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【22話】イケニエ王子に甘く溺愛されて、呪いの魔女は戸惑い中!

作品詳細

第四章

 レオニートと、大変な関係を結んでしまった……!
 いつもの作業部屋で、リリィはひとり頭を抱える。
 実はあの一回では終わらなかった。さらに二回ほどしけ込んでしまったのだ。レオニートは、リリィの催淫効果が続く限り、惜しみなく愛情を注ぎ続けた。
 そして、効果が切れる前に失神してしまったのだが……。
 ハッと目覚めると、ニコニコ笑顔のレオニートがいて、汚れたシーツや服はすべて綺麗に洗濯されていた。
 彼と性交をしてしまうなんて、そんなことは想定していなかった。
 レオニートはあくまで一時的な客にすぎない。そろそろ、自分の跡を継ぐ子供を作らねばとは思っていたが、それとこれとは別問題だ。
 あまりに準備ができていないし、心構えもない。にもかかわらず、三回以上も精を放たれ――。
 ぐ、とリリィの顔が歪んだ。
 しかも、しかもだ。これが一番複雑な気持ちに陥るのだが、レオニートと性交したことによって、リリィの魔力は倍増してしまった。
『閉ざせ氷の門。此より開かれるは小春の陽』
 呪文を唱えた途端、用意していた秘薬が、今までとは違う魔法反応を起こす。
 完璧な手応え。文句のつけようがないほどの美しい術式。
 宙に浮かび上がる文様はいっそ芸術的なできばえだが、しかし、リリィはげんなりとため息をついた。
「天気を操る魔法なんて、今まで一度も成功した試しがなかったのに」
 完成した魔法石を摘まんで眺める。石の中は、陽の光を詰め込んだような明るさを放っていた。間違いなく成功の証である。
 使い切りではあるが、自在に天気を操ることができる魔法石。難易度はもちろん高く、歴代の魔女でも成功させた者はリリィを含めてたったふたりだ。
「男の精液が魔力に変換されると知識だけでは知っていたけれど、ここまでなんてね」
 精液とは、言わば生命力の固まりだ。それをリリィの胎内に通すことで、己の魔力に変えることができる。
 だが、本来は精液からの魔力変換は微々たるもの……と前代魔女である母は言っていた。もし、精液から魔力が無尽蔵に変換されるなら、歴代の魔女はもっと男性を利用していただろう。しかし実際は、魔女にとって男性とは、子を成すための道具でしかなかった。
 おそらくだが、リリィの魔力にレオニートの精は大変馴染みやすいのだろう。つまり相性が良いということだ。むしろ良すぎて、複雑なくらいだ。
「困ったなあ」
 リリィは頭を掻いて、完成した魔法石を宝石箱に入れた。
 レオニートと性交した次の日から、身体に巡る魔力がやけに活気づいていることに気づき、この状態なら作れるかもしれないと思った魔法石。
 今のところ、失敗知らずだ。先ほど作ったのは吹雪を止める魔法石だが、他にも大雨を降らせる石や、雷を呼ぶ石まで作ることができた。
 リリィが自在に天気を操れるようになったら、ローゼン王国の作物が不作に悩まされることも少なくなるし、吹雪続きによる凍死者も減る。つまり、いいことずくめになるのだ。
 でも、それでもと、リリィは唇を噛む。
 ――そろそろ、潮時かもしれない。レオニートを手放すのなら、今しかないだろう。
 リリィは、自分の心に間違いなく寂しい気持ちがあることを自覚していた。
 魔力が増強されたというのは、副次的な結果にすぎない。
 母が亡くなってから、ずっとひとりだった。魔女は生涯孤独でいなければならないから、時折寂しさを覚えても、耐えていくはずだった。
 そんなリリィのもとにやってきたレオニートは、少しずつ、しかし確実に、リリィの心の中に侵入していった。
 朝に、パンを焼く香ばしい匂いを感じて目を醒ます時。
 作業室で魔法を使っている時に、傍で見守ってくれるレオニートの優しい目。
 孤独で地味な薬草摘みをしている時、美しい冬の花を見つけたと教えてくれる彼の声。
 たった一ヶ月足らずであるのに、驚くほど、レオニートはリリィの生活に浸透していた。
 そして、いつも近くにいてくれるレオニートに安堵にも似た気持ちを抱き始めた。
 離したくない。
 ひとりに戻りたくない。
 間違いなく、リリィは今この時を幸せに感じている。だからこそダメだと自分を律した。
 『くらやみの森』に棲む呪われた魔女は、孤独でいなければならないから。
 ――リリィは、レオニートを手放すことを決意した。

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