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【14話】高良さんに逆らえません!~過保護な俺様社長は甘すぎて危険。~

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 完璧に女性の扱いが上手い。上手すぎて不安になるぐらいだ。これはかなり遊び慣れているだろう。イケメンで優しそうで女の扱いに長けている。けれど、それは全てさり気なく、決して前面に押し出されてはいない。もちろん清潔感はありすぎるほど、ある。生理的な嫌悪感など抱くはずもない。
 ――まさに、理想の一晩の相手。
 彼女になるにはハードルが高すぎる。万が一なれたとしても心配が尽きないだろうから明莉にこういうタイプはちょっと無理そうだ。でも、一晩、だけだったら。
(この人なら……でも自分から頼むのはなあ)
 さすがに何と言っていいか分からない。明莉の眉が知らずと寄った。
「何考えてんの?」
 一人で脳内会議を行っている間に、二人の間の距離が詰められていたらしい。はっとして見れば、すぐ近くで遠野が覗き込んでいて明莉は驚いた。
「えっ 特に別になにもっ」
「あ、敬語とれたね。そんなに年変わらないんだし、もうタメ語にしてね」
「わかり……わかった」
「うん。素直でいいね。明莉ちゃんのピュアっぽい反応好きだなあ」
 そこで遠野は、いたずらっぽく笑った。その笑みのまま、明莉の耳元に口を寄せて、囁いた。
 ――もしよかったらさ、この後、二人で、飲まない?
 それは、まさに願ったりのお誘いで。明莉はこんなに上手くいっていいのだろうかと躊躇いながらも勢いのまま、頷いていた。
 それから少し経って席の予約時間が過ぎて、会は自然な流れでお開きとなった。解散前にトイレに寄った際に佐和田と話すチャンスがあって、明莉は素直に遠野とこの後二人で会う約束をしたことを言った。
 この後、明莉の思惑通りに事が運んで遠野とセックスしたら、それは佐和田にも伝わるだろうと思ったからだった。後から聞いたらきっと佐和田は驚く。もしかすると何かしらのマイナスの感情を抱くかもしれない。だったら自分で言った方がいいと思った。
 佐和田は当然ながら、とても驚いた顔をした。
『七海さん!? そ、それはやめた方がいいですよ。リハビリ程度の戯れにはうってつけだけど、あいつ相当遊んでますよ!? 私は七海さんにはもっとまじめなタイプを紹介しようと思ってて、もし本気になったら絶対傷つく……』
 必死で止める佐和田に明莉はこう言ったのだ。
『これぐらいしないと、高良さんを忘れられない』
 それからもう少し色々と話したが、最終的に明莉の決意が固いことを知って、佐和田はしぶしぶ送り出してくれた。ちょっとでも怖気づいたり、やっぱり嫌だと思ったり、何かあったらすぐに連絡を入れるように明莉に言い含めて。
 頷いて、見ればスマホのバッテリーが切れているのに気付いた。同じものを長く使っているので、最近バッテリーの寿命がなくなっているのか、すぐに充電が減ってしまうのだ。明莉は持ち歩いているモバイルバッテリーで充電しながら、先ほど解散したばかりの遠野と再び合流すべく待ち合わせの場所に向かった。

「どこ、行こっか」
 心臓が異常なほど速いリズムを刻んでいた。固い決意のはずが、あまりの緊張に明莉の心は早々に挫けそうになっていた。遠野に会った瞬間、これから起こることが急にリアル感をもって明莉の胸に迫ったからである。
(私、これから、この人と……?)
 自分が本当にセックスなんてできるのだろうか。それも、今日会ったばかりの人と。
「おーい、聞いてる?」
「あ、え?」
 完全に上の空になっていた明莉ははっと我に返って慌てた。どうやら何回も話し掛けられていたらしい。
「ご、ごめんなさい」
 明莉は慌てて謝った。
「大丈夫だよ。取って食ったりしないから」
 ふっと笑って、はい、とごく自然に差し出された手に、条件反射のように重ねると、遠野はそのまま流れるような仕草で明莉の手を引いて歩き出した。
「俺に任せてもらっていい?」
「う、うん」
 もう本当に心臓バクバク、緊張は最高潮だ。でも後には引けない。すべては、自分のためなのだ。
 遠野の手は大きくて、包まれてるような感触から、はっきりと男性らしさを感じられた。明莉は歩きながら、気持ちを落ち着かせるかのように二度三度、意識して呼吸を繰り返した。
 そのまま手を引かれながら、人を避けるようにして通りを歩く。
 少しだけ冷静さを取り戻して、それで結局どこに向かっているんだろう、と明莉がふと疑問を感じた時だった。後ろから、誰かの名前を呼ぶような声が聞こえてくることに気付いた。
 その次の瞬間、ぐいっと肩が後ろに引かれた。
「ナナ」
「えっ……」
 振り返った瞬間、明莉の瞳がこれ以上ないほど大きく見開かれた。
 なんとそこには、高良がいたのだ。
 明莉は息が止まりそうなほど驚いて言葉を失った。どうやら人間は自分の予想を大きく越える事態に直面した時、何かを考えたりできなくなるらしい。
 頭の中にクエスチョンマークが飛び交い、明莉の頭の中は一瞬で大混乱に陥った。
「なっなっ……」
(なんで、高良さんが!?)
「迎えにきた」
 高良は走ってきたのか、それだけ言うと、肩で大きく息をした。額の汗を拭うように手の甲で擦る。
「むか……?」
 迎えにって、そんな約束なんて、していただろうか。
 状況がさっぱり分からずに明莉は困惑の面持ちのまま、ただ立ち尽くしてまじまじと高良を見ていた。頭の中がフリーズしてしまってきちんと考えられなくなってしまったのだ。
 いや、そんな約束なんてしていない。している訳がなかった。そもそも、高良はどうして明莉がここにいることを知っているのだろう?
「明莉ちゃん、その人、明莉ちゃんの知り合い?」
 横から掛かった声に明莉はようやくはっとする。あまりに高良の登場が衝撃的すぎて、束の間、遠野の存在をすっかり忘れていたのだ。見れば、手はいまだ遠野としっかり繋がれている。明莉が立ち止まったのだから、遠野も立ち止まらない訳にはいかず、振り返れば、知らない男が登場してたのだから、さぞ驚いたことだろう。
 しかし、遠野は明莉が思った以上には、驚いてはいないみたいだった。冷静な表情で高良を見ていた。
「彼氏です」
 明莉が何かを答える前に、高良が素早く答えていた。えっ、とまたまた驚いた明莉はぎょっとして高良を見たが、それと同時にぐいっとやや強引に肩を引き寄せられて、身体が高良の方へ傾く。遠野と繋いでいた手が離れた。

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