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【15話】イケニエ王子に甘く溺愛されて、呪いの魔女は戸惑い中!

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「ふぅん、セテラって、香茶に入れるとこんなにも香りがよくなるのね」
 椅子に座ってカップを手に持ち、クンクンと鼻をひくつかせる。確かに普段飲んでいる香茶よりもずっと甘い香りだ。思わずうっとりしてしまう。
「王城ではこれが好まれていましたね。もっとも、あそこで飲むセテラの香茶は、花びらを乾燥させたものですが」
「セテラは季節限定の植物だから、年中飲もうとしたらそうするしかないわね」
 たっぷりと香りを楽しんでから、こくこくと香茶を飲む。
 薬の調合で疲れた身体に、茶の温もりと優しい甘さが染み渡る。
「うう~ん、美味しい。家畜乳と花蜜入りで、味はまろやかだし、甘さも丁度いいわ」
「ビスケットも焼きましたから、よかったらどうぞ」
 焼きたての菓子を勧められて、リリィは素直にビスケットを頬張った。
「あなたは、つくづく料理がうまいわね。王子様とは思えないわ」
「お褒めにあずかり光栄です」
 ニコニコとレオニートは微笑み、香茶をこくりと飲んだ。
(本当に変な人間だわ)
 カリリとビスケットを食べつつ、リリィはなんとなくレオニートを観察する。
 庶子という話だから、市井に住んでいたころは普通の子供だったのだろう。多忙で持病のある母のため、家事が得意になったというのも理解できる。
 だが、それにしても王子らしくないというか……。いや、滲み出る高貴さや、口調の丁寧さだけを見ると立派な王子様なのだが。
(でも、私は王室の人間といえばあの人しか知らないから、レオニートみたいな人間もいるのかもしれないわ)
 以前、リリィは司教を通じて王室の人間と知り合ったことがある。
 本来はあってはならないことなのだが、ローゼン王国の存亡をかけた願望と言われてしまうと、話を聞かざるを得ない。
 水晶玉越しで、王室の人間の話を聞いてみると、その願望はもっともだと思ったので、リリィは特別に王室の依頼を受けた。
 しかしその時のことを思い出すと、自然と顔が苦々しいものに変わる。
(あの人間……。結局は私利私欲を満たすことが目的だったのかしら)
 はあ、とため息をつく。
 いつの世も、俗世は汚らしい欲と傲慢さに満ちている。こんな国を守る必要はないのではと思う時もあるけれど、これが神と魔女の盟約だから仕方がない。
 リリィは、しばらく黙って物思いにふけていた。すると、ふと……身体が妙に熱く、頬が火照っていることに気づく。
 温かい香茶を飲んだからだろうか。いや、それにしては、いつもよりずっと頭がぼうっとする、ような。
「なんだろ……?」
 はあ、と息を吐くと、妙に艶やかだった。無性に胸の内がザワザワする。
 おかしい。自分の身体が異常状態を訴えている。
 体中から力がなくなって、思わずテーブルに伏せると、目の前に座るレオニートもリリィと同じように気だるげな様子で額を押さえていた。
「リリィ、なぜでしょうか。身体がとても熱いのです」
「私も……たまらないくらい、熱い……」
 ぼやけた視界でレオニートを見ると、ドキンと心が高鳴った。その鼓動は速さを増すばかりで、留まるところを知らない。
(あれ……どうしてレオニートを見るだけで、こんなに身体がうずうずするの?)
 熱いため息を吐いて、くらくらする頭を押さえて。
 そこでリリィは、恐ろしい可能性に気が付いた。
「れ、レオニート……、あなたもしかして、セテラの花だけじゃなく、茎も煎じてしまった?」
 荒い息を吐きながら訊ねると、レオニートが気だるげに顔を上げた。
 その表情は、どんな女性でも魅了できそうなほど色っぽく、艶めかしい。
「茎? そういえば、ええ、一緒に煎じましたね……」
「あぁ……そういうこと……。やってしまったわね……」
 ようやく原因を理解して、リリィはがくりと頭を垂れた。身体の熱が急激に上がって、やけに息苦しい。
 疼く衝動に駆られる気持ちを抑えながら、リリィはレオニートを見た。
「せ、セテラという植物はね、花は問題ないけれど、茎に催淫効果があるのよ」
「く、茎に……そんな効果が?」
「そうなのよ! 煎じて飲んだら、これくらいの効果にはなるわ。本来は、乾かして、粉末にして、木の実と混ぜたものを家畜に食べさせることで、効率のよい……繁殖行動を……促す、はあ……っ」
 限界に近づいたリリィは、机に突っ伏した。

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