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【32話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

「私ができなくても、佳穂がすればいいじゃない。一課の仕事は、みんなでやるべきよ」
 絵美は、なにがなんでも嫌がらせをしたいらしい。今までも、こういうことがあったけれど、最近はさらに拍車がかかっている。
 きっと、私が隼人の家にいたから。絵美は、そのことで、嫌がらせをしているに違いない。
「佳穂先輩、私がしますので……」
 張り詰めた空気を察してか、由紀ちゃんがそう申し出てくれた。だけど、彼女にだって仕事がある。
「いいのよ、由紀ちゃん。私たち、業務を多く抱えてるし。一課の仕事は、みんなでやるべきなんだって。だから、絵美にお返しするわ」
 重いパンフレットの山を抱えると、それを絵美のデスクへ置いた。ドサッと鈍い音がする。
「ちょ、ちょっと。なにするのよ」
 絵美は、怖いくらいの険しい顔で私を睨んでいる。そんな彼女へ、私はニコリと笑顔を向けた。
「みんなでやるって言ったのは、絵美のほうよ」
 切り返すと、彼女は黙ってただ私を睨んでいる。その目は、本当に私を憎らしく思っているようだった。
「あっそ。それなら、佳穂の裏の顔を、みんなにバラしてやるから」
 それだけ言った絵美は、パンフレットを抱えてオフィスの奥へと消えていった。
 裏の顔って、人聞きの悪い言い方で腹が立つ。だけど、それが隼人とのことを言っていると分かるから、焦る気持ちも込み上げた。
「裏の顔だなんて、小畑さんって、ちょっと行き過ぎですよね」
 由紀ちゃんは、嫌悪感いっぱいの表情で、絵美が消えた部屋のほうを見ている。
 シュレッダーが置かれている場所だから、本当に破棄しにいったのだろう。
「私は、大丈夫だから」
 由紀ちゃんに笑みを向けると、彼女は小さく頷いて業務を再開させた。
 そして、夕方には、私のミスが一課に報告された。クライアントは、かなり激怒しているらしく、取引は中止となってしまった。
 ただ、海外の工場からの納品はされるらしく、それは行き場のない商品となってしまう。
 損害も大きく、私と裕太の処分は後日に持ち越されてしまった。噂は、営業部内に一気に広まり、夜には裕太は左遷だろうということ、私は数字が動かない部署へ異動させられるだろうということが、囁かれていた。
「佳穂先輩、どうかあまりご自分を責めないでくださいね」
 残業中、由紀ちゃんがそう声をかけてくれた。本当に心配しているのが分かり、後輩にまで気を遣わせていることが情けなく思える。
「ありがとう。一課の足を引っ張ってごめんね」
「なにを言うんですか。佳穂先輩や、小松さんがいてくれたから、一課はずっと頑張れたんじゃないですか」
「そうかな……」
 一生懸命、訴えてくれる由紀ちゃんに少し癒される。私はともかく、将来を期待されている裕太までが、左遷の噂が立ち、いたたまれない。
 それに、赴任してきたばかりの隼人にも、大迷惑をかけてしまった。今回の件で、隼人も監督責任を問われるかもしれないと、言われている。
 こんなはずじゃなかったのにと、気を緩めると涙が浮かびそうだ。
「それにしても、小畑さんもダブルチェックしてくれていたのに、発注数が違っただなんて、もともとが難しい案件だったんじゃないんですか?」
 口を尖らせる由紀ちゃんに、私は目を丸くした。
「ちょっと待って。どういうこと? 絵美のダブルチェックって、それどういう意味?」
「え? だって、あのクライアントの発注って、小畑さんも確認するものだったんですよね? 小松さんが先輩に渡した紙を、小畑さんが確認していたんですよ」
 由紀ちゃんが言うには、その日、絵美から依頼された業務に追われていた私に、裕太が発注数を書いたメモをデスクに置いたらしい。
 私は、それに対して返事をしたらしいのだけれど、全然覚えていなかった。
 その後、私がなにかの用事で席を外したとき、絵美がそのメモを取ったらしい。
『発注数を確認しておかないと』と言って。
 そして、なにかを書き込むところを、由紀ちゃんは見ていたらしい。そして、そのメモを私のデスクへ返して、私はそのあと発注をかけたということだった。
「あの日、佳穂先輩も小松さんも、かなりお忙しそうでしたもんね。記憶が、曖昧になっているんですよ」
 由紀ちゃんにそう言われ、心がざわつく。もしかして、発注数が故意に変えられていたということはないの?
 でも、絵美がそこまでするとは思いたくない。ただ、これは裕太の名誉も関わっていること。
 確認しなくてはいけない。絵美はもう退社しているから、問い詰めることもできない。
 とにかく、破棄箱が置いてある部屋へ行って確かめよう。

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