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【33話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

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「ありがとう、由紀ちゃん。そうそう、早めに帰るのよ?」
「え? 佳穂先輩?」
 戸惑いを見せる由紀ちゃんを置いて、私はシュレッダーのある部屋へ向かう。
 私たちの書類は、機密情報が満載なこともあり、自分でシュレッダーをかけることはしない。
 課ごとに段ボールに入れて、それを業者に破棄してもらうことになっている。
 ただし、パンフレットのような個人情報が載っていないものは例外だ。
 段ボールには、その中に入っている書類が、いつのものか分かるように、日付が書かれている。
 たしか、まだ先週の初めの話だから、そんなに奥にはないはずだ。
 一課の破棄箱を見つけると、日付を確認する。すると、一番手前に先週分があった。
「これだわ」
 ガムテープをはがし、中身を確認する。量が膨大なため、時間がかかりそうだ。
 それでも、なんとしてでも見つけなければいけない。すると、ドアがノックされて隼人が入ってきた。
「隼人」
 思わず名前で呼んでしまい、慌てて口を押える。彼は鍵を閉めて、ため息をついた。
「大丈夫、誰もいない。それより、お前がシュレッダー室に血相変えて向かったって聞いて、様子を見にきたんだ」
「そうだったの……。ありがとう」
 隼人に話してくれたのは、間違いなく由紀ちゃんだ。彼女の優しさには、本当に助けられる。
「いったい、なにがあったんだ?」
「それがね……」
 由紀ちゃんから聞いた話と、自分の考えを話すと、隼人の顔は険しくなった。
「俺も、探すのを手伝う。小さな紙なのか?」
「うん。メモ帳だったらしいから、手のひらサイズくらい」
「分かった。じゃあ、探そう」
 隼人はスーツのジャケットを脱ぐと、ワイシャツの袖をまくる。そんな彼の姿に、私はおずおずと尋ねた。
「ねえ、他に仕事があるんじゃないの? 大丈夫?」
「大丈夫。それより、早く見つけよう」
「う、うん……」
 隼人と手分けして、破棄箱の中を探ると、二十分ほどしてメモが見つかった。
 由紀ちゃんの言うとおり、裕太の筆跡でクライアント名、それに発注数が書かれている。
 しかも、≪佳穂、発注をお願い≫と、裕太の名前と共に書かれていて、間違いなく私に依頼するメモだった。
「私も裕太も、口頭で伝え合ったと思い込んでいたの……」
「あの日は、忙しかったからな。記憶が混同していたんだろう。それに、これ……」
 隼人がゆっくり指さしたのは、問題の発注数だ。赤ペンで、ゼロが二つ消されている。
「これなら、佳穂がためらいなく発注しても、おかしくない。赤ペンで消されているんだ。間違えるなと、言われているようなものだな」
「まさか、これを絵美が……? でも、証拠がないわ」
 由紀ちゃんが目撃していると言っても、でたらめだと反撃されたら返しようがない。
 だけど、隼人は自信たっぷりに言った。
「大丈夫。きっと、小畑さんがやったことだと、証明できるよ」
「どうして?」
「これ、赤ペンといっても、朱色だ。変わった色だし、みんなが持っているものじゃないだろうな」
「たしかに……。でも、大丈夫かな」
「大丈夫だよ。ただし、佳穂。もしものときは、俺たちの関係を話してもいいか?」
 急に話が違う方向にいき、若干戸惑う。この問題と、私たちの交際を大っぴらにすることは関係あるのだろうか。
「意味が分からないけど……。でも、それでいい。私も、悩んでいたの。裕太に対しても、絵美に対しても、真実を話すのが誠実なんじゃないかって」
「そうだな。小畑さんの最近の行動は、お前に対する嫌がらせにしか見えないし、エスカレートしている」
「うん……。それに、裕太のことも」
 彼を恋愛対象としては見られないけれど、大事な仲間であることには間違いない。
 すると、隼人は小さく頷いた。
「そうだな。じゃあ、さっそく明日、小畑さんに確認をするが、佳穂も小松くんにも同席してもらう」
「分かったわ……」
 私たちも一緒で、絵美は素直に認めるだろうか。だけど、隼人には考えがあってのことなのだろうし、彼の意見に従おう。
 翌日が怖いけれど、これで裕太の名誉が回復できるなら、それがいい。絵美は、なんて答えるだろう──。

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