【22話】クールな鬼上司の恋人モードは、甘々溺愛が止まりません

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第四章 まさかの恋愛体質

 諒太郎サマは、ほかの社員の目があるところで恋人の顔になるような、空気の読めない人ではなかった。
 クールな眼差しと声と言葉でお叱りを受けるのは相変わらずだ。付き合ったら当たりがやわらかくなるかもしれないと、ほんのちょっとだけ期待していたけれど、その願いは泡と消えた。
 ただし、そのあとが違う。
 作成した資料の、数値のつけ方が甘いとお叱りを受けて、わたしは肩を落としつつ「資料室へ行ってきます」とデスクを離れた。最新のデータは電子で参照することができるのだが、十年以上前の古いデータの中には紙でしか残っていないものもあるのだ。
 資料室は地下一階にある。広い空間に、背の高い本棚がずらりと並んでいて、その中から目当てのものを探さなくてはならない。面倒だな、とため息をつきつつ、エレベーターで地下に降りて資料室に入った。電気をつけて扉を閉めようとしたら、グッと抵抗がかかる。
「えっ、なに──」
「俺も手伝う」
 短く言いながら、課長はわたしを引き寄せてきた。扉の閉まる音がする。気づいたら課長のスーツに顔をうずめていて、わたしはまばたきをする。
「あの、課長。手伝うって、どういう意味ですか?」
「言葉どおりの意味だ。この広い資料室で探し物をするのは大変だろう」
「それはそうですけど。でも、課長はお忙しい身の上ですよね? 一人で探せますので、課長は自分の仕事に戻ってください」
「咲」
 どきりとする。ここで名前を呼ぶのは卑怯だ。
 熱い瞳で課長はわたしを見つめながら、頬にてのひらでふれてくる。後悔の滲む口調で告げた。
「さっきは叱ってすまなかった」
「い、いえ、いいんです。わたしが悪かったんですから。それよりも、社内では名前を呼ばないでください。誰かに聞かれたらマズいですよ」
「咲が落ち込んでいるのに気づいてたまらなくなった。俺は仕事になると、ついキツい言い方になってしまうようだ。これからは気をつける」
「いままでどおりで全然大丈夫ですから──、っん」
 唇を塞がれて、わたしはびくっと肩を跳ねさせた。腰に回った彼の腕に力がこもる。
 深く食むように口づけられて、ぞくりとした快感が背すじを走り抜ける。駄目だって、ここ会社!
「……っ、課長、だめ、です……」
「二人きりのときは、下の名前で呼ぼうと話しただろう?」
 熱い吐息を絡ませるように、課長は掠れた声でささやいてくる。綺麗な形をした双眸が、情熱を孕んでこちらを見下ろしている。
 どうしよう、足から力が抜けそう。
 熱く濡れた舌が、わたしの唇をじっくりと這う。
「ほら、咲……呼んで」
「ん……っ、だめ、です。もう、やめ……」
「とろけきった目をして。こんな目をされて、やめられるわけがないだろう」
 腰に回された腕に力がこもる。
 唾液に濡れた唇を舌で割られて、中に入れられた。とっさに逃げようとしたら、大きなてのひらで後頭部をつかまれてしまう。
 がっちりと捕らえられて、獰猛な口づけに犯されていく。口蓋をこすられて、頬の裏をくすぐられ、それから舌を絡めとられた。
「ぅん……、ん……」
「は……、咲──咲。好きだよ。きみが好きだ」
「ぁ……っ、ん」
「咲……」
 熱をこめたささやきと、濃密にこすれあう粘膜の感触に、みだらな熱が生まれていく。くちゅ、くちゅ、といやらしい水音が、誰もいない資料室に沈んでいく。
 駄目だと思いながらも、頭の中から指先まで甘く痺れて、わたしは課長とのキスに溺れていった。
「ん、……、ァ……りょうた、ろう……」
「可愛い」
「諒太郎……」
 後頭部を支える大きなてのひらが、愛おしげにわたしの髪をかき混ぜる。わたしはもう、自分の足で立つことができなくなった。
 ぐっと体を抱き寄せられて、彼の下腹のあたりがスーツスカートの腰に当たる。そのとき、硬い熱のかたまりが押しつけられて、わたしは体を強張らせた。
「り、諒太郎、当たってるから……っ」
「ああ、キスだけでガチガチだ。思春期のガキでもあるまいし」
「や……っ、こすりつけちゃだめ……!」
「っ、すまない。服越しでも咲の体はとてもやわらかくて──けれどわかってる。こんな場所では抱かないよ」
 熱く口づけながら諒太郎は言う。
「咲の体がつらくなるようなことはしない。けれど、抱きしめて口づけることは許してくれないか」
「っ、キスも、だめ──」
「そんな声を出さないでくれ。誘われているようにしか聞こえない」
 濡れた低音でささやかれて、わたしのほうが同じ言葉を返したいくらいだった。逞しい腕に抱きすくめられ、情熱的に唇を貪られて、わたしの頭の中はとろけきってしまう。
(ああもう、どうしよう)

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