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【30話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

≪佳穂、小畑さんの仕事は、今日みたいに断ったらいい≫
 その夜、寝支度を整えたところで、隼人からそんなメールがきていた。どうやら、絵美とのやり取りを、聞いていたらしい。
 でも、裕太のことには触れてこないから、彼との会話は聞こえていなかったのだろう。
 それにホッとしつつ、不安はどんどん大きくなっていく。裕太は思ったとおり、今日は帰社をしなかった。
 発注したミスは、どうするのだろう。あのまま、というわけにはいかないし。
 それに、私のミスを、自分のせいだと思っている裕太にも申し訳ない。彼の気持ちに応えられない理由を、きちんと話せればいいのに。
 もちろん、絵美にも説明したい。彼女にとっては、元カレの家に私がいたのだから、心中穏やかじゃないのは納得できる。
 あのときは、とっさに誤魔化したけれど、本当のことを話すべきだったのだと今なら思える。
 もうちょっと早く、隼人との関係を話せればいいのに。私は、部署異動にはなるだろうけれど、それでも今の会社で働けることには変わりない。
 こんなに周りを巻き込むくらいなら、公表してしまいたいな。近いうち、隼人に相談をしてみようか。
 彼がどういう反応をするか、不安はあるけれど、このままではいけない気がする──。

「小松くん、ちょっといいか。聞きたいことがあるんだが」
 翌日、お昼前になり、隼人が裕太を呼び出した。今日は、午前中は外回りがないようで、裕太はオフィスにいる。
 そういえば、ずっと隼人は電話だの離席だので、今日は朝からバタバタしているようだった。
 彼の険しい表情からも、よくないことだろうと想像できた。
「分かりました」
 裕太は素直に答えると、立ち上がり隼人とオフィスの奥へ行く。いつも、私が隼人と二人になる場所だ。
 どこか不安に思いながら、二人を目で追っていると、由紀ちゃんが声をかけてきた。
「小松さん、なんでも大きなミスをしたらしいですよ?」
「大きなミス?」
 由紀ちゃんの言葉に、ギクッとする。昨日、判明した発注ミスのことだろうか。
 でも、まだ商品が到着するわけがないし、クライアントからクレームが入るとは考えにくい。
 それでも不安が拭いきれないまま、数十分が経つ。隼人と裕太は、一度応接室を出て、さらに奥へと進んでいる。
 向かった先は、営業部長のデスクだった。隼人と部長デスクまで行くなんて、やっぱり普通のミスじゃない。
 思わず立ち上がりかけると、由紀ちゃんに怪訝な顔をされた。
「佳穂先輩、どうかしたんですか?」
「あ、ううん。なんでもない」
 隼人と裕太の話が、あのミスのこととは限らないのだから、私が口を出すわけにはいかない。
 だけど、もしあのことなら? 裕太は、私を庇いそうで不安になった。せめて、彼が戻ってきたら聞いてみよう。
 心ここにあらずで、業務を進めてしまっている。またミスがないように、それだけは気をつけなくては。
 結局、裕太が戻ってきたのは約四十分後。落ち込んでいる様子はなく、いつものように静かに仕事を再開させている。
 そんな彼の背中を小さく突くと、裕太は振り向いて私を見上げた。
「なに?」
「ちょっと、いい? 仕事のことで、聞きたいことがあって」
「ああ、もちろん。どうかした?」
 ここで話せる内容ではないから、裕太をオフィスの外へ促す。幸い、由紀ちゃんや絵美、その他一課の人たちは、全然私たちを気にしていないようだった。
 ただ、隼人にだけは、視線を向ける勇気がなかったけれど。
 フロア奥にある非常扉を開けると、私はそこに裕太を引っ張り込んだ。隼人の歓迎会のことで、会話をした場所だ。
「裕太、さっきの課長の話はなんだったの?」
 単刀直入に聞くと、彼は視線を泳がせた。やっぱり、あのミスのことなのだと確信する。
「もう、クライアントに分かったっていうこと?」
「いや……。まさか。まだ、商品は到着していない」
「だったら、なんで田辺課長から呼び出されたの?」
 問い詰めるように聞くと、彼は一度口を堅く噤んだあと、ぽつりと話してくれた。
「それは、俺が昨日クライアント先に出向いて、発注ミスを詫びたから。まあ、当然先方は激怒して、今朝課長に電話をしたらしいな」
「ちょっと、待って。それなら、どうして私が呼び出されていないの? ミスをしたのは、そもそも私よ?」
 責め立てるように聞く私は、自分でも自覚できるほどに動揺している。だけど裕太は、なぜだかとても冷静だった。

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