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【25話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

「佳穂、俺と結婚をすることを考えてください。俺は、来年の今頃には、お前と結婚をしたいと思っている」
 温かく、大きな手に包み込まれ、心まで満たされていく。感動という言葉では足りないくらいに、熱い思いでいっぱいになっていた。
「はい……。私は、隼人の奥さんになりたいです。もう、離ればなれには、なりたくない……」
 彼を好きだという想いが溢れてきて、自然と涙が込み上げる。頬を伝う涙を、隼人がそっと拭ってくれた。
「佳穂、愛してる。もう、これからはずっと一緒にいような」
「うん……。隼人、私も愛してる……」
 ぎゅっと抱きしめ合いながら、しばらくその余韻に浸る。そのあと、隼人のマンションへ戻った私たちは、お互いの温もりを感じて眠りについた。隼人の側だと、どうしてこんなにぐっすりと眠れるのだろう──。

 翌日の土曜日は、気持ちがいいくらいに晴れ渡っている。朝食を済ませてから、リビングのドアを全開にした。
 すると、爽やかな風が頬をかすめる。
「んー。気持ちいい。絶好のお掃除日和ね」
 隼人は書斎で、持ち帰りの仕事をしているのに、私だけのんびりしているわけにはいかない。
 廊下の途中にある物入れから掃除機を探してみるけれど、見当たらない。
「あれ? どこにあるんだろう?」
 あまり奥のほうまで触って、なにかを壊してはいけない。仕方ないから、隼人に聞いてみようか。邪魔をしたくなかったけれど。
「隼人、お仕事中にごめんね。ちょっと、いい?」
 書斎のドアをノックしながら声をかけると、すぐに扉が開いた。
「どうした?」
 ちらっと見える部屋には、パソコンとタブレットの両方が置かれている。どちらも起動されているから、それを使って仕事しているんだろう。本当に、大変そうだ。
「あのね、掃除機をかけたいなって思って。どこにある?」
 そう聞くと、隼人は呆れたような顔をした。
「佳穂が、そんなことを考えなくていいよ。少し、ゆっくりしていればいいだろう?」
「そのセリフ、隼人に返すわよ。それに、新婚シュミレーションをするんでしょ? だったら、奥さんらしく掃除をしようかなって思って」
 自分で言いながら、恥ずかしいことを口にしたと思う。だけど、隼人は笑みを浮かべてくれた。
「そういうことを言われると、早く奥さんにしたくなるな。別に、来年にこだわることはないし、年内にでも」
 そう言いながら、隼人は私を抱きしめた。彼が来年と言ったのは、仕事のことも関係していると思う。
 それが分かるから、私はクスクス笑いながら答えた。
「もうちょっと、恋人気分を楽しみたいので、それはお断りします」
「えー? 素っ気ないな。まあ、いっか。一年後には、佳穂は俺のものだし。それと、掃除機ならテレビの横。じゃあ、もうすぐで仕事を終わらせるから」
 隼人はそう言い残し、私の唇に軽いキスを落とすと部屋へ入った。
「テレビの横?」
 掃除機なんてあったっけ? 疑問に思いながらリビングへ戻る。やっぱり、テレビの横に掃除機なんてない。
 と思ったとき、ふと床に目がいった。そこには円盤型の機械が置いてある。
「あっ、もしかして、これ……?」
 それは、今や大人気のお掃除ロボットだ。自宅では、ごく普通の掃除機を使っていたから、この発想はなかった。
「さすが隼人。家電製品も、贅沢なのね」
 ポチっとボタンを押すと、「お掃除を始めます」と女性の声が流れ、フローリングを軽快に回っていく。
 言われなくても、ゆっくりできそうだ。掃除はロボットがやってくれるし、洗濯は終わったし、なにをしようかな。
 隼人の家は、食器は食洗器が、洗濯物は乾燥機がやってくれるから、家事がほとんどない。
 思いのほか時間を持て余した私は、ソファに座ってスマホをいじる。それにしても、本当にいい天気。静かで、風が気持ちよくて、ちょっと眠たくなりそう──。

「佳穂、こんなところで寝てたら、風邪を引くだろう?」
 隼人の声がして目を開けると、苦い顔の彼が見えた。
「あれ……? いつの間に寝てたの?」
 驚いて辺りを見回すと、さっきより陽が高くなっている。どうやら、もうお昼らしい。
「さあ。結構、寝てたんじゃないのか? スマホも落としてるし」
 そう言った隼人は、腰をかがめて床に落ちている私のスマホを取ってくれた。
「やることがなくて、ソファに座ってたら寝てたみたい。この部屋、気持ちいいんだもん」
「それはいいけど、夏じゃないんだし、風邪を引く。あんまり、心配をさせるなよ」
 ため息をつく隼人を見ながら、笑みが浮かんでくる。それは、懐かしい思い出が、蘇ったから。

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