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【30話】高良さんに逆らえません!~過保護な俺様社長は甘すぎて危険。~

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 付き合っていることを後悔しているのにキスなんてするだろうか。別にしなくてはいけないような状況ではなかったと思う。高良は、わざわざ、自分から進んでしたのだ。
 これをどういうことかと考えれば、高良は明莉との付き合いについて、かなり前向きに考えてくれている、ということではないだろうか。例えば、一時は『早まった』と後悔したものの、もう後戻りできない状況に気付き、だったら前向きに明莉を好きになろうとしているのでは、ないか。
 それに甘えてみてはだめだろうか。やはりこのまま何もなかったように戻ることなんて到底できないし、高良を自分から手放すことなんて無理だ。
 付き合っていけばもしかしたら明莉を好きになってくれることがあるかもしれない。そもそも、『恋愛的に』好きになってもらうことがそんなに必要なことなのだろうか。現状、キスもセックスもできたし、大切にも思ってくれている。よく考えてみれば割と十分だと思う。確かに、燃え上がるような熱情を明莉には持てないかもしれない。けれど、高良は恋愛にそんなに労力を割くタイプではないし、この程度の愛情でもよいのかもしれない。
 だったら別に焦って白黒をつけなくてもいいのではないか、という気持ちになっていた。ずるいかもしれないが、高良が前向きに考えてくれる以上、余計なことを言って自分から終わらせたくはない。
 そうやって今後の方向性が出たところで月曜を迎え、会社でいつものように高良と顔を合わせた。仕事中はもちろん、プライベートなことは持ち込まないつもりではあるが、『早まったかも』を聞いた次の日はだいぶ落ち込んで影響も出てしまっていたとは思う。なにせ碌に高良の方を見れなかったのだから。それに比べたらかなり落ち着いた気持ちで仕事に臨めるようにはなっていた。
 それでもおかしな態度を取っていたことの自覚はあったので、その挽回のためにも可能であればプライベートで二人の時間を持ちたいとは思っていたが、生憎とその週、高良は外出が多かった。夜も仕事関係者との食事会やレセプションパーティーへの顔出し等があり、中々その機会は訪れなかった。
 けれどその状況を気にかけてくれたのか、高良からメッセージがきて土曜には会おうということになった。休みの日に約束するのはかなり恋人っぽい。少しばかり浮かれ、明莉の心情的にも前向きな気持ちに切り替わりつつあった、そんな時のことであった。
 その日、明莉は昼休憩の際に佐和田と一緒に外でランチをしていた。二人で会社近くのハンバーグ屋さんに行き、明莉が和風ハンバーグセットのオーダーを終えた時だった。佐和田はオーダーが終わるのを待ちかねていたかのように口を開いた。
「七海さん、私、言っちゃいました」
「……何を?」
 話がやや唐突だったので明莉は不思議そうに首を傾けた。
「椿さんに。社長と七海さんが付き合っていること」
「えっ」
 思ってもみない言葉に驚いた明莉は目を見開く。あまりに驚きすぎて、あやうく口に含んだ水を吹き出しそうになっていた。
「な、なんで!?」
「この前椿さんと椿さんところのモデルさんとうちの担当者とか関わっている人でランチミーティングしたんですけど、その時、私椿さんと席が隣で。この間七海さんと一緒にいたせいなのか、なぜか社長の話をちょいちょいされて、やたらとマウントとってくるんですよね。それで私、腹立って。なんか社長ともうヨリ戻す前提で話しているから。しかも他の人は話に入ってない時を計算して私だけに言ってくるんですよ。これは七海さんに言ってるんだなと思って、そしたら我慢できなくなっちゃって、ついつい、社長は七海さんと付き合ってるから無理だと思いますよって言っちゃいました」
 すみません、まずかったですかね? と窺うように言われた明莉は反応に困ってうーんと眉を寄せた。
「まずいということもないけど……。椿さんは? どんな反応だった?」
「すごい驚いてましたよ。あんまり信じてない様子でした。失礼ですよね」
(まあ……気持ちは分からなくもないかも)
 椿にしてみれば、明莉はノーマークだったに違いない。よく考えれば高良と別れてから、椿がACTに姿を見せることなんてほとんどなかった。別れてからももちろん会社間の付き合いは続いていて、しかし別の担当者が窓口になってやっていたのだろうと思う。それなのに最近椿が顔を出し始めていたのは、仕事上必要に迫られてということもあったのかもしれないが、高良と接点を持とうとしたためなのではないだろうか。
 高良と一線を越える前にもその兆候はあったのに、自分のことでいっぱいいっぱいですっかり忘れていた明莉は今更ながらにその可能性に気付いて眉を寄せる。
 そう考えると、もしかすると高良と椿は復縁に向けて何らかの接触をしていたかもしれず、高良が椿にどういう態度を取ったのかは分からないが、椿は相当な期待を寄せていたのではないかということはすぐに思い当たることだった。
 この前椿と顔を合わせた時、わざわざ高良のことを明莉に聞いてきた態度から考えても、その想像はほとんど当たっているだろう。そこまで考えて、明莉はあることに気付きはっとなった。
(もしかして……私、二人がヨリを戻すの邪魔した?)
 高良の方は本当に椿と復縁するつもりだったのなら、明莉と関係をもったりはしないだろうから、ヨリを戻すつもりはなかったのかもしれないが、椿がそう思う可能性はあるかもしれない。
(高良さんに聞いてみた方がいいのかなあ……でも、なんて聞けば……)
 最近の二人がどういった状況だったのか、明莉だって内心はとても気になるが、それを直接高良に聞くのは今の明莉にはなかなかハードルが高そうだった。
 黙ってしまった明莉をどう思ったのか、向かいの席では佐和田が心配そうに明莉を窺っていた。その視線に気付いた明莉は慌てて安心させるように笑みを作った。

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