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【9話】高良さんに逆らえません!~過保護な俺様社長は甘すぎて危険。~

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「それに、社長はたぶん気付いてないと思うし……。七海さん、もしかして社長のこと諦めるために合コン行くんですか?」
 そんなことしなくても、私、七海さんが押せば意外とイケると思うんですけど、という声に顔を上げると、反応を窺うように佐和田がこちらを見ていた。明莉は困ったように笑う。
「それはないよ。私、社長に一回振られてるし。でも往生際が悪くてなかなか諦められないんだよね。私もいい年だし、いい加減他の人にも目を向けたいなと思ってるんだけど、ほら、あんまり男の人と知り合う機会もないからさ。ね、佐和ちゃん頼めないかな?」
「割と得意分野なんでそれはもちろん全然大丈夫なんですけど。……七海さん、振られてるって本当に? はっきり言ったんですか? 社長、七海さんのこと絶対好きですよ。だって七海さんのことすごい大切にしてる感じ伝わってくるし」
 明莉の告白に驚いたように目を見張った佐和田は、すぐに納得がいかないという顔になって、強い口調で訴えるように言い募った。
 それを受けて明莉の眉が下がる。
 確かに高良は明莉のことを大切にしてくれていると思う。無茶振りしてきたり、口悪く言ってきたりする時もあるが、振り返ってみると、言動の端々に明莉のことを考えてくれているのは伝わってくるのだ。それは、もしかすると、一部下に対して抱くものを越えているのかもしれない。
 けれど、それは、恋愛感情ではないのだ。
「うーん……大切に思われているかもしれないけど、たぶん身内とか家族に対する気持ちみたいなものに近いんだと思うんだよね。ほら、私って仕事面で社長にだいぶ育ててもらったし。それで情が移ったというか。恋愛対象としては、違うみたい」
 しんみりさせないようにわざとあっけらかんと言ってみたが、佐和田は解せないという表情を崩さなかった。しかし、それ以上は何も言わず、何かを考えるかのようにじっと明莉を見つめていたかと思うと、急ににこりと笑った。
「……わかりました。私、七海さんのためにイケメン集めます。任してください!」
 どんと胸でも叩きそうな勢いで力強く言った佐和田に、明莉は少し慌てる。
「そ、そんな気合い入れなくても大丈夫だよ? 人数の足りない合コンとかあったらちょっと誘ってもらえるだけで……」
「え、なに言ってるんですか。社長よりもいいオトコ見つけて、社長に七海さん振ったこと後悔させなくちゃ! 大体社長っていつも七海さんに甘えすぎなんですよ。七海さんのこと自分のもの扱いしているフシあるし。振ってたって考えるとあの態度はないと思います」
「いや、振られたって言っても、本人も覚えているかわからないぐらいの微妙な告白だったから……しかもお互い酔ってたし。まあでもはっきり『ない』って言われちゃったんだけど、その後すぐ冗談だって誤魔化したから、社長があれを告白と思ったかどうかは……」
 なんだか話が高良を悪者にする方向へ流れているようで、明莉は慌てて弁解めいた言葉を並べた。途中で自分でも何を言っているのか分からなくなって、段々と言葉が尻すぼみになると、佐和田が軽く肩を竦めたのが見えた。
「七海さんってやっぱほんとに社長に甘い。まあでもそれも今日までですよ? 私頑張って七海さん好みのオトコ集めますから。どういうタイプが好みですか? あ、でも社長に似ているタイプはなしにしましょう。あえて真逆をいってもいいのかも」
 明莉は佐和田にもし自分にも行けそうな合コンがあったら連れて行ってほしいと頼んだのだが、どうやら佐和田は明莉のためにわざわざ合コンを開催してくれるらしい。その気持ちに本当に甘えていいのかなと思いつつ、明莉は少し考えてから、まあ折角だしという気持ちで、おそるおそる口を開いた。
「じゃあ……女の子の扱いが上手で、慣れてる人。それなりに遊んでるタイプ……? 最低限の清潔感があればイケメンじゃなくても全然いい」
「……はっ!?」
 この明莉の発言は予想外だったらしく、佐和田が素っ頓狂な声を上げた。
「待って? ちょっと待ってくださいよ。七海さん、チャラ男が好きだったんですか? え? 予想外すぎるんですけど」
「いや、そういう訳じゃないんだけど……」
 実は、明莉が佐和田に合コンを頼んだ目的は一つであった。
 ――処女を捨てること。
 あれから明莉は考えた。これから彼氏を作るにしても婚活するにしてもやはりもうすぐ三十歳で処女というのはまずいのではないか。
 ばれた時にドン引きされる恐れがある。下手したら振られる。そこまで男性に縁遠いというのは、何か理由があるのではと思われて、性格的に欠陥があるとか何か問題を抱えているのではと勘繰られるかもしれない。
 そんなに悠長にしていられる年齢でもないだろうし、相手がすぐに現れるとも限らない。加えて処女で躓くと考えたら、この先はだいぶ長い道のりとなるだろう。
 まずは、処女でなくなるべきだ。それに彼氏を作るより処女を捨てる方が簡単なのではないかと思った。「彼女」にするには、男性側だって色々気になる点とかこだわる部分もあるだろうが、一晩の相手だったらそれほどのものは求めないに違いない。
 そこまで考えて、ではどこで明莉の処女をもらってくれそうな男性を見つけられそうかと悩み、思い浮かんだのが佐和田だった。佐和田は所謂女子力が高いタイプだ。可愛い顔立ちをしていてそんなに必要そうでもないのに、いつもきっちりメイクをし、ヘアスタイルもネイルもアクセサリーもさりげなくちゃんとしていて完璧。服装もスカート中心で女の子らしい恰好を好んで着ている。センスもおしゃれで明莉もその女子力を見習わなくてはと常々思っていた。
 そんな佐和田は性格も明るくてノリが良く、社交性が高い。彼氏がいた時期もそれなりにあるようだったが、フリーの時はよく合コンに行っているのを知っていたのだ。交友関係が広いらしく、色々な業種の男性と合コンをしているのを話のネタとしてちょこちょこ聞いていた。だから、頼めば明莉も連れて行ってくれるかもしれないと思ったのだ。

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