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【38話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

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「はい、今はニューヨークですが、帰国したらおじさんとおばさんに会いたいと言っていました。本当にご無沙汰をしています」
 隼人も、懐かしそうに両親を見ている。大きな窓がある開放感溢れるリビングに通された私たちは、クリーム色のソファに腰を下ろした。
「それにしても、二人が同じ会社だったなんて、びっくりね」
 母は、手作りのクッキーと紅茶を差し出しながら、楽しそうに声をかけた。
 すると、父は大きく頷いた。
「しかも、佳穂の上司としてだろう? 隼人くん、さすがだな」
「いえ。佳穂さんにも、他の社員にも助けてもらうばかりです」
「そんな、謙遜ばかりして。隼人くんが優秀だったのは、私たちも知っているのよ」
 上機嫌な父と母は、昔話をしながら、隼人と笑い合っている。こんな光景、いつかもあったなと懐かしく思いながら、やり取りを眺めていた。
 そして、区切りがついたところで隼人がソファに座り直し、真面目な顔つきになる。その態度に、両親もどこか緊張した面持ちになった。もちろん、私も急にドキドキしてきた。
「おじさん、おばさん。十年ぶりにお会いしてすぐ、このようなお願いは厚かましいかもしれませんが、佳穂さんと結婚をさせてください」
 頭を下げた隼人を見て、私も慌てて同じようにする。両親は、さすがに結婚話が出るとは思っていなかっただろうから、かなり動揺しているに違いない。
 緊張感でいっぱいになっていると、両親が大きく息を吐いたのが分かった。
「いやあ、安心したよ。隼人くんと交際しているとは聞いていたが、将来をどうするのか心配だったものでね」
 父の安堵の声に、私たちは頭を上げる。そして、隼人が身を乗り出すように父に尋ねた。
「それは、僕たちの結婚を、認めてくれるということですか?」
 こんなにあっさり許してもらえるとは思っていなかったのか、隼人は目を丸くしている。
 すると、頷く父にフォローするように、母も口を開いた。
「もちろんよ。隼人くんのことは、小さな頃から知っているし、とても安心だわ。佳穂をよろしくね」
「はい! ありがとうございます」
「ありがとう、お父さん、お母さん」
 二人で、顔を見合わせて微笑んでいると、父が心配そうに聞いてきた。
「それで、隼人くんのご両親は、どんな反応かね? 佳穂でいいんだろうか?」
「はい。両親も、とても喜んでいて、むしろ、佳穂さんとの結婚を、後押ししようとしていました」
「そうか、それならよかった」
 父も母もホッとして、また空気は和やかになる。私も、初めて聞いて隼人のご両親の思いが、とても嬉しかった。
「僕の両親は、年明けまで帰ってこないんです。だから、佳穂さんとの結婚は、早くても来春にはなりそうなのですが……」
「そういうことなら、私たちの意見は必要ない。隼人くんのご両親のご意向と、二人の思いで決めたらいい」
「おじさん、ありがとうございます。そして、重ねてお願いがあるのですが……」
 隼人は、今度はなにを言おうとしているのだろう。しかも、どうやら話しにくい内容らしく、両親を窺い見ている。
 私も両親も、隼人の話の内容が分からなくて首を傾げた。
「佳穂さんと、同棲をさせていただけませんか? 彼女とは、ずっと一緒にいたくて」
 そのお願いは、私にも予想外で、思わず「ええっ?」と叫んでしまった。
「ハハハ。それは、佳穂の気持ち次第だ。きみたちは、もう大人なのだし、結婚を予定しているなら、うるさく言わないよ」
 豪快に笑う父の隣で、母もクスクス笑っている。私は、どこか恥ずかしかったけれど、隼人の強い想いが分かって、やっぱり嬉しかった──。

「それでは、今日はありがとうございました」
「いいえ。今度は、夕食を食べにいらっしゃいね」
「はい、そうします。それでは、失礼します」
 夕方になり、私たちは実家をあとにする。エレベーターで降りながら、私は彼を見つめた。
「隼人ってば、急に同棲だなんて言うから、ビックリしちゃったじゃない」
「ごめん、ごめん。でも、どうしても許可をいただきたくてさ。佳穂はどう? 俺と、あのマンションで一緒に暮らさないか?」
 優しく見つめられると、なにも言えなくなってしまう。驚きはしたけれど、まったく抵抗感はなかった。
「うん……。私だって、ずっと一緒にいたいから」
 そっと、隼人の肩に頭をもたれかける。すると、あっという間に一階に着き、エレベーターが開いてしまった。
 もう少し、隼人と甘い時間に浸りたかったな。がっかりしながら降りると、彼に手を握られた。

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