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【13話】イケニエ王子に甘く溺愛されて、呪いの魔女は戸惑い中!

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 王室の血を引いているとはいえ、育ちが王城の外であれば、わんぱくに過ごしていてもおかしくない。
 今のレオニートはどこから見ても高貴さが溢れる王子様だから、やんちゃをしていた子供時代がまったく想像できないのだが。
「まあ、おかげで採取が早く済んだわ。手伝ってくれてありがとう」
 連れていったところで役に立たないだろうと思っていたが、役に立たないどころか有能すぎて、リリィが計算していたよりもずっと早く薬が出来上がりそうだ。
 素直に礼を口にすると、レオニートは嬉しそうに目を細める。
「いいえ。リリィのお役に立てることが、私の幸せですから」
「あ、あなたねえ……」
 口を開けば甘いことを述べるレオニートに、リリィはがっくりと肩を落とす。そしてバサッとローブの裾を翻して、家に向かった。
「どうせ王城でもそんな言動を繰り返して、数々の女性を落としたのでしょうけど、こんなところで言っても私しかいないから意味ないわよ」
「そんな言動とは、どんな言動でしょう?」
「はあ? 無自覚だったの?」
 リリィはレオニートに顔を向けて、思い切り呆れた顔をした。
「初めて会った日から、可愛いだの花のようだの、あなたは始終私に甘い言葉をかけているじゃない。はっきり言ってめちゃくちゃ恥ずかしいのよ? あれが挨拶代わりのお世辞なら、即刻やめてほしいんだけど」
「それは無理です」
「そう……無理……なんでよ!?」
 あまりにレオニートが即答するものだから、つい言葉を繰り返してしまったが、リリィは慌てて声を荒げる。すると、レオニートは輝くような極上の笑みを浮かべた。
「ええ、だって本心の言葉ですから」
「う、ふぇっ!?」
 爽やかに何をさらっと言っているのか。思わずリリィはレオニートの隣から飛び退いた。少し遅れた形で、薬草の入ったカゴがどさっと雪の上に落ちる。
 レオニートはそのカゴを持ち上げると片手で抱えて、もう片方の手をリリィに差し伸べた。
「心に溢れる気持ちが言葉となって零れているだけなので、これをやめるということは、私に思考するなと言っているも同然です。だから、無理ですね。だってあなたは可愛くて素敵な女性ですから」
「ひょ……」
 リリィの身体は石にでもなったように固まり、思考すらも停止してしまう。
 な、なんだこいつは。日に日に糖度が増しているというか、このままではいけないという焦燥感に駆られるのだが、気のせいだろうか。
 内心リリィが戦慄するも、レオニートはにこやかにその手を取った。
「さあ、帰りましょう。魔法の加護があるとはいえ、身体がすっかり冷えていますよ。家で温かい飲み物を入れましょう」
 のんびりした口調で言って、未だ固まるリリィを引きずるようにレオニートは家に戻っていく。
 ずっとひとりで暮らし、ほとんど人間と関わることなく生きてきたリリィは、レオニートが言う言葉のひとつひとつにいちいち動揺してしまう。
(まったく、とんでもない生け贄だわ……)
 誰だ、こんな男を棺に入れた馬鹿者は。見つけ次第、即刻、尻にそよ風を感じる呪いをかけてやるとリリィは心に決めた。

 家に戻って、リリィは早速薬の調合を始めた。
 なぜかちゃっかりと作業室に待機していたレオニートにため息をつきながら、彼にも手伝ってもらいつつ、薬の調合を黙々と進める。
 薬草をすり潰したものと、在庫の秘薬を諸々、そして煮詰めたビスタケを混ぜた薬湯。そしてリリィが魔法をかける。
『永久成る癒やしは淡雪の如く』
 リリィが言葉を紡いだ途端、魔法は成立した。濁った色の薬湯は澄んだ清水のように透き通り、ほのかな紅色をした飲み薬に変貌する。
「つくづく、リリィの魔法の神秘性には驚かされますね。これは、薬師では作れない魔女の薬なんでしょう?」
「そうよ。魔女は魔力を帯びるもの。普通の人間は魔力を体内に溜めることができないの。逆に言うと、魔力をため込める特異体質の人間が魔女になっているということね」
「それが代々続く魔女の系譜……ということですか?」
 小瓶に薬を注ぎつつ、レオニートが訊ねた。

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