【7話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

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「金額が大きいから、細心の注意を払うべきだ。それに、ここはうちの取引先のなかでも、かなりの上得意だろう? クレームが入るようなことになったら困る」
「気をつけます。すみません」
 肩を落として謝るしかなく、隼人が私から視線をそらしたタイミングで自席へ戻った。
 先週もミスをして注意をされたのに、二週続けてしまっては言い訳もできない。思わず深いため息をついた私に、由紀ちゃんが声をかけてきた。
「佳穂先輩、落ち込まないでください。課長が変わったことで、一課自体がまだ落ち着いていないですし」
「ありがとう。なんだか、注意力散漫になっていたみたい」
 苦笑を見せると、由紀ちゃんは小さく首を横に振った。だけど、本当に気をつけなくてはいけない。
 隼人との再会に、落ち着かない気持ちでいたことは確かだから。それにしても、先週は思いつめたようだった絵美が、今週は普段の彼女に戻って張り切っている。
 ただ、他課に出向くことは減ってきたけれど、相変わらず情報は持っているようで、時折隼人へ意見をしに行っている。
 でも隼人は、絵美の言葉を聞くだけで実行に移すとか、取り入れようとはしなかった。
 絵美に対する態度を見ても、二人が元恋人同士だったとは誰も想像できないと思う。そう考えたら、隼人のポーカーフェイスは凄いとしか言いようがなかった。
 私とも絵美とも、距離を置きたいのかもしれない。さすがに、私が子供の頃仲がよかった佳穂だと気づいているだろうけれど、隼人からなにも声かけがない以上、そう思うしかなかった。
 隼人のことは気にせず、仕事に打ち込もう。彼から指摘された発注ミスを修正し終えて、他の業務にあたっていると、裕太が外回りから帰ってきた。
「あ、お帰り」
 今日は、いつもより早く戻っているみたい。まだ十五時だ。
「ただいま。なあ、佳穂。ちょっといいか?」
「え?」
 裕太は営業鞄をデスクに置くなり、私を手招きした。それは、明らかに部屋を出ろと言っている。
 いったい、業務中になんだろう。仕事の話なら、ここですればいいのに。
 そう不審に思いながらも、裕太に従う。彼のあとについていくと、オフィスを出て廊下奥の非常階段へ着いた。
「裕太、いったいなに?」
 いくら会社とはいえ、二人きりになるのは緊張する。すると、裕太が声を潜めて言った。
「歓迎会だよ。田辺課長の歓迎会を、俺たちで企画しないか?」
「歓迎会!? そういえば、まだ話に出ていないよね?」
「そうなんだよ。なんでも、課長から辞退の申し出があったとか聞いたけど、そういうわけにもいかないだろう?」
「うん……。たしかに、裕太の言うとおりかも」
 隼人が歓迎会を辞退しただなんて、これまで持っていた彼の印象とはだいぶ違う。
 子供の頃の隼人は、友達が多くて、みんなでワイワイ騒ぐのが好きなタイプだったのに。
 アメリカへ行って大人になって、人柄も変わってしまったのかな。私だけでなく、会社の人たちとも距離を置きたがっているとか?
 そんなことを考えたら、とても切なくなってきた。
「だろ? さすがに、部下の俺たちが無視をするわけにもいかないから。他の課も、一応声かけてみるから。たぶん、女子がこぞって来たがるだろうな」
 ハハハと笑う裕太に、私も微笑んだ。裕太の素敵なところは、こういうところだ。
 たしかにこの話なら、オフィスではできない。隼人に聞かれてはいけないから。
「じゃあ、課長の都合を聞かないといけないわね。日にちは、そのあとってことでいい?」
「ああ。それがいいな。じゃあ、佳穂。お前から聞いておいてくれるか? 俺、これからまたアポなんだ。早いほうがいいと思うし」
「えっ? 私が?」
「そうだよ。あと、好きな料理も聞いておいて。そのほうが、店の候補も絞れるし」
 裕太はそれだけ言うと、早々に扉を開ける。私も彼と一緒にオフィスへ戻ったけれど、動揺でいっぱいだった。
 私から隼人へ、歓迎会の話をするってことよね? 声をかけるのも緊張する。それに、いつどのタイミングで話そう。
 仕事を再開してからも、隼人が気になってしまい、チラチラと彼のデスクへ視線を向けていた。
 緊張するけれど、早めに隼人の都合を聞かないとお店が決められない。意を決して彼のデスクへ行くと、声をかけた。
「あの、田辺課長。お伺いしたいことがあるのですが」
 すると、隼人はパソコンを打つ手を止めて顔を上げた。視線が重なると、ドキドキする気持ちが加速する。

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