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【4話】イケニエ王子に甘く溺愛されて、呪いの魔女は戸惑い中!

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 ◆ ◇ ◆

 パチパチと、暖炉の火が熾る。
 連日の看病で疲れ果てていたリリィは、椅子に座ったまま俯き、ユラユラと舟を漕いでいた。
 ふいに、頬に柔らかいものが当たる。
「んー?」
 わずかに反応するが、睡魔のほうが強かった。風か何かのいたずらだろうと結論付けて、リリィは再び夢の世界へ旅立とうとする。
 しかしその行く手を阻むように、次は両頬をむにっと引っ張られた。
「ふが……ひゃひ?」
 明らかな違和感に、リリィはゆっくりと微睡みから目覚めていく。
 ぼんやりと目を開くと、そこには美しく輝く蒼玉と、珍しい白金の糸があった。
「あ……金になりそう……」
「金?」
 低い男性の声を聞きつつ、リリィは眠気の残る目でぼんやりと目の前を見つめた。
「…………」
 宝石の蒼玉に見えたのは、瞳だった。稀少な白金の糸と思ったのは、髪だ。
 リリィの目の前には、目も醒めるような美青年がいた。
 高い鼻梁と薄い唇。頭の先から顎まで形が整っていて、まるで神が作り出した奇跡かと思うほどだ。月の光を寄り合わせたような白金の髪は、触るとシャラシャラと涼やかな音を奏でそうで、思わず触れたくなってしまう。
 そして、リリィの心をわしづかみにするのは、蒼玉の瞳だった。なんて綺麗な色をしているのだろう。心ごと持っていかれそうな魔力めいたものすら感じる。
 まるで魅了の術にかかったみたいに、スーッとリリィは男性に顔を近づけて……。
 そこでハッと我に返った。
「っあ、あ、おっ、あ、あなたは!!」
「目が醒めましたか? おはようございます」
「お……はようございます……。じゃなくてっ」
 リリィは思わずツッコミを入れた。
「あ、あなたね。目覚めたなら目覚めたと言いなさい! いきなり目の前にいたら、驚くでしょう!?」
 うたた寝していた自分は棚に上げて、青年を叱りつける。すると彼はにへらと、その超絶美形さに似合わぬのどかな笑みを浮かべた。
「ごめんなさい。あなたがとても綺麗だったので、つい見蕩れてしまいました」
「きっ、きれ……い!?」
 リリィはガタッと椅子から立ち上がり、両手で構えて後ずさる。
「なっ、なっ、何を言っているの。わた、わた、私が綺麗だなんて。あなたの目は、もしかして呪いにでも侵されてしまったの!?」
 他者との関わりが数えるほどしかない上、外出時は常にフードを被っているから、顔について何か言われたことは一度もない。つまり、リリィは賞賛に対してまったく免疫がなかった。
 青年はそんなリリィをジッと見つめると「ふふっ」と優しく微笑む。
「可愛いお方。私の傷を治してくれてありがとうございました」
「あ、いえ、おかまいなく……っじゃなくて!」
 リリィは再びツッコミを入れる。なんだろう、この男と話していると、不思議と自分の調子が崩されてしまう。
 先に自分を落ち着かせようと、リリィは咳払いをした。
「とっ、とりあえず。話せる程度には傷が治ったようね。よかったわ」
「はい。夢うつつに、あなたが熱心に看病してくださったことは覚えています」
「そう……。まずは寝台に座って、私に身体を見せてくれる? まだ完治していないから、確認したいわ」
 ようやく調子を取り戻したリリィは、青年にそう言って、寝台を指さした。
 しかし、青年は動かない。リリィは訝しげに眉をひそめた。
「聞こえなかった? 寝台に座ってと言ったのよ」
「ええ、聞こえましたよ。ですがその前に、大切なことをしなくては」
「……大切なこと?」
 リリィが首を傾げると、青年はその場で膝をつき、右手を胸に当てる。
 その仕草は、ローゼン王国では最上の礼と取られるのだが、世俗に疎いリリィはまったくわからなくて、ぱちぱちと目を瞬かせた。
「私の命を助けてくださって、ありがとうございました。私の名は、レオニート=アウロフ=ローゼン。どうか美しい人、私にその名を教えて頂けませんか?」
「ふえっ!? うっ、うつく……!?」
 そっとリリィの手を取る、蒼玉の瞳を持つ男。
 なんだこれは。こんな扱い、生まれてから一度もされたことがない。リリィはあたふたと慌てて、混乱に目をグルグルさせた。
「わ、私は、リリィフェオドラ。この国で、呪われた魔女と呼ばれているわ。……って、あなた今、ローゼン……って。つまり王室の関係者なの?」
 レオニートの名乗りを思い出して、リリィはハタと気づく。そして下を向くと、レオニートはリリィの手の甲に口づけをしていた。

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