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【1話】イケニエ王子に甘く溺愛されて、呪いの魔女は戸惑い中!

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プロローグ

 大陸の北方に、広大な領地を持つローゼン王国がある。
 国を囲むようにそびえる氷の山は、まるで天を貫かんとするほど、険しい。それは、さながら自然の要塞だ。
 その地の風土は、ほとんどが氷と雪に閉ざされているものの、不思議と人々が住む集落だけは、温暖な気候に恵まれていた。
 そんな国で、年に一度、祭りを行う風習がある。
 豊穣祭。王国に住まう民は、この不毛な大地にも等しく神の恵みがあることを心から感謝し、穀物や野菜をふんだんに使った料理を振る舞う。
 そして『この国に災いをもたらさないように』と、生け贄を用意するのだ。
 ローゼン王国の中で、最も北に存在する森の名は『くらやみの森』。
 頬を叩く雪と、氷と化した木々に覆われた森は、陽の光を一切拒む暗闇に覆われている。
 そこには呪われた魔女が棲んでいて、豊穣祭において生け贄を捧げるのはローゼン王国の重要な習わしだった。
 推定年齢はゆうに千を越える、不死身の魔女。その名はリリィフェオドラ。
 歴史書の創世記を紐解けば、太古の時代は神が世界を支配していたという。その神が人間に支配権を譲る前から、呪われた魔女は存在していたらしい。
 伝説によると、神代の奇跡をその手に持つ正真正銘の魔女は、その奇跡を常にローゼン王国に向けている。
 生け贄を捧げ続ければ、不毛の大地に緑を育ませる奇跡を。
 生け贄を捧げなければ、凍てついた吐息でローゼン王国は一日で氷漬けとなる。
 ただの言い伝え、世迷い言だと言う人間も少なくない。だが、誰もが『やめよう』とは口にしなかった。
 なぜなら、あの『くらやみの森』に呪われた魔女が棲んでいるのは事実だからだ。
 得体の知れない不死身の魔女を敵に回す勇気のある者は、ひとりとして――いなかった。

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