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【2話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

作品詳細

 彼は小学生の頃からの幼なじみで、中学三年生で転校をしていった初恋の人。
 隼人とは同級生で、自宅が徒歩五分圏内と近く、小四のときから中学二年生まで同じクラスだった。それだけに、誰より一番仲がよかった。
 スポーツマンで、社交的な性格の隼人は、可愛らしいルックスも相まって、女子からの人気が高かったっけ。
 四年生のときから彼のことを好きだったけれど、照れくささと友達関係を壊したくなくて、気持ちを伝えられずにいた。
 友達以上、恋人未満。そんなもどかしい関係のまま、中学三年生の春、隼人はお父さんの仕事の都合でアメリカへ行ってしまった。
 隼人が引っ越しをしてから、彼の家は、まったく関係のない人が住んでいる。日本に帰ってくることはあったのか、それも分からないまま、私たちはそこでお別れをして以来、まったく連絡を取っていない。
 というより、連絡先を知らない上、隼人の近況を噂ですら聞くことはなかった。
 今となれば、友達以上恋人未満だと思っていたのは私だけで、隼人は違ったかもしれない。
 でも、彼から好きな女の子の話を聞いたことがなかったから、期待したい気持ちがあった。
 いつかは、この想いを浄化できるときがくるのかな。隼人以外の男性を、好きになれるときがくるのか。
 そうしなければいけないと思うのに、やっぱり気持ちがついていかない──。

「これ、今日中に完成させてくれる?」
 朝一番で絵美がやってきたかと思うと、ひとつのUSBをデスクに置いた。
 郵便物のミス以来、絵美の私に対する風当たりが強くなっている。就業後ギリギリで業務を依頼してきたり、昼休憩中にもわざわざ携帯へ連絡して、業務確認をしてくるほどだ。
 彼女が置いたこのメモリは、私たち営業一課のもので、受発注管理をしているものだった。
「完成って、データを整理しろってこと? それだったら、さすがに今日中には無理だと思う」
 データ量が膨大だし、他にも業務がある。首を横に振った私に、絵美は厳しい眼差しを向けた。
「残業すればできるでしょう? この間の郵便物ミスの穴埋めよ」
「え?」
 この間って、あれはもう三日前のこと。たしかに、絵美の手を煩わせたとは思うけれど、穴埋めと言うにはちょっと酷いんじゃないの?
 さすがに絶句をする私に、由紀ちゃんが見かねたように絵美に声をかけた。
「小畑先輩、間違えたのは私なんです。佳穂先輩は、全然悪くなくて……」
 絵美の迫力にたじろいだ由紀ちゃんは、語尾がほとんど消えている。小さくなった彼女に、絵美は冷たく言い放った。
「それなら、あなたがやる? まだできないでしょ? 新人のくせに首を突っ込まないで」
「ちょっと、絵美。なにも、そんな言い方をしなくてもいいじゃない」
 さすがに黙っていられなかった私は、思わず立ち上がる。すると、由紀ちゃんが控えめに私の腕を引っ張った。
「目立ちますよ。他課の課長たちから、不審に思われますから」
 そうたしなめられて、私は椅子へ座り直した。由紀ちゃんの言うとおりで、一課の課長が不在だったのが幸いなくらい。
 口を噤んだ私に、絵美は見下ろしながら言った。
「じゃあ、必ず今日中に終わらせてね」
 そして身を翻すと、部屋の奥へと歩いていった。おそらく、他課に向かったのだろう。
 絵美は頻繁に、他課の様子を窺いに行っては、一課も同じようにしようとする。
 業務の進め方から、そのスピード、そして内容までを真似するのだけれど、各々の課で事情が違う。
 事務方の人数や社歴も違うし、同じようにできないことは一目瞭然なのに、無理やり押しつけてくるから困っていた。
「小畑先輩って、そんなに自分の評価が気になるんですかね。あんな他課と同じことを押しつけたって、成果は出ないと思います。自分は頑張ってるアピールなんでしょうか?」
「うん……。そうだよね。一課は、私と絵美より先輩事務員がいないから。絵美の思いどおりになってるけど、さすがにやり過ぎね。近いうちに、課長に相談してみようと思う」
 大きくため息をつきながら、メモリを見つめた。これだって、そんなに急ぎでする必要があるのか。
 作業を進める前に、課長に確認をしよう。それにしても、課長ってば、どこへ行ったのか。
 今朝は、外出や会議の予定はないのに、まったく姿を見ていない。デスクを見る限り、課長が出社をしていることは間違いないけれど──。

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