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【27話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

 テレビでは、バラエティ番組をやっていて、ゲストの笑い声が響いているほどなのに、ちっとも楽しくない。
 重い気分でいると、お風呂から出てきた隼人が、私の隣に座った。
「あれ? なんか、佳穂落ち込んでないか? 俺が風呂に入ってる間に、なにかあった?」
 隼人は、私の気持ちの変化にすぐ気づいてくれる。ここで、はぐらかしても、きっと納得してくれないだろうな。
 それに、やっぱり絵美が来たことは、伝えないといけない気がする。彼女の気持ちを、それくらいは汲みたい。
「実は、さっき絵美が訪ねてきたの」
 宅配業者だと勘違いして応答したことや、絵美に嘘をついたことを説明すると、隼人は黙って聞いてくれていた。
「それは、佳穂が気にすることじゃない。小畑さんが、どこまで信じているか分からないけど、お前のことは俺が守る」
 隼人は、優しく私の頭を撫でると、そっと抱きしめた。
「ありがとう、隼人。でも、本当にごめんね」
「謝ることじゃないだろ? 周りに言えない交際を、俺が望んだんだ。責任は、全部俺にある」
 彼が、全力で私を守ろうとしてくれているのが分かって、落ち込んでいた気持ちが少し報われた。
 隼人に、なにもかも責任を負わせることなんてできない。だって、私だって負けないほど、強い想いがあるから。
「責任なら、私も一緒に背負うから。それが、恋人同士でしょ?」
「佳穂……。そうだな。二人で、一緒に守ろう。俺たちの未来を」
「うん」
 隼人に抱きしめられながら、心を落ち着ける。月曜日に、絵美と顔を合わせるのが不安だけれど、どんなことがあっても守り抜こう。
 私は隼人と、もう二度と離れないと決めたのだから。

 月曜日を、こんなに憂鬱に思ったことはない。裕太や絵美と顔を合わせることが、不安で仕方なかった。
「おはよう、佳穂」
 出社をすると一番に、裕太が声をかけてきた。いつもと変わらず明るい口調だ。ニカッとした笑顔を向けてくれ、どこかホッとする。
 それと同時に、変わらない彼の態度が、余計に罪悪感を大きくさせた。
「おはよう、裕太」
 ぎこちないながらも、私も笑みを返す。金曜日は、あんな逃げるように帰ったのに、裕太はいつもと同じように接してくれる。
 それが、とても有難かった。同じく先に出社している隼人が、少しこちらに視線を向けている。きっと、私のことを心配してくれているのだろう。
 日曜の夜には自宅へ帰り、今朝は自分のマンションから出勤している。ほんの少し会わなかっただけなのに、とても心細く感じていた。それでも、いつもどおり自席へ座り、業務の準備をしていると、絵美が出社してきた。
「佳穂、おはよう」
「お、おはよう。絵美……」
 ドキッとしながら、彼女に目を向ける。どんな反応を見せられるか、緊張でいっぱいだったけれど、意外にも絵美は普通だ。
 それとも、これからなにか言われるかな。絵美に警戒心を持ってしまい、そんな自分が嫌になる。
 複雑な思いで、立ち上がったパソコンに目を向け、キーボードを打ち始める。
 すると、目の前に一枚のA四用紙が差し出された。顔を上げると、向かいの絵美が、身を乗り出している。
「これ、すぐに打ち込んでくれない? 一課の営業用フォルダに元があるから」
「えっ? でも、これ急ぎじゃないでしょう?」
 彼女が言ってきたのは、今月の裕太の受注実績をまとめたもの。件数と金額に加え、取引会社の名前もまとめてある。それも、担当者名までも。
 大事なデータに間違いはないけれど、これを今すぐしなければいけないものではない。
 すると、絵美はニコリとした。ただ、目はまったく笑っていない。
「それが、急ぎなのよ。鈴木すずきさんが、すぐに欲しいって」
「鈴木さんが?」
 鈴木さんは、一課の営業マンで、絵美がアシスタントをしている人。温厚な四十代の男性で、ほとんど外回りでオフィスにはいない。
 その鈴木さんが、そんなに急ぎで裕太の実績が欲しいだなんて、どこか信じられない。
「そうなの。いろいろ、営業戦略を練りたいみたいでね。鈴木さんのメールに、送ることになっているから」
 そこまで詳細に理由を述べられては、断るわけにはいかない。本当に鈴木さんが必要としているなら、それは協力しないといけないから。
「分かった。じゃあ、すぐにするわ」
 疑心暗鬼を拭えないけれど、進めていた業務を中断しデータを入力する。三十分ほどで終えると、絵美に声をかけた。
「絵美、終わったから」
「ありがとう、佳穂。さすが、仕事が早いわね」
「そんなことはないわよ」

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