶奈は肩をすくめた。勝手に探られるのは困るけど、興味本位の行動を取る子じゃないから、そのあたりは信頼できる友人である。
「ところで、バイトのほうは順調? まだ誰にもバレてないのよね?」
「……。うん。バレてないよ。とりあえず順調」
「あんたが体力あるのは知ってるけど無理は禁物よ。仕事後だけじゃなくて、土日もシフト入れてるんでしょ。働き詰めは良くないんだから」
「あ、でも土日のバイトは辞めたんだ」
「そうなの? カレとの時間を作るために?」
「そんなとこかな」
 気まずい気分でわたしは水を口に含んだ。
 土日に入れていたファミレスのバイトはすでに辞めている。梨々子ちゃんの家庭教師の仕事も、来週あたりに後任が決まれば契約は切れることになる。
 そうなると、諒太郎の家で夜ごはんを作るというアルバイトだけが残る状態だ。拘束時間は平日の夜に三時間ほど。わたしも一緒に食べるし、後片付けは旭兄妹がやってくれる。だから厳密に言えば実働時間は、料理を作っている一時間だけだ。
 たったそれだけの働きで、週六のファミレスバイトと、週一の家庭教師を合わせたのと同じだけの金額を諒太郎から受け取っている。加えて彼はああいう性格だから、車で送ってくれるのを欠かさないし、一緒にいるあいだはわたしをずっと甘やかしてくる。
(このバイト内容であれだけのお金をもらってるなんて、諒太郎におんぶに抱っこしてもらうにもほどがあるような気がする……)
 アルバイトの提案を受けたときは、破格の待遇に単純に喜んでいた。会社以外で鬼課長からお叱りを受けることを差し引いても、お得だと思ったのだ。
 けれど実際に働き始めてみるとお得どころではなかった。諒太郎は鬼上司ではなく、彼女に対して超甘々の恋人になってしまった。これじゃあバイトじゃなくてただの夕食デートだ。こんな状態でお給料をいただいてしまっていいのだろうか。
「なに神妙な顔してんのよ。旭課長に怒られそうな案件でも思い出したの?」
「当たっているような、ぜんぜん違うような……」
「明日は土曜日なんだから、内緒のカレとイチャイチャするんでしょ?」
「じつはね、土日にその人と旅行に行ってくるんだ」
 これくらいは伶奈に打ち明けてもいいだろう。なんだかんだ言って、明日からの旅行はものすごく楽しみなのだ。
 わたしの顔がほころぶのを見て、伶奈も嬉しそうな顔になった。
「いいじゃない。楽しんできてね、おみやげ待ってるわ」
「ハイハイ。伶奈の好きそうなお酒探してくるね」
「さすがわかってるわね咲」
 わたしのスマホの着信音が鳴ったのはそのときだった。画面に表示されていたのは、意外なことに翔──弟の名前だった。

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