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【19話】幼なじみエリート上司と一途で秘密な両想い

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 期待も込めて答えを待っていると、彼はゆっくり首を横に振った。
「なにも、願いごとなんてしない」
「えっ? どうして?」
 隼人の言葉に戸惑っていると、頬を優しく触れられた。
「他力本願は、鈴だけにする。俺も、あの鈴を持ってたんだ。子供じみてるよなって思いながらも、どうしても手放せなくてさ」
「うん……。実は、絵美から聞いてたの。隼人が大事にしている鈴が、どうしても気になるって」
 あのときは、まさかと思っていたけれど、隼人は本当に私のことを想って持ってくれていたんだ。
 それを考えるだけで、心に温かさが広がっていく。
「そっか。小畑さんは、頭がいいもんな。洞察力もあって、勘も鋭い。怪しまれていたか。あの鈴には、もう願いごとを叶えてもらったから」
「だから、もうなにもお願いしないの?」
「そうだよ。これからは、直接お願いをすることにした」
「え? どういう意味?」
 流れ星を見ることをすっかり忘れた私は、隼人を見つめる。すると、優しい笑みを浮かべた隼人が言った。
「ずっと、一緒にいてくれる?」
「隼人……」
 直接お願いをするって、私にってこと? 彼の想いの大きさに、言葉が続かないほどに感動する。
 ただただ、隼人を見つめるだけの私を、彼は優しく抱きしめた。
「子供の頃からの佳穂への想いは、全然小さくならないんだ。むしろ、もっともっと大きくなる。だから、もうお前と離れたくない。この先もずっと、一緒にいてほしいんだ」
 ゆっくりと髪を撫でられて、すうっと安心した気持ちになっていく。私こそ、隼人なしではもう生きていけない。
「もちろんよ。私だって、ずっと好きだったんだから。隼人しか、想えなかったんだから」
「佳穂、好きだよ」
 溢れる気持ちを抑えられなくて、自然とキスを交わしていく。唇が濡れるほどの深いキスに、時間が経つのも忘れていた。
 そして、流れ星に願いをすることも──。

「佳穂、これをお願い。今日中にね」
 隼人との夢のような週末が終わり、今日からまた新しい一週間が始まる。普段の月曜日は憂鬱だったりするのに、今は隼人と顔を合わせることができるから、心は朝から躍っていた。
 そんな浮かれた気分を、絵美は朝から一撃で沈ませた。私のデスクまで来たかと思うと、そんなことを言ったからだ。
「今日中は無理よ。田辺課長から、頼まれた仕事もあるの」
 隼人から、一課の営業成績表のチェックを頼まれている。これは、栗田課長のときから担当しているもので、今回も当たり前に頼まれていた。
「それなら、そっちを私が引き受けるわ。データを保存しておいて。あとで開くから」
「ちょっと待ってよ。これは、頼まれものなのよ? 簡単に、担当替えなんてできないって」
 思わず立ち上がり、強引な絵美の頼みを頑なに拒絶する。いつもの彼女は、それでも並行してやれと、無理難題を押しつけてくるのに、今回は引き受けると言ってきた。
 それは、隼人が絡んでいる仕事だからだと、私にはお見通しだった。元々、ずっと担当していた仕事だし、譲る必要はない。
 絵美のほうも、私がいつもと違い頑固だからか、戸惑いの表情を見せている。
 隣の席の由紀ちゃんが、ハラハラとした顔で私たちを見比べていたとき、隼人がゆっくりとやってきた。
「二人とも、仕事の手を止めて揉めてるのはよくないな」
 静かに言った彼に、私はバツ悪くなる。小さくなりながら、「すみません」と謝った。
「でも、課長。この仕事は、浅井さんに任せたいんです。そもそも、中身が小松さんの受注件数ですし」
 裕太のアシスタントは私だから、絵美は仕事を頼んだ正当性を訴えている。ただ、彼女の場合、こういう強引な頼みごとはほぼ毎日だ。なにかにつけて、私の仕事を増やしてくる。
 さすがに最近は、そんな状況にストレスを感じ始めていた。
「それは急ぎのものなのか?」
 真っすぐ絵美を見据える隼人の目は、一瞬たじろいでしまいそうになるほど鋭い。
 さすがに、隼人と絵美が元恋人同士だったなんて、誰も想像できないだろう。
「急ぎです……。一課の営業さんの受注件数をブラッシュアップして、課長にお渡ししようと思っていました」
 やっぱり、隼人にだったのかと、内心呆れてしまう。それに、隼人はこの仕事を、絵美には頼んでいないようだ。
 きっと、彼女が独断で決めたことなのだろう。
「それなら、残りは俺が貰おう。他には、誰が残っている?」
「えっ!? そ、それは……」

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