【23話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

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 こんなことが毎日のように続いたら身が保たない。でも、強く拒絶するには諒太郎のキスは気持ちよすぎた。
「ん……っ、ァ……」
「咲……」
 諒太郎の腕の中で口づけに耽っていたのは数分のあいだだったと思う。ゆっくりとキスをほどきながら、わたしの乱れた髪を諒太郎は指で梳いた。
「……そろそろ仕事に戻らなければいけないな。きみの唇が名残惜しいよ」
 唇をなぞる硬い親指にぞくりとしてしまう。キスだけで足腰が立たなくなってしまったわたしを、諒太郎は壁際の椅子に座らせてくれた。
「すまない、がっついてしまった。資料は俺が探すから、そのあいだ咲は座って休んでてくれ」
「……うん」
「今日は月曜だから、帰りは駐車場で待ち合わせよう」
 買い出しに行くための待ち合わせというだけなんだけど、こんな状況で言われるとどきりとしてしまう。
 テキパキと資料を探し出す諒太郎を見ながら、やっぱりわたしも探したほうがいいんじゃないかと思った。でもキスの余韻でぼうっとしていたのは確かだったから、ここは素直に甘えることにした。
(諒太郎、あのまんまの状態じゃつらいんじゃないかな……)
 資料を探し始める諒太郎を、丸椅子に腰掛けながらわたしはぼーっと見守っていた。

 帰社時刻を迎え、買い出しを経て、旭家にて夕食を終えた。そのあいだも、もちろん諒太郎の恋愛スイッチはオンになりっぱなしだったので、わたしの動悸は速まりっぱなしだった。梨々子ちゃんの前では、さすがの諒太郎も自重していたようなのが救いだった。
 いつものようにマンションの前まで送ってもらう。別れ際の車内で、緊張を表に出さないように気を張りながらわたしは彼を見た。
「良かったら、うちに寄っていく?」
「…………」
 諒太郎は難しい顔をして沈黙した。やがて、自嘲混じりの笑みを滲ませて口をひらく。
「いや、やめておく」
「あ、ごめん。疲れてた?」
「いや、そうじゃない。ゆっくりできる場所で、咲と二人きりになりたい気持ちは強いけれど……」
 諒太郎は、わたしの髪にふれながら言う。この人は、わたしのどこかをいつも触っていないと落ち着かないとでも言うように、いつもどこかにふれてくる。
 熱を秘めているような諒太郎の瞳を見つめていると、いっそう動悸が速まった。
(気軽な感じを装って誘ってみたけど、わたしは経験豊富というわけじゃないんだよね)
 それどころか、高校時代に半年ほど付き合った彼と一度したことがあるだけだ。そのときの感想はというと、ただただ緊張して痛かったという情けないものである。
(わたしも二十四歳になるんだし、昔痛い思いをしたからもうしたくないなんてことは言わないし、思わないけど)
 いざ目の前にすると、緊張するし尻込みもしてしまう。だというのにがんばって部屋に誘ったのは、資料室での諒太郎の様子を見て気を遣ったからだ。ああでも、まだ付き合って四日目なのに自分から誘うなんて、諒太郎からとんでもない肉食女子だと思われちゃったかな。どうすればいいんだろう。
 頭の中がグルグルになっていると、いつもの調子の声で諒太郎が告げた。
「なあ、咲。今度旅行に行かないか?」
「旅行?」
 予想外の提案に、わたしはびっくりした。
 諒太郎と旅行。よく考えなくても、楽しいに違いない。
「急だけど、今週の土日にでも。海の近くにでも行こうか。美味しいものを食べて、のんびりしたい。ホテルの予約は俺が取っておくよ。どうかな?」
「すごく行きたい! でも、どうしたの急に?」
 部屋に誘ったところからの旅行に行くという展開に、頭がついていかない。諒太郎は優しく笑った。
「俺は、咲のことが大切だからちゃんとしたいんだ。咲とずっといたいと思うから、きみとのことはちゃんとしていきたい。部屋に誘ってくれたのは嬉しいしそうしたいけれど、我慢する。こんなふうにガチガチに緊張している咲の体を無理やり開くようなことはしないよ」
「諒太郎……」
 甘くほほ笑んで、諒太郎はわたしの頬にキスをした。
「資料室でがっついてしまった俺が言っても説得力がないかもしれないけどな。週末は二人でのんびり過ごそう。愛してるよ、咲」
「え、ええと……ハイ……」
 もうどんな顔をしていいのかわからない。でも、自分が耳まで真っ赤になっていることは見なくてもわかった。
 この上なく大切にされることがくすぐったいし、どきどきする。いますぐ逃げ出したいくらい恥ずかしいのと、このまま諒太郎にぎゅーっと抱きついてしまいたいのと、正反対の感情が生まれるせいで、身動きができなくなってしまう。
「どうした、咲。顔が真っ赤だぞ」
 諒太郎が、くすくす笑いながらわたしの頬を両手で包む。つい、軽く睨んでしまった。ああ可愛くない。

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