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【15話】高良さんに逆らえません!~過保護な俺様社長は甘すぎて危険。~

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「ちょっと行き違いがあって。すみません。明莉を返してもらえませんか」
 高良は静かな表情で遠野を見据えたまま、明莉の肩に腕を回して、更に自分の方へ引き寄せた。
(えええっ、ちょっと、これってどういうこと……!?)
 明莉は更なる混乱に陥る。
「……明莉ちゃんその人の言ってること本当? 確かさっき、今は彼氏いないって言ってたよね」
 何を考えているのか、いまいち表情が読めない遠野が明莉をじっと見て聞いてきた。
 今、どころか今まで一度もいたことなんてない。もちろん、高良が彼氏なんてこともある訳がない。
 でもそれを素直に言っていいのか、明莉は迷った。高良がどういった経緯でここに現れて、何を思ってこんなことをしているのか、さっぱり分からなかったからだ。
 何か事情があるのだろうか。こんなことをしなくてはいけない事情として、例えばどんなことがあるかといったら全く思い当たらないが、明莉は基本的に高良を無下にすることができないのだ。明莉の中で、高良は絶対的な存在となってしまっている。こんな時でもそれは有効で、高良の言動を覆すようなことが明莉にはできない。
「あ、え、その……まあ、うん、本当……?」
「そういうことなんで、すみません」
 結果、迷いに迷った末に、もごもごと歯切れ悪く答えた。その明莉の小さい声にかぶせるようにして、高良ははっきりとした口調で言い置く。そして、明莉の手を引いて踵を返した。
「えっ、あっ、ちょっ」
 引っ張られる格好になった明莉はそのままついていくしかなかった。高良にグイグイと手を引かれて歩く明莉と遠野の間に距離が空いていく。
「ごめんなさいっ……」
 その短い間に、明莉は咄嗟に遠野に詫びの言葉を口にした。せっかく、誘ってくれたのに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。しかも明莉には事情が分からないので、説明することもできない。
 手を引かれている状態でそれだけ言うのが精いっぱいで、遠野がその時にどういう顔をしていたのか、明莉からはよく見えなかった。

 *

「高良さんっ、ちょっと、待ってくださいっ」
 遠野から離れても、高良は歩みを止めなかった。ずんずんと歩いていくので、明莉はついていくしかない。声を掛けても全く反応がなく、こんな高良は初めてで、明莉は混乱と不安の中にいた。
 やがて大通りに出ると、ちょうどやってきたタクシーを高良は手を挙げて止めた。そこで初めて高良は立ち止まったが、すぐに開いたドアから押し込められるように車内に入れられて、ここでも大した会話はできなかった。
「どこ、行くんですか?」
「会社」
 運転手に告げた住所から何となく分かっていたが、高良からやっと返答が得られて明莉は少しだけほっとした。どうやら、怒っている訳ではないようだが、何か今まで感じたことのない雰囲気を高良が纏っていて、話しかけづらい。どの道、タクシーの運転手がいる空間では無闇な話はできず、車内では黙っているしかなかった。
 合コンが比較的会社に近い店で行われたため、会社まではすぐに到着した。料金を払って先に降りた高良は明莉が下車するのを待って、ビルの中に入っていこうとする。
「高良さんっ、いい加減説明してくださいよ。一体どういうことなんですか」
 エレベーターに乗り込んだところで痺れを切らした明莉が口を開いた。あんな風に去って、遠野にもきっと嫌な思いをさせて、どうしてこんなことをしたのか、理由が知りたかった。それに、どうして明莉があそこにいたのか知っていたのかも。色々分からないことだらけなのだ。
 会社に戻ってきたということは、仕事上、何かあって明莉を連れ戻さなくてはいけなくなったのか。いや、それだったらそう言えばいい。あんな風に彼氏を装う意味がない。
「えっ、地下?」
 高良が押したボタンを見て明莉は驚いた。てっきりオフィスに行くのかと思っていたら、地下のボタンが押されている。
「車で送る」
(車……!?)
 そうこうしている内に到着音が鳴って、扉が開いた。地下駐車場の生温い空気がエレベーターの中に入り込んでくる。「開」のボタンを押して、高良はくいっと顎を動かして出るようにドアを指した。
 そのまま中にいる訳にもいかないので、ひとまず明莉は高良の指示通り、エレベーターから降りた。振り返ると、後ろに続いていた高良と向き合うような格好になった。
「お前、あいつについていこうとしてたの?」
 やっと口を開いたと思ったら、その質問が直球すぎて、明莉は瞳を瞬いた。
 高良は明莉があそこで何をしていたのか、知っているのだろうか。かあっと頬が熱を持つ。その通りなのだが、そんなこと、高良には知られたくないと思った。
「なっ……そんなこと、どうでもいいじゃないですか。それより高良さんは、どうしてあそこに?」
「臼井から聞いた。お前が合コン行ったって。臼井に佐和田のSNS見てもらって、そこに店の名前書いてあったから場所は分かった」
「臼井……さん、が」
「店行ったら姿が見えなかったから佐和田の名前出して聞いたら、その予約客だったら今さっき帰ったって言われて、まだその辺いるかもと思って探してた」
 高良は淡々と話した。顔にも声にも感情が出ていないので、何を考えているのか、よく分からなかった。けれど、時折明莉から視線を外す瞬間があって、その一瞬だけ、まるで知らない男のように見えた。
「臼井さんから聞いたのは分かりました。でも何でわざわざ店を調べてまで来たんですか? それに、あんな、嘘までついて……私、高良さんが何をしたいのかさっぱり分かりません」
 そこで、高良は迷うような仕草を見せた。手を口元に当てて、言葉を選ぶかのように、軽く目を彷徨わせる。
「いやまあそれはその、心配、だったから」
「心配……?」
「合コンだけなら、さすがにその場でどうのみたいなのはないと思ったけど、持ち帰られたりしたら困るしと思って。そしたら何か不安的中みたいだったから」
「困る……?」
 明莉は眉を寄せた。やっぱりここまで来ても、よく分からない。つまり、高良は明莉が合コンに行っているのを聞いて、お持ち帰りにあうかもしれないと心配になってわざわざ迎えにきたということなのだろうか。

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